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英国派遣プログラム「Horizon」 責任者に聞く制度への思い(後編)

昨今、ユニークな社内制度を掲げる企業が増えている中、クックパッドは2021年にイギリス・ブリストルにあるグローバル本社に新卒入社3年以内のメンバーを派遣するプログラム「Horizon」をスタートしました。「毎日の料理を楽しみにする」をミッションに掲げ、レシピ事業をグローバルにも展開するクックパッドは、どのような狙いでこのプログラムを始めたのか。また、プログラム参加を通じて、メンバーにどのようなことを期待しているのか。プロジェクト責任者の國江木綿子(くにえ・ゆうこ)に聞きました。

※写真は撮影時のみマスクを外しています

プログラム設計の鍵は、人選と適切な環境

ーープログラム策定にあたり、どういったことを重視して設計されましたか?

重視したのは「誰を派遣するか」「派遣先でどういう環境を準備するか」の二つです。これらについては様々な角度から検討し、企画しました。

誰を派遣するかの基準については、三つの条件を定めました。一つはグローバルでなにをしたいかがはっきり言えること、二つ目はそれを裏付けるような今までの実績があること、三つ目はある程度の英語力です。

一つ目のグローバルでやりたいことは、はっきりと成果につながることでなくても良いのです。先ほどお話しした通り、「Horizon」は若いメンバーのチャレンジを応援するプログラムであって、短期的な実績をつくることを求めていません。そのかわり、自分はどうしてもこれがやってみたい、それをグローバルチームに参加することで実現したいという熱意が大事です。

二つ目の実績では、その人の行動と熱意がどうリンクしているかを確認します。これまでやってきたことと、これからグローバルでやりたいと思っていることがどのように関係しているかを聞きます。

三つ目の英語力は、テストで一定の点数をとることが条件です。熱意は認められるけれども英語力がどうしても足りない場合は、英語の学習を行うためにタイミングを遅らせるケースもあります。いくらやる気があっても、ある程度の語学力がないとチームに馴染むのに時間がかかり過ぎてしまいますからね。

ーーやりたいこととそれを裏付ける実績で合否が決まるということですが、新卒入社3年以内の対象者はそれほどはっきりとした実績はないのではないですか?

もちろん、入社して間もない応募者もいます。その際は学生の時に何に興味があり、どういう経験を積んできたか、それが現在の仕事の中でどう生きているかなどを確認します。入社してからの社歴が長い方が良い、ということはありません。実際に入社4カ月で応募して、10カ月目からプログラムに参加した社員もいます。

ーー派遣先の環境は、どのような意図に基づいて検討されたのでしょうか?

どういう環境を準備するかに関しては、仕事面と生活面の両方でサポートが受けられるように検討しました。仕事面では、まずグローバルのエンジニア、デザイナーの責任者にプログラムの趣旨を共有し、適切なアサインメントを検討してもらうところからのスタートでした。

応募者が決まってからはエンジニア、デザイナーそれぞれの責任者との面談の後、実際に一緒に働くことになるチームリーダーとの面談もセットし、業務内容や期待値にずれがないようにしましたね。受け入れる側もあらかじめオンラインで顔合わせをすることで参加者の英語やスキルのレベルを確認できますし、プログラムの参加者も事前に準備をしておいた方が良いことなどを直接聞けたのが良かったようです。また、渡英1〜2カ月後にチームでの状況などをそれぞれのリーダーからヒアリングをし、困っていれば早めに気づけるよう、グローバルの人事チームでもサポートをしています。

生活面では、慣れない環境で困った時に同じ境遇の人たちと助け合えるよう、同時期に複数人を派遣する体制をとっています。住む場所も同じマンションの別々の部屋を提供することにしました。

実際、「Horizon」のメンバー同士でそれぞれの部屋に順番に集まったり、他の社員を誘ったりして一緒に料理をしているので、この体制にしてよかったと思っています。

また、オフィスにあるキッチンでもプログラム参加者が集まって活発に料理をしていることで、ブリストルオフィス内で「Horizon」というプログラムの知名度が広まり、現地のメンバーにも好意的に受け止めてもらえているようです。これは、実際に派遣された1期生のがんばりのおかげですね。

応募から帰国までテーラーメイドのサポートを目指す

ーー実際に派遣が決まってから渡航までどれくらいの時間をかけていますか?

そうですね、クックパッドの組織の普段のスピード感から言うと、決めたらすぐ動くというのが通常ですが、Horizonに関しては応募から人選、実際の派遣までに5カ月ほど時間をかけてじっくり進めるようにしました。応募準備に1カ月、面接などの検討に約1カ月を見積もり、プログラム開始3カ月前までには合否を出すように計画しました。

渡航が決まってから出発までに、準備期間を3カ月置いた目的は二つあります。一つは、受け入れ側と十分なすり合わせをし、着任した時スムーズに業務に入れるよう準備しておくことです。チームがどういう課題を抱えているか、その中で自分はどういった目標に向かって何をやるか、誰と働くのか、業務上困ったときは誰に相談できるのかなどが明確になっていることで、初日から戸惑わずに働くことができます。また、英語力に不安がある場合など、合否決定後の3カ月で集中的に英語学習をしてもらったケースもあります。

もう一つは、送り出す日本のチームが引き継ぎなどに十分な期間が取れるようにという配慮です。実際に応募者からは、現在の上司に「Horizon」に参加したいということをどう伝えたらいいかという質問があり、参加することでまわりに迷惑をかけてしまうかもしれないという気持ちにならないようにすることは設計上重要でした。

私自身も、かつて企業内海外派遣プログラムに参加した経験があるので、その時の学びや反省を踏まえてスケジュールやサポート体制を組んでいます。せっかく参加するからには思い切りチャレンジをして帰ってきてほしい、それを担保するために参加者一人ひとりに合わせたテーラーメードのサポート体制を組んでいます。

ーープログラムが終了すると、派遣前と同じ部署に戻るのでしょうか?それとも、海外で継続して勤務するという選択肢もあるのでしょうか?

プログラム終了後は日本に帰国し、日本で活躍することが前提ですが、例外的に本人が希望すれば、そのまま継続してブリストルオフィスで働ける可能性があります。そのときは、Horizonのプログラム参加者でなく、グローバルチームの一員として価値が出せるかという基準で判断します。ブリストルオフィスで改めて採用面接を実施して、コミットメントをお互いに作るようにしています。長期的に価値が出せるかどうかは責任者の間で議論の必要がありますが、本人の意志があれば必ず検討の俎上に載せます。

個人的には、プログラムを卒業して現地にそのまま残って活躍できる人材が出てくるのは嬉しいことです。ただ、あくまでも「Horizon」は若い人材の成長を加速するプログラムなので、卒業後に日本にいても海外にいても、クックパッドのミッションに向けて事業を加速できる人材が増えてくれることが一番の願いです。

挑戦したい人を最大限あと押しできる会社、クックパッド

ーー新型コロナウイルス流行により海外派遣を控える企業もありましたが、クックパッドでそのような議論はあったのでしょうか?

新型コロナウイルス流行で、世界中が今までにない変化に晒されました。ただ、私たちの事業はパンデミック真っ最中も、世界中の家庭で日々発生する「今日のご飯なにつくろう?」という悩みに応えていく必要があります。そのためにはチャンスを逃さず若手の成長する機会をつくるべきだ、という考えから、Horizonの検討を進めました。もちろん、新型コロナウイルスに対して適切な対策をとりつつです。

コロナ対策においても、日本とイギリス政府では大きく考え方が異なり、そういう意味でも世界が変化に直面したこの時期に、日本の外の世界を経験できたことは参加者にとって意味あることだったのではないかと思います。

ーー最後に、クックパッドに入社し、海外で働きたいと思っている方にメッセージをお願いします。

クックパッドは、ミッションである「毎日の料理を楽しみにする」ことに共感し、やりたいこと、挑戦したいことがある人を最大限にあと押しできる会社だと思っています。それは、今回のHorizonの制度設計時にも重視した視点です。

会社が参加者を決めるのではなく、あくまで応募者が自らやりたいことを申請する。その希望に適切なチームとアサインメントを検討し、現地でスムーズに取り組めるような準備をする。期間を決めて失敗できる環境を準備し、それを次の成長につなげられるようにする。参加者が自ら行動を起こすほど、自分にとってもクックパッドにとってもメリットがある構造を目指しました。

もちろん、Horizonも新しい取り組みなので、最初から上手くいくとは思っていません。クックパッドのプロダクト開発でよく言われる「ローンチ後9割」、つまり、不完全でもとにかくローンチし、その後スピーディに改善して行く手法に則っています。そのため、Horizonの第1期生には色々とサプライズがあったと思いますが(笑)、それも許容して一緒にプログラムの改善にチャレンジしてくれていることに感謝しています。クックパッドでは、ミッションを達成するためにやる気のある人ほど活躍できる場がたくさんあるので、新卒入社の社員がどんどん「Horizon」に参加してくれることを期待しています!

(文:菊地紗矢香)

クックパッドの働き方は、クックパッド採用サイトの社員インタビューでも紹介しています

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