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各国CPにおけるクレジットの扱いについて(2)

現在、世界中で導入が進んでいる、ETS(Emissions Trading Scheme)。
その制度運営について、前回からご案内しています。

今回は、ETSにおいて使用できるクレジットについて。
前回は、どのような種類のクレジットがあるかまで、説明しました。

カーボン・クレジット・レポートより(再掲)

ご覧になられていないのであれば、こちらからどうぞ。

前回説明しましたように、「二国間」と「国内制度」において使用できるクレジットが基本となります。「二国間」は、日本(JCM)やスイス(Klik)、シンガポールなどがありますが、対象が限定的なので、「国内制度」において使用できるクレジットが、唯一使用できると思ってもよいと思います。

なお、有償・無償で割り当てられていた「排出枠」が取引できるのは、ETSの根幹ですから、言うまでもありませんよね。

ということで、「国内制度」において使用できるクレジット。

この、国内に特化したクレジット制度は作るにも運営するにもコストがかかります。ただでさえETSの運営でコストがかかっているだけに悩ましい。

しかし、自前で作ってしまえば、収益を得ることができますので、運営コストを賄い、かつ、国内の削減事業に活用することも可能になります。ですので、まずは、「国内」クレジットに着手するのが王道です。

世銀のレポートによると、カーボン・プライシングを導入している法域の40%が、国内のクレジットに限って使用を認めているそうです。

そんなうまみのある「国内」クレジットですが、かと言って、すぐに風呂敷を拡げることはできません。

事業者がクレジットを作りたいと思ったとき、適した方法論が存在しなければ、躊躇することが殆どでは?車を作ったからといって、道路まで作りたいとは思わないでしょう。

そんなときは、既存のスキームを借りてくるという手があります。

具体的には、ボラクレの方法論のうち、自国に適したものをピックアップ、「国内」クレジットの方法論の一つとして、認定することです。

既に、Verraが、そのような「OEM」事業を開始しています。
インドや台湾は、特定の方法論を「適格クレジット」とすると発表。
「ボラクレ」ですが、その国においては「コンクレ」となるのです。

心配なのは、当初予定していた「排出総量」を超過してしまうこと。
ETSのメリットがなくなってしまいます。

これについては、インド、台湾、いずれも使用できるプロジェクトに制限をかけていますので、ETS参加企業の「総排出量」は増えることになりますが、国全体の「総排出量」は減少することになります。

例えば、台湾は、現在の計画では、国外5%、国内10%、合計15%のボラクレを使用可能。また、国外の5%の制限については、台湾炭素取引所(TCX)から購入したものに限って使用可能とされているそうです。(ホスト国が必ずしも台湾である必要はない)。

つまり、NDC達成には寄与しながら、政策コストは抑えることができるわけです。かつ、プロジェクト実施者は、クレジット収益を得ることができるので、政府としての補助も軽減できるなど、三方よしなんですね。

ということで、カーボン・プライシング(CP)の一つ、ETSにおける、クレジットの扱いについて説明してきましたが、いかがだったでしょうか。

冒頭でご案内した、導入状況を見てもらうと分かりますが、日本と馴染み深い東南アジア・南アジアは、これから導入が進んでいきます。日本は、自主的な取り組みから脱していませんが、知見は蓄積してきています。

AZEC構想など、当該地域の脱炭素化を推進する仕組みも構築していますので、更なる貢献をしていってほしいものですね。

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