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コミュニティの「杉」問題

場づくりに14年携わっております。リアルでもオンラインでも、複数のコミュニティを立上げてきました。そのエッセンスは100本以上の記事にまとめ、求めに応じて個人や企業にアドバイスもしています。

最近、自作テキスト(以下)による実践ワークショップもやる中で、コミュニティの試行としてのイベントを形にできない人が多いことに、改めて気づきました。

長い経験でそんな症例を山ほど見てきたので、「XXし過ぎ」で類型化し、原因と対策を簡単に述べてみます。

近頃流行りなのか、気軽に「コミュニティ」という言葉を使う個人や企業が増えておりますが、そんな人にも役立てば嬉しいです。

※本稿における「コミュニティ」

「コミュニティ」という言葉からイメージするものや性質は、バックグラウンドによって異なるので、念の為定義します。

1)自ら選んで参加する場
(町会、学校、会社のような「与えられた」成員からなるものではない)
2)プライベートな活動の立ち上げ段階
3)直接営利目的の対価が発生しない
(オンラインサロンのような参加に対して対価を取るものではない)

但し、それぞれの本質が大きく変わるわけではなく、基本を理解すれば応用は可能と考えます。

人集めようとし杉

「冷やかしの100人より、本気の2人の方がいい」

場には目的があり、目的に合致しない人が何人来ても無意味です。しかし、10人より100人、100人より300人集まる方が良いと安易に考える人が多過ぎます。

大人数でも、目的と整合していれば問題はありませんが、頭数を集めることが、理由なく目的化したままだと、コミュニティは破綻に向かいます。

参考:コミュニティ4つの死因

なぜそうなるのか

目的なく人を集めようとするのは、目的が曖昧だからです。目的が無いのに人を集めたいと思うのは、たいてい自己承認欲求で、参加者のためではありません。

参加者は、その場が自分に価値があるのか、単なる主催者の自己満足か、敏感に嗅ぎ分けます。そんな集まりに行ったことのある人は感覚的にイメージできるでしょうが、多くの人は大人な口実でフェードアウトしていきます。

人は都合よく自分を騙す生き物です。仕事で満たされない気持ちを補償するために場を立ち上げようとする人の大半は、そのことを自覚できません。

立ち上げの動機がそうだとしても、結果として目的に筋が通り、参加者に価値があればそれでいいのですが、大抵そうならないのが現実です。

ではどうすれば

目的を明確にしてターゲットを定めるべき、なんてことは皆分かりきっています。定めた目的に確信が持てない、どう定めるか分からないから困るのです。

誰にも当てはまる正解はありません。頭で考えても正解は出せません。やってみてかみ合った時のみ「あ、これだ」と直感するので、とりあえず色々試すしかありません。

ところが、その第一歩が踏み出せないのです。その原因を掘り下げると、無意識に「マジメに考え過ぎ」なことに気づきます。

マジメに考え杉

最初から「ちゃんとした」ものでなければという意識が強過ぎて、アクションが起こせない状態です。

・目的が定まらないから動けない
・定めた目的や方向性を変えてはならないから、決められない
・やりたい企画が思い浮かばない
・ニーズが分からないので企画できない
・企画の完成度が低いので実施できない
・体制が整わないので実施できない

なぜそうなるのか

多分、以下のように考えているのだと思います。

・場の目的はきちんとしたものでなければならない
・一度定めた目的は簡単に変えてはならない
・イベントはきっちりした目的やテーマでなければならない
・コミュニティやイベントはニーズが明確でなければならない
・企画の内容は十分に詰まっていなければならない
・コンテンツのクオリティは完璧でなければならない
・コミュニティやイベントの運営はきちんとしていなければならない

方向性が確立した後なら上記は正しいのですが、ターゲットとコンテンツと自身の使命感が噛み合うまでには、試行錯誤と仮説検証を重ねる必要があります。

その段階ではむしろ、目的や仮説は軽く定めた上で、変化球も交えながら、色々気軽に試した方が良いのです。

端的にいえば、ノリでユルく試しまくれ、ということです。

ではどうすれば

まずは、以下2つの段階を区別します。
・方向性が定まる前の、試行錯誤の「試行フェーズ」
・方向性が定まり、本格展開をする「本格展開フェーズ」

前段のゴールは、試行錯誤により以下を確実にすることです。
・ターゲットとその課題の解像度を上げて絞り込む
・自身が本気になれることを体感で確信する
・それらとコンテンツの整合性を高める

なので、以下のように考え、気軽に色々試すと良いのです。

・目的は仮置きで、変えてもいい
・やりたいから、思いついたから、とりあえずやってみる、でいい
・ニーズがあるか、本気になれるかは、やって確かめればいい
・整合性や完成度はやりながら高めていけばいい
・公募しなくていい
=ターゲット属性の知り合いを直接口説けばいい
・本気の人が数人いればいい
・最初は参加者とつくるスタンスでいい
・場所やツールにお金をかけなくていい
・必要最低限の内容でいい
・オマケはあげなくていい
・一人で全部やればいい
・期待値は下げて合わせればいい
・失敗したら謝ればいい
・別にやめてもいい

ただし、いいかげんとは違います。方向性を定めるという目標に到達すべく、各回ごとに仮説を定めて検証し、改善を重ねるという、基本を外してはなりません。

なお、網羅的に試行を続けるには、効率的にやるための、割り切りと仕組みが必要です。

1)多様・多量のアイデアを、システマチックに出す
2)企画を素早く形にする
3)イベントを素早く成立させる
4)低負荷・効率的に運営する

これらも別途記事化します。

正解求め杉

正解があると考え、それを教えてもらい、その通りやろうと考える人もいます。

例えば以下のような質問の根底には、正解を求める気持ちがあります。

「コミュニティは何人くらいが最適ですか」
「運営に使うツールは何がいいですか」
「参加にあたって質問などを設けた方がいいですか」
「イベントは有料にした方がいいですか」
「案内文の文字数は何文字が最適ですか」

これらは、自分の意思、目的、ターゲットの属性、状況、自分との親和性などにより、最適解が異なります。

ビジネスパーソンがPC上のFacebookで見るのか、地方のシニアがスマホのLINEで見るのか、前提が変われば最適解など時には正反対なくらいに変わることは、容易に想像できるでしょう。

参考程度のパターンは作れなくはないですが、「自分で考え、検証し、判断」する方が早いです。本気で相手のためを思うなら、教えられなくとも試行錯誤を続け、最適解を出す努力は惜しまないはずです。

失敗おそれ杉

言ってしまえば、たかがプライベートな取り組みです。仕事や人生の一大事ではありませんから、失敗したって大した話ではないでしょう。その程度の失敗を恐れて前に進めないのは、その程度の本気度でしかないということでしょう。

注目を浴びているコミュニティを立ち上げた人にはたいてい「黒歴史」があります。それは恥ずかしいことではありません。そんなものにめげず前に進んだから、今があると言えるのです。

他人をアテにし杉

初めてのコミュニティ立ち上げに意気込んで、以下をやらかす人がいます。

・いきなり運営メンバーを公募する
・手を挙げた人を「運営メンバー」と決めてしまう
・なぜ、何のために手を挙げたかを深く聞かない
・自分の「こうしたい」も示さず、皆さんの意見は?と聞くことをティール組織と考えている
・具体性に欠けた文章をコミュニティのビジョンとして公開する
・書いたものを公開したら、相手に伝わっている(べき)と考える
・具体的に何をするのか、それは何のためなのか、参画を通じてどんなベネフィットがあるのか曖昧なまま、人に作業を命じる
・(当然の)結果として、コミュニティがうまく立ち上がらない
・「運営メンバー」が、自分で考え、自発的にアクションしないことが原因だと嘆く

人をアテにし過ぎです。
他人が自分の思い通り動くわけがありません。

なぜそうなるか

自分の考えに酔って、これは良い活動だから、他の人も手伝うはず(べき)だと、疑いもなく考えていませんか。

そもそも会社のような、昇進や賞与を左右するインセンティブや指揮命令系統がある場合ですら、人が言う通り動くとは限りません。自ら考えて自律的にアクションするなどなおさら期待できません。その上、無償で自主的な関係なのですから、難易度はさらに高まります。

前向きな人ですら、最初は自分にメリットがあるか、どの程度の手間をかけるか様子見します。やると手を挙げたからといって、アテになる訳ではありません。忙しく優秀な人ほど、早い段階で見切りをつけます。

参画へのベネフィットを信じてもらえなければ、人が離れます。

実績も材料もない、名もなき人が立ち上げたコミュニティに、信じてもらえるベネフィットなど普通はありません。よって、未来の価値実現を信じてもらう必要があります。

伝えたつもりと伝わったことは違います。書いただけ、公開しただけ、言っただけでは伝わりません。伝える責務は主催者にあります。工夫と努力を重ねるのが主催側のたちの責務です。

ていねいに人を巻き込み続ければ、本気度の高いフォロワーが自ずと明らかになります。そういう実績を見て運営メンバーをお願いすれば良いのです。

ちなみに世の中には、「メンバー」という立場を目的に、この手の公募に反射的に手を挙げて、あちこちで名ばかり運営メンバーとしてちょい噛みしながら、どこでも大して何もしない輩もいます。

何もない段階での公募は、徒にそういう層を呼び寄せる可能性があるので、個別の声がけも並行実施することを、個人的にお勧めしています。

ではどうするか

主催者自ら、伝えるべき人に、伝わるまで、伝える工夫を続けることです。

自己満足が目的なら、そこまではできません。何とかしようとアクションを続けられるかが、自らの試金石となります。

ベネフィットを明確にするには、相手が何を求めているかを掘り下げなければなりません。私がオンラインで場を立ち上げる際は、30人以上と平均30分の1 on 1を実施しました。もちろんボランタリーです。

立ち上げ段階では相手のメリットになる材料がありません。上策ではありませんが、人間関係による補完も必要です。

本気で考えてアクションを続ければ、それ自身が実績と自信になり、こいつならやりそうだという気迫もでます。課題や実行プランの解像度も上がります。それらが未来を信じさせる根拠となります。

端的にいえば、本気のアクションとコミュニケーションを続けることです。

そもそも、必要最小限の構成にすれば、1人でできるはずです。明確な根拠もなく、最初から運営メンバーを集めようとするのは、大抵自分でやり切る自信がない裏返しだったりしがちです。

おもしろ杉なら、大半の問題は解決

人を集めたければ、参加者の期待を圧倒的に上回る価値を提供する場をつくればいいだけの話です。

素晴らしい体験をしたら、頼まずとも素晴らしさを人に伝え、参加者が新しい参加者を誘います。他の諸々も、全てこれで解決します。

集客に苦労するのは、価値が曖昧だからです。

相手のためを考え抜き、試行錯誤を重ねれば、誰でもいい場はつくれます。自分ではなく他者のために行動し続けるには、使命的な自覚が必要で、自己満足でそこまではできません。

使命を自覚するには行動あるのみで、行動の量と幅を増やすには・・・

おっと、だんだんと同義反復し始めてきたようです。
そろそろお後が宜しいようで。

そんなわけで、気軽に楽しく、場づくりにトライしてみて下さい!

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