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#短詩

凹凸

すさんだ心の凹凸に 
朝露が満ちて溢れて

飴玉

うずくまる心、初夏の日暮れに 
光を集めて冷たい飴玉。

薄皮

薄皮を重ねれば重ねるほど
透明度を増す不思議な年輪
そのうち届くと思うよ
太い幹は空気に溶けて
葉っぱは自由に舞うだろう

片隅

固い土の不器用なおもいに守られながら
冷えたバルコニーの小さな鉢植え
日の光がもうすぐ届く片隅にある

あいのこと

なかったことにおもいこみ
かなったことはわすれがち
とぎれとぎれのあいのこと

鉄路

憎しみに変わる前に
悲しみが立ち尽くしたから
その機を逃さず泣いた 

きれいな涙に憧れていた
頑固な鉄路の
乾いた錆の純情 

保温

はらへって
切なく疼いて
息を吐く
炊けてなかった
保温のままで

透明

この安物めは完璧だ
冷たい雨をみひらいて、
みあげることができる
この透明のビニール傘だ

桂馬ステップ

ぐらりときてるが構わず跳ぼう 
次の一歩は桂馬ステップ

面倒臭いな生霊

とぼとぼとついてくる
横飛びしてもついてくる
面倒臭いな生霊

とぼとぼとついていく
大きく開けた世界が怖くて
追い越す勇気がない
面倒臭いな私の生霊

板チョコサーファー

甘くて苦い 板チョコサーファー 
塩辛い波 軽々と 

ナマモノ

ぼくはナマモノ生きるもの
すぐに腐るし鼻につく

気持ち

この子の中を流れる
あの子の気持ち
気持ちの中を気持ちは流れる

眠ろう

この日が暮れる前に家に帰り着けそうな幸福
川のせせらぎにはまだ日射しの匂いが残っている
電車がサラリーマンの気配を運んでいるうちに眠ろう
八時には眠ろう