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高品質なカーボン・クレジットを求めて

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誤解されやすい、カーボン・クレジット。適切に使用すれば、1.5℃目標も夢じゃない!正しい理解をお手伝いします。
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記事一覧

ICVCMの目指す「Additional」とは?(2)

前回から、特定の再エネクレジットがCCPラベル認証対象外となった理由である「Additionality」について考えています。 前回はこちら。 対象外とされたのは、再エネクレジットが8種類と、SF6排出削減クレジットが1種類。 根拠資料としているのが、ICVCMが公開した「カテゴリー評価に関する見 再生可能エネルギー」という文書なので、再エネクレジットについてのみの説明になります。 この文書で議論しているのは、「再生可能エネルギープロジェクト」が「クレジットによる支援

ICVCMの目指す「Additional」とは?(1)

先日、ICVCMが、特定の再エネクレジットは「CCP-Eligible」の認定を受けることができない旨公表した件についてご案内しました。 根拠について「CCPラベルが求める「Additionality」についての要求事項を満足しないため」と説明しただけで、何故「満たしていないのか」には触れていませんでした。 ですので、こちらについて簡単にご案内したいと思います。 そもそものプレスリリースは、こちら。 言及しているのは、こちらの箇所。「追加性 に関するCCP評価フレーム

Additionalityに基づくICVCMの判断

ICVCMが、既存の再生可能エネルギー方法論に基づいて発行されたクレジットに対して、CCPラベルを付与しないことを発表しました。 CCPラベルとは、「高品質なクレジット」の証左とも言えるラベルで、次の2つのレベルで認証が行われます。 簡単に言うと、CCP-Eligibleは、クレジットプログラム(VCS、GS、ARTのようなボラクレスキーム)を認証するものであり、CCP-Approvedは、方法論(森林吸収やバイオ炭などのプロジェクト)を認証するものです。 詳細について

クレジットを安心して購入したい

これまで、何度か、クレジットが一般の商品になってきたという話を、noteでご案内してきました。 ここで、クレジットの普及へ向けて、開発・導入されているサービスをまとめておこうと思います。具体的には、次の5つかなと。 それぞれ説明していきますね。 「1.レーティング」はクレジットの「格付会社」。 例えば、「BeZero Carbon」が挙げられます。 株式と同じで、詳細な情報を入手するには契約が必要ですが、後ほど説明するACXとコラボしていているので、ACXが毎週リリー

GHGPのLSRガイダンス 25Q1にV1.0リリース予定

GHGプロトコルが開発中の、Land Sector and Removals Guidance。 23年Q2の予定が24年Q2へ一年延期されたあと、さらに遅れることが判明した際、ご案内していました。 目標設定のデファクトスタンダードである、SBTiのFLAGセクターガイドラインは22年9月28日にリリースされていながら、肝心の算定方法のデファクトスタンダードであるLSRGが当初予定よりも遅れていたことから、それに併せて、「アップデート」される事態にもなっていました。 そ

クレジット活用の強い味方(2)

前回から、購入を後押しするクレジット向け保険の紹介をしています。 今回は、Swiss Re Corporate Solutionsとgoodcarbonが共同で立ち上げた、「保険対象クレジットの現物交換を提供する初の長期炭素クレジット購入保険」の紹介から。 この保険は、「高品質の炭素クレジット供給へのアクセスを提供するだけでなく、重要な生態系や脆弱なコミュニティに恩恵をもたらす自然ベースのプロジェクトへの資金流入を容易にする」ものだそうです。 なお、goodcarbon

クレジット活用の強い味方(1)

2年前、NCSAが、6つの森林吸収プロジェクトを「Lighthouses」に指定したことをご紹介しました。NCSA(Natural Climate Solutions Alliance)は、自然気候ソリューションと炭素市場への投資の機会と障壁を特定することを目的とした、マルチステークホルダーグループです。 Lighthousesは、「灯台」という名前が示すとおり、指定されたプロジェクトは、NCSAの厳格な基準に合致しており、実施地域の自然資源、生活環境の保全・改善に寄与する

パリ協定 第6条クレジットの現状(2)

AlliedOffsetsのレポートについて、お届けしています。 前回は、こちらです。 さて、第6条クレジットに関して注目すべき動きがあったのは、ルワンダ、ガイアナ、タンザニアの3カ国でした。 ルワンダは、GSとVerraによって認証されたクレジットに対して最初の認可書(LOA)を発行。 両者とも、前回ご案内したように、創出が容易な「クックストーブ・プロジェクト」です。 ちなみに、LOAとは、ホスト国がその国内で行われるカーボンオフセットプロジェクトを公式に承認し、そ

ボラクレ市場の現状 格付視点で見てみよう(2)

Calyx Globalによる、市場動向データと500を超えるプロジェクトに対する自社のレーティングを組み合わせてVCM(Voluntary Credit Market ボラクレ市場)を分析したレポート。 Carbon Creditの、サマリー記事を参照して、内容を簡単に紹介したいます。 前回は、クレジットのレーティング毎の年別発行量推移についての考察まで行いました。 今回は、今後のクレジットの質(レーティング)の変化について説明します。 クレジットは、「玉石混交」どこ

排出削減は具体的成果を求めるフェーズへ

Googleは、2024年7月5日に2024年環境報告書をリリースしました。 報告書では、Googleの二酸化炭素排出量が2019年から48%増加していることなど、同社の環境への影響と取り組みについて詳しく説明。データセンターの電力効率が業界平均の1.8倍であることや、AI処理チップ「Trillium」の開発など、積極的な対策も紹介されていました。 ですがサス担としては、日経GXが紹介していた点ではないでしょうか。 (GX会員でないと閲覧できません。申し訳ありません。)

One Stop サービスを目指して

noteで、何度もご案内している、ブルーカーボン。 制度や方法論の説明に加え、実際に自分がガッツリ関わっているプロジェクトの進捗もお伝えしているところです。 これ以外にも、いくつかお手伝いしているプロジェクトがあるのですが、いつもネックになるのが「先立つもの」=「お金」なんですねぇ。 もちろん、現在Jブルークレジットの認証を受けているプロジェクトは、「ブルーのため」に始めたものは皆無です。 今まで、漁業従事者や地域の方々が協力して、様々な保護活動や環境教育、養殖事業、商

IWA42 Net Zero Guidelines ISO化へ

COP27開催中の2022年11月11日、ISOが「IWA42 Net Zero Guidelines」をリリースしたことは、皆さんもご承知のことかと思います。 「国家、地域、都市、組織レベルの関係者に対し、ネット・ゼロを調和、理解、計画するための世界的な基礎を提供する」ことを目的としており、具体的には、公式サイトにおいて、次のように説明しています。 大本営からの公表とあって、私もnoteでご案内しました。 当時は(といっても、つい1年半前ですが)、2020年に国連が開

各国CPにおけるクレジットの扱いについて(2)

現在、世界中で導入が進んでいる、ETS(Emissions Trading Scheme)。 その制度運営について、前回からご案内しています。 今回は、ETSにおいて使用できるクレジットについて。 前回は、どのような種類のクレジットがあるかまで、説明しました。 ご覧になられていないのであれば、こちらからどうぞ。 前回説明しましたように、「二国間」と「国内制度」において使用できるクレジットが基本となります。「二国間」は、日本(JCM)やスイス(Klik)、シンガポールなど

ボラクレ市場の現状 格付視点で見てみよう(1)

カーボン・クレジットの格付プラットフォームであるCalyx Globalが、市場動向データと500を超えるプロジェクトに対する自社のレーティングを組み合わせてVCM(Voluntary Credit Market ボラクレ市場)を分析したレポートを公表しています。 幸い、Carbon Creditが、サマリー記事を書いていたので、それを利用させて頂き、内容を簡単に紹介したいと思います。 なお、レポート本文は、こちらから参照できます。 インフォグラフィックスが豊富で、ページ