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【アゼルバイジャン暮らしの日記】なんでもない日おめでとう。

2024年1月16日

寒い。
今日は何も外出の予定がない日。一日パジャマで暮らそうかと思ったけれど、良識ある大人なのでそうもいかない(お掃除のおねえさんたちと水漏れ修理の工事人たちが来る)。重い腰を上げて、のろのろとシャワーを浴びて着替えた。

毎朝、朝食を食べることにした(新年の抱負)。
今朝は、鯖の缶詰で汁ものを作っておいたので、それを温めた。具材は、鰹だしにじゃがいも、大根、玉ねぎ、ほうれん草と、鯖の水煮缶を汁ごと。そこに味噌を溶き入れて、生姜のすりおろしたのをたっぷりと。七味をふって青葱を添えて食べる。それにわかめご飯のおにぎり。

具沢山のお味噌汁があれば、それで朝食になる。

魚の入ったお味噌汁は、北海道の実家でも祖父母の家でもよく作っていた。かじかという、地味な色のかさごみたいな魚を、みんなこよなく愛していたけれど、その多少グロテスクな見た目や、ぶつ切りの魚が(皮や骨や肝も)入っているビジュアルが、子どもだった私にはなかなか高度なグルメだったので、私はあまり手を出したことがなかった。それなのに。故郷を離れてこんな遠くまで来て、(鯖缶だけど)魚の味噌汁を作っている私。これが釧路民遺伝子なのか。そして、北海道の魚の味噌汁(かじか汁)や鍋(石狩鍋)には、じゃがいもが必ず入っているように思う。豆腐も入っていたような。でもアゼルバイジャンでは気軽に手に入らないので割愛。ふうふうと湯気を上げるお味噌汁を、朝食に食べるのは冬の楽しみ。

お掃除のおねえさんは、いつもは一人なのだけど今日は二人来た。水漏れのあったバスルームの床を念入りに掃除してもらう。いつもは黙々と働くおねえさんも、今日は指示を出したり雑談をしたりしている。二人の声と働く音を聞きながら私は居間のダイニングテーブルで書きものをするけれど、なんとなく注意がそがれる。しかたなしに小さな音で音楽をかける。バッハの無伴奏チェロ組曲、ヨーヨー・マの演奏にした。

後追いで書き続けていたこの日記を二日分書いて、友人に頼まれていた研究計画にコメントをつけたり、細々とした書類仕事をこなした。穏やかな冬の日で、週末に降った雪が融けて、軒先からぽたぽたと雫をこぼしている。私は窓に向かって座るのが好きで、おでこに暖かい日差しを受けて、眩しくて目を細める。私のPCのすぐ側、テーブルのちょうど陽のあたるところにねこがやってきて、寝そべる。眠っていても、そっと撫でてやると喉を鳴らすのが愛らしい。13時半まで集中して書きものをして、昼ごはんを食べることにした。

この孔雀のお皿も気に入り。

一人で食べる昼食は、あまり凝ったものは必要なくて、でも自分の好きなものばかりを並べる。りんごを薄く切って、ゴーダチーズを挟む。ブロッコリーは柔らかめに蒸して、卵はとろとろの半熟に茹でた。それに出来合いのスモークトチキンを数切れ。コーヒーを淹れて、行儀が悪いけれど、本を読みながら食べる。片手でつまんで食べられるのは、都合がいい。

午後は、キッチンのテーブルで少し編みものをした。ねこがまた傍らにやってきて、今度は毛糸で遊べという。撫でてやると不満そうだけどそこに腰を下ろして、やがて眠り始めた。編みものをするときは、私は小説の朗読を聞く。去年読みかけにしていた、カズオ・イシグロのKlara and the Sun(クララとお日さま)を今度は朗読で。なめらかなモノローグのようなカズオ・イシグロの文体は、朗読に向いていると思う。太陽で駆動するクララを思いながら、私もまた日なたでお日さまの光を浴びていた。

愛用の小さいサーモスのカバーを編んでいるところ、とそれを見守るももちゃん。

夜、帰宅した夫が、ねこに「ちゅーる」をあげていた。それは、日本から持って帰ってきた特別なおやつで、誕生日のような特別な日か、爪切りとかシャンプーとか苦行の後にあげることにしているものだ。A very merry unbirthday to you、なんでもない日おめでとう。我々は朗らかに歌う。



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