見出し画像

自分のレベルが低すぎて読めなかった本にリトライした話


積読(つんどく)=買った瞬間に要望が満たされ、読んだ気になる「読んでいない本」のこと。いつしか読んでいない本が増えて、本の上に本が積み上がっていく様子


自分の経験より



この本は2021年に買いました。きっかけは、ある起業家さんが絶賛されていたから。440ページもあり、そのうち38ページが上下2段組でフォントが小さい「注」となっていて、論旨の裏付け資料がもりだくさんです。でもどうしても途中で眠くなって読めませんでした。

「二重否定の言葉が多い」「抽象概念が具体的に想像できない」「考えると疲れる」、つまり自分の理解が追いつかない本だったのです。自分にはレベルが高すぎた本でした。

読みたくて買ったはずなのに、途中であきらめてしまう。そんな本たちがいつしか積読になっていきます。わが家の積読たちを眺めてみると

背伸びしすぎたテーマだった(例えば経営戦略とか、哲学とか)
●書店で立ち読みせずAmazon買ってみたところそれほどでもなかった
●タイトルに惹かれたけど内容に真新しさがなかった
●資格本を買ったけれど、時間がなくて勉強できない
●書評がよくて買ってみたが自分にはピンとこなかった


などがあります。
でもそれらの本は今の自分にフィットしないだけですから、いつか読み返そうと思っているので静かに本棚に眠っています。


そんな今年3月、子どもたちといっしょに本屋さんに行ったところ、この帯が目に止まりました。

2022年 東大・京大で1番読まれた本

へぇ、そうなんだ。でも私はむずかしくて読めなかったよ。
どうやら文庫になっていたようです。判型がコンパクトになり、斤量が軽くなったことでカジュアルな印象に変わったのかもしれませんね。

でも、なぜ大学生がこの本を選んだのだろう?? 大学生が気になる内容だったけ?そこでこの本にリトライしてみたのです。



序章のタイトルに秘密あり 

序章「好きなこと」とは何か?



大学生が引き込まれた理由、それは序章タイトルじゃないかと思っています。大学生じゃない自分もこのタイトルに引っかかりました。そして、以下の2つの文章を読み、「読みたい」と明らかに吸い込まれていきました。


最近他界した経済学者ジョン・ガルブレイス[1908ー2006]は、20世紀半ば、一九五八年に著した『ゆたかな社会』でこんなことを述べている。
現代人は自分が何をしたいのかを自分で意識することができなくなってしまっている。広告やセールスマンの言葉によって組み立てられてはじめて自分の欲望がはっきりするのだ。自分が欲しいものが何であるかを広告屋に教えてもらうというこのような事態は、一九世紀の初めなら思いもよらぬことであったに違いない。

『増補改訂版 暇と退屈の倫理学』國分功一郎著 太田出版

 大義のために死ぬのをうらやましいと思えるのは、暇と退屈に悩まされている人間だということである。食べることに必死の人間は、大義のために身を捧げる人間に憧れたりしない。
 生きているという感覚の欠如、生きていることの意味の不在、何をしてもいいが何もすることがないという欠落感、そうしたなかに生きているとき、人は「打ち込む」こと、「没頭する」ことを渇望する。大義のために死ぬとは、この羨望の先にある極限の形態である。〈暇と退屈の倫理学〉は、この羨望にも答えなければならない。

『増補改訂版 暇と退屈の倫理学』國分功一郎著 太田出版

対面授業のような「なぜ?」を考えさせる問いかけ


この本は大学生に向けた講義をまとめたものであって、口語的な問いかけ文章が散りばめられています。目の前で國分先生が講義をされているような感じです。次はどうなるの?といっしょに考えながら読み進めるのです。そのため、読書にたいへん時間がかかります。自分が持っている知識と経験をフル稼働させ、國分先生の問に答えようと頭の中でミニ講義が行われるからです

●ならば、どうしたらいいのだろう?
●しかし、これで本当によいのだろうか?
●そもそも、どういうこと?
●いったい、この数字はどこから来たのだろうか?
●ならば、自分たちで考えてみようではないか


読書を通じて「哲学」をする

ミニ講義がいくつも繰り広げられ、本を読み終えたとき、「あぁ、自分で哲学をしていた」と気付きました。
すぐに答えを求めるのであれば、もっと具体的で実用的な本が良いでしょう。この本はその真逆なため、自問自答で疲れます。そのほどよい疲れが居心地がよいと感じたのでした。

ようやく自分にも知力という筋肉がついてきたんだ。



もし、買った段階で満たされてしまう積読がたくさんあるようでしたら、定期定期に表紙をめくってみてください。そして、目次を眺めてください。
今の自分に響くことばがあるのであれば、読むタイミングです。いっぽう、響く言葉がないのであれば、またそのまま熟成させるように眠らせればいいです。

本って、ふしぎですね。






この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?