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【地域で輝く学生vol.23】兵庫県立大学 国際商経学部 伊藤克広ゼミ〜ヴィクトリーナ姫路スポーツビジネスコンテストに参加して〜合言葉は“I’d love to (喜んで!)”

ヴィクトリーナ姫路スポーツビジネスコンテストは2022年8月から12月の約4か月間、学生交流委員会「WILL BE プロジェクト」の一環として、ヴィクトリーナ姫路と大学コンソーシアムひょうご神戸の共催、そしてナガセケムテックス株式会社の協賛で行われました。今回は、本コンテストにゼミで参加いただいた兵庫県立大学の伊藤克広先生の寄稿を神戸親和女子大学の高松祥平先生に続いて、ご紹介します。伊藤ゼミからは「Go-vic!」と「パンケーキーナ」の2チーム12名の学生が参加。そして「パンケーキーナ」チームが優秀賞を受賞しました!  企画参加から表彰にいたるまでの伊藤先生の想いをお伝えします。

今回、コンテストに参加を決めた意図、本企画に期待したこと

 私が所属している国際商経学部は、経済学、経営学を専門に学ぶ学部です。その中でも私のゼミには、スポーツ推進、スポーツ・マネジメント、スポーツ・マーケティングに興味・関心を抱いている学生が所属しています。ゼミでは、スポーツ社会学、経済学、経営学を学問的基礎とし、スポーツ、運動、レジャー、健康などの社会現象を研究対象にしています。ゼミのモットーは「何事にも積極的にポジティブに取り組むこと」です。ゼミでの活動は何でも「喜んで」自ら進んで取り組むよう促しています。それを一言で表したのが“I’d love to (喜んで!)”です。

 大学では、講義でさまざまな理論を学び、ゼミでは自身の興味・関心を深く追究しますが、学んだ理論や追究したことが実社会ではどうなっているのか、どう結びつくのか、どうつながるのかといったことについてなかなか触れることはできません。どのように「学問知」と「現場知」を結びつなげようか、これは私が常日ごろから抱いている悩みです。こうしたことから今回のコンテストは、ゼミ内容にうってつけであり、私の悩みにも解決策を示してくれるのものでした。プロ・スポーツチームはどのようにマネジメント、マーケティングをしているのか、その「現場」に参画することができるということで、大学、ゼミでの「インプット」を本コンテストで「アウトプット」する絶好の機会だと考えました。

 加えて、さまざまな専門的知識、スキルをもった学外の人たちとも積極的にコミュニケーションが取れ、刺激を受けられるということもありました。教員は「学会」に参加し、他の研究者の発表を聞くことで多くの刺激を受け、自身の研究に生かしていきます。学生にも大学外に出てもらい、さまざまな刺激を受け、「井の中」からドンドン出て行き、自身の能力アップにつなげて欲しいと思います。
 以上のように、本コンテストには、①「学問知」と「現場知」の接点の役割があること、②学生への大きな刺激の場となること、の2つの要因から参加を決めました。

株式会社姫路ヴィクトリーナ・橋本明代表取締役球団社長と優秀賞を受賞した伊藤克広ゼミ「パンケーキーナ」のメンバー。2022年12月17日「最終プレゼンテーション大会」表彰式にて

本コンテストの振り返り、学生への効果

 当初、本コンテストのスケジュールを聞いたとき、「その期間でうちのゼミ生はできるだろうか」と幾ばくか不安になりました。ゼミ生に「こういうコンテストがあって、夏休みにも活動があって、忙しくなるかもしれないけど、参加する?」と尋ねたところ、全員が「やってみたい!」、「参加します!」と即答でした。やはりゼミ生も学内のゼミ活動だけではなく、学外に出てさまざまな経験をしたいのだなと気づかされたのと同時に「喜んで!」の精神が少し身についてきていることを感じました。

 こうしてコンテストに参加することは即決したのですが、参加するにあたりチーム編成をどうするか、で少し悩みました。というのは、今回参加したゼミ生は3年生だったのですが、彼らはコロナ禍のため入学時からほとんどすべての講義がオンラインであったためお互いの顔と名前が一致せず、まずはゼミメンバー同士のコミュニケーションを図ることが必要でした。とは言うものの、マスクをして目だけしか見えないコミュニケーションには通常の倍以上の時間と労力が必要でした。「目は口ほどにものを言わない」ことを痛感しました。

 次に、何チームで参加するかで悩みました。私のゼミは11名おり、3チームだと4名、4名、3名編成となり、3名だと少なすぎる、2チームだと5名、6名編成となり、6名だと多すぎる。。。こうしたグループワークを行う際、人数が少ないと個々人の負担が大きくなり、キャパシティ・オーバーとなりグループが崩壊してしまう危険性があります。それよりは人数が多いことで個々人の負担を減らし、お互いをカバー、フォローアップできる関係性を築いた方が良いだろうということで、最終的に2チームでの参加としました。

 本コンテストは2022年8月からスタートという日程であったため、それまでのゼミでは、このような課題解決型プロジェクト学習に参加するにあたっての進め方・取り組み方をレクチャーしていきました。プロジェクト学習は、①「知識」と「実践」を試行錯誤しながら「目標」を達成することを目指す学習であること、②期限までに達成できるかという「期限」があること、③何を達成すれば目標が達成できるかという「達成要件とタスク」を明確にすること、を第1に伝えました。そして、「プロジェクトが問題なく遂行されているか」、「プロジェクトに問題が生じたら速やかに修正する」といった「プロジェクト・マネジメント」の重要性についても触れ、そのためには「リーダーシップ」、「フォロワーシップ」が必要であることを説明しました。ここで注意したことは「リーダーシップ」に関する知識や能力はリーダーだけが把握しておけばよいものではないこと、フォロワーとなるメンバーもそれを把握することで「なぜリーダーがその行動を取るのか」を理解でき、リーダーをサポートすることができ、スムーズにプロジェクトが進むこと、を強調しました。その効果かどうかは分かりませんが、両チームともリーダーを核とした非常にまとまりのあるチームになりました。

中間発表でのプレゼンテーションの様子(2022年9月24日「神戸常盤アリーナ」で開催)

 とは言うものの、最近の学生は忙しい。勉強、クラブ・サークル、アルバイト、、、ゼミ以外でチーム全員が顔を合わせてミーティングをする時間が思うように取れないことも多々ありました。しかしながらここ最近で急速に発達したオンライン技術!ゼミ生はこれらオンライン技術を駆使して、ドンドン自分たちでプロジェクトを進めていきました。毎週のゼミでは進捗状況の報告をしてもらいましたが、「えっ!?もうそこまで進んだん!?」と驚かされることが度々ありました。「今日休んでるメンバーともちゃんと情報共有しとけよ〜!」と口酸っぱく言っていたのですが、そんなことはゼミ生は百も承知だったということが分かり、今思い返すとこちらが反省しなければと思います。

コンテストの結果発表・表彰式に向けた「アクリエひめじ」での『最終プレゼンテーション大会』。2023年12月3日・4日のヴィクトリーナ・ウインク体育館での企画実践の成果を発表。

 また、本コンテストには多くの関係者の方々が関わっており、そういった方々と失礼なくコミュニケーションが取れるかということも心配ではありました。Z世代である学生は生まれた時からデジタル機器に囲まれ、それらがあることが当たり前の環境で生活しており、スマホ、タブレットを駆使したコミュニケーションは手慣れたものです。しかしながら、本コンテストでは同じデジタル機器を通して企業人、社会人の方々とコミュニケーションを取らなければならないということで、メール作成時の言葉遣い、電話でのマナー等々もレクチャーしました。この点につきましては急に身につけることができないこともあり、関係の皆さまにはご迷惑をおかけしたことがあったかと思います。

 ここで、我々のゼミから参加した2チーム、「Go-vic!」と「パンケーキーナ」の紹介を簡単にしたいと思います。

企画実践1日目「Go-vic!」の「答えは試合に!景品チャレンジクイズ」の様子
企画実践1日目「パンケーキーナ」チーム「バレーボールでツナゲキズナIN HIMEJI」

 「Go-vic!」は、「答えは試合に!景品チャレンジクイズ」を企画・立案し、実践しました。本チームは、「新規顧客の開拓」、「若い家族層の来場者数増」という「集客」に関する課題に対して、小学生がいる家族層をターゲットに絞り解決策を練りました。「いかに試合会場に来てもらうか」を実践課題とし、「その場にいないと回答できないクイズを出題・回答することによって家族層の来場者が増える」という仮説を設定し、企画・立案しました。また、「全問正解者には景品が当たる」という付加価値を付けることで企画の魅力UPを図りました。12月3日、4日の実践日には多くの観戦者が本企画に参加してくれ、用意した景品もすべてなくなり「集客」の課題解決の一助になりました。

企画実践日2日目の「Go-vic!」は、入場ゲート前のテントでクイズを受け付け

 「パンケーキーナ」は、「バレーボールでツナゲキズナIN HIMEJI」を企画・立案し、実践しました。本チームは、「姫路商店街活性化」という「地域との関係性構築」に関する課題に対して、商店の商品を試合会場でプレゼントするという解決策を練りました。
 「試合観戦に来てもらい、商店街にも足を運んでもらうというWIN-WINの関係性構築のためにはどうすればよいか」を実践課題とし、「試合会場にて商品をプレゼントすることによって、①試合観戦に来た人に商品の魅力を伝えることができ、商店街に足を運ぶきっかけとなる、②商品プレゼントを目当てに来た人が試合を観戦してくれ、観戦者増につながる、③商店にとっては商店街以外で商品をPRすることができ、顧客獲得のチャンスとなる、④ヴィクトリーナ姫路にとっては新規顧客の開拓につながる、⑤ヴィクトリーナ姫路と商店街のコラボレーションが生まれ、地域活性化につながる」を仮設として設定し、企画・立案しました。
 約2ヶ月の準備期間の中で、彼らは実際に姫路商店街に足を運び、協力店舗を探し、交渉し、実践しました。協力店舗から提供していただいた商品は12月3日の実践日初日でなくなってしまうという嬉しいハプニングが起こり、地域活性化に貢献できたのではないかと思います。

「パンケーキーナ」企画への協力店舗さんの商品。1日目ですべての商品がなくなりました!

 今回、両チームとも途中で企画を変更しなければならない状況に陥りましたが、私はこれはゼミ生にとっては非常に良い経験だったと考えています。上述したようにプロジェクトは「知識」と「実践」を試行錯誤しながら目標達成を目指すものです。最初から自分たちの企画がそのまま通り、進めていけることはありません。何度となく修正を繰り返し、より良い企画へと昇華させていく必要があります。こうしたことは社会に出れば当然経験することになります。社会に出る前にこのことを経験出来たことはゼミ生にとって大きな収穫になったはずです。両チームともこの時期を“I’d love to”で乗り切ってくれました。

大学間連携でやることの意義

 まずは学生の立場からみますと、やはり一番大きな効果は「他大学の学生と交流できること」があげられます。学生生活のさまざまな場面でも他大学の学生と交流できますが、このようなコンテストやプロジェクトで交流するというチャンスはなかなかありません。
 次に「ゼミ、大学へのアイデンティティが高まったこと」があげられます。コンテストやプロジェクトに参加することで、「1位取るぞ!」、「他の大学には負けへんで!」といった意気込みが見られ、ゼミ生同士の結束が高まったことを私自身が感じました。
 第3に、これは上述していることですが、「『学問知』と『現場知』のつながりを経験出来る」ということです。特に、経済学、経営学を学んでいる私のゼミ生にとっては大きな経験になったと思います。

 次に教員の立場からみますと、我々教員も日ごろから友人、知人の教員同士でインター・ゼミの企画を立て、ゼミ生同士の交流を目指しています。しかし、その際のテーマはどうしても我々の研究内容に合わせてしまい、狭くなってしまいがちです。さらに、我々教員は自身の専門分野上の方々とのコラボレーションは可能であっても、異なる専門分野となるとコラボレーションできる方々は減ってしまうか、全くいなくなってしまいます。
 本コンテストのように自身の専門分野外でも学生を参加させることができるものがあると、学生の視野が広がることはもちろん自身の視野も大いに広がる機会になります。

左から本コンテストにゼミで参加した伊藤克広先生(兵庫県立大学)、
高松祥平先生(神戸親和女子大学)、柳久恒先生(神戸学院大学)

 そして連携という視点からみますと、本コンテストは大学間連携だけではなく大学と企業あるいは学生と企業の方々との連携だったと思います。企業の方々が抱いている課題や問題を「大学生の視点」から捉える機会となり、予想だにしなかったアイデア等が生まれる場になることがあげられるのではないでしょうか。こうした場を設定できることは「大学コンソーシアムひょうご神戸」があってこその強みだと考えます。
 今回は第1回目ということでいろいろなことが手探りでした。我々もどのように学生を動機づけたらよいか、どこまでヘルプしたら良いか、迷いながらの活動でした。次回以降ももっと良いアイデアが出てきて更に面白い企画になると思います。そのために2つほど。
 今回はゼミを1つの単位として参加しましたが、募集・参加形態をゼミとしても実際の活動するチームはゼミや大学など関係なく、参加した学生の中でチームを組織するとしてもよいかもしれません。今回もいくつかのチームは個人で参加した学生同士で組織していたかと思います。そうすることで「大学生」連携が生まれるのではないかと思います。そして、コンテストのテーマに基づいて、そのことを専門とする教員のレクチャーがあってもよいかと思います。企画を実践して行くにあたっての理論を学ぶことで、コンテストに参加する学生の「知」の統一ができるのではないでしょうか。

表彰式後の集合写真

 最後になりますが、本コンテストを企画・立案していただいたヴィクトリーナ姫路の皆さま、ナガセケムテックス株式会社の皆さま、株式会社立成社の皆さま、大学コンソーシアムひょうご神戸の皆さま、その他関係者の皆さま、本当にありがとうございました。この場をお借りし感謝申し上げます。

以上

寄稿:兵庫県立大学 国際商経学部 伊藤克広