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【若手社員が勝手に"イケてる企業のC.I.を切る"!~リライト編~】◆「第16回:フェスタリアホールディングス 株式会社 」

第16回は、創業大正9年(1920年/長崎県大村市で貞松時計店として開業)2018年に、現在の社名に変更した「ジュエリー業界にイノベーションを起こした」と言われているアジア市場を視野に活動されている「フェスタリアホールディングス 株式会社」です。
*旧社名:株式会社 サダマツ

フェスタリア_イメージ



この会社は、長崎→福岡→東京中目黒と本社を移転し、業態も、時計店→眼鏡店→宝石店(ジュエリー)へと変化されてきた会社です。
今では、銀座中央通りに本店を構え、国内・海外の有名百貨店やショッピングモールで、複数ブランドのジュエリーショップを展開しています。生産は、全て 海外の自社工場を活用し、企画から製造、販売までを一貫して自社で行うSPA企業(製造小売業)です。EC事業やフランチャイズ事業など新たなチャネル展開も積極的に行なっている 今 勢いのある会社です。
売上高は、グループ全体で約100億円(2019年8月期)、従業員は約569名で、2002年にはIPO(株式公開)されています。
*主力商品は「夢を叶える2つの星のダイヤモンド」
『Wishe upon a star』をUSP商品として展開中です。

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【ジュエリー業界の現状】
■1.「市場が縮小している」
*ジュエリー業界が取り扱う宝飾品は生活必需品ではないため、景気の良し悪しで売り上げが大きく変わってしまいます。現在の市場規模は、バブル期の3分の1程度となっています。
■2.「多様な業態の企業が登場している」
*貴金属や宝飾品を取り扱っているリサイクル・ショップ、更には 定期レンタルで貸し出す企業も登場し、近年ではジュエリー自体が身近なものとなっています。
■3.「海外展開や顧客ニーズに変化が見られる」
*現在はアジアなどを中心に海外で店舗を展開し、売り上げを伸ばしている企業もあります。
*InstagramなどのSNSで、海外の女優やセレブが実際に身に付けることで、人気が向上することが多くなっています。また、ジュエリーその物を「歯」に付けるなど、新しいコンセプトもみられています。

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それでは、「フェスタリア」の「イケてるC.I.」の一部を紹介します。
【企業理念】
「ジュエリーに愛と夢を込めて」
『bijou de famille』(ビジュ ド ファミーユ)
豊かな気持ち、かけがえのない想い出、ずっと持ち続けていたい夢
私達の使命は、大切なあなたに、ジュエリーとともに愛と夢をお届けしていくことです。
*「bijou de famille」:フランス語で「家族の宝石」という意味。
ヨーロッパに古くから伝わる習慣で、祖母から母へ。母から娘へ、あるいは、花嫁へ。家族の「愛の証」として一生もののビジュ(宝石)を、世代を超えて受け継いでいく習慣。ひとりひとりの命は限りあるものですが、宝石の輝きは永遠。家族の愛が、宝石の輝きのように永久に続いていくようにと想いが込められている。

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【若手なりの成長の理由分析】
先ず 何と言っても、C.I.の完成度が"凄い"と思いました。創られたものと言うより、貞松社長の「体験」や「経験」から滲み出てきたものだと感じます。C.I.(企業理念)と企業活動(スピリッツ)が一致している所が、素敵です。
そして、貞松社長の 常に業界の常識を疑う姿勢と、その本質を見抜く力が、ズバ抜けていると感じました。会社を調べれば調べるほど、私自身がとても勉強になりました。

それでは 若手の私なりに、「フェスタリア」が成長し続けている理由を、"5つ"の切り口から上げさせて頂きます。
■1.「貞松隆弥社長の『夢』へのトラウマ!」(挫折経験)
*プロのミュージシャンを目指されていた時、お父さんが倒れられ、家業を継いだことで「夢」を諦めた「トラウマ」が、後のキーワード(夢)を生みます。
また 家を継いで、ある事件が起こり多くの社員が辞めた経験から「自暴自棄」になり、ヤクザと喧嘩して刺され、死に掛けた経験もお持ちです。
その後、あるお寺の和尚の一言で、人生を変えられます。
「甘えるな!」と。この言葉が後の「貞松社長」を変えました。所謂「目から鱗が落ちた。」です。
*貞松社長のこのような経験、そして 元ミュージシャンだったことから、「何かを伝えたい」という"想い"は、人一倍に強烈です。貞松社長自身、「伝えたいことがあるから『モノ』を創る。そして、それに『共感』『参加』してくれるか否かだけ」と述べられています。シンプルですが、真髄を突いた深い言葉だと思います。

■2.「貞松家に三代続いた商人魂!」(価値判断)
*時計職人だった「お祖父さん」の教えに…
「世の中に必要ないものは、なくなる。」→「だから必要なことをやりなさい。」「これが何に役立つのか考えなさい。」
この考え方が、ジュエリー業界に後発参入した時の判断材料になっています。所謂『bijou de famille』です。
*ジュエリービジネスは、人類で一番古いと言われ「クレオパトラの時代」から行われて来ました。

■3.「貞松社長のマーケティングセンス!」(勘と理論思考)
*ジュエリー業界への参入判断は、こうして生まれました。
バブル全盛期 ジュエリー業界は3兆円、4兆円あった市場規模が、崩壊後、1兆5,000億まで縮小し大手が潰れる中で、眼鏡の市場は5,000億だったことから、市場は3倍だと判断し、後発ながら参入しました。また ジュエリー業界の大手でも300億円規模だったことも参入の大きな理由になっています。
*ジュエリー店舗・1号店(1993年 沖縄 ジャスコ)出店の判断は、偶然の産物と勘、そして理論思考でした。
オープン4ヶ月前に、大手がキャンセルし、夢を諦めた場所だったこと。そして、下記のようなマーケティングの考え方があったからです。
●1.沖縄県人口 140万商圏(共働き率日本一)
●2.米軍基地によって南部(那覇周辺)に人口が密集(福岡より密集)
●3.鉄道がない車社会(国際通り周辺には駐車場が少ない)
●4.共働き率 日本一(女性の発言力がある)
●5.南国で胸元を開けた洋服を着ている人が多い
この条件から、沖縄 ジャスコには、お客さん(情報が集まる)と判断し出店しました。
地方都市で人口30万程度の都市では、郊外型ショッピングモールに様々な情報が集まります。GMS(スーパー)があり、来店頻度が高いからです。
この環境の中で、「情報発信」ではなく、「情報受信」(お客様の名簿)し、CRM戦略を取りました。
なぜなら…
ジュエリーの「購買動機」からCRM施策をおこなっています。
●1.誕生日
●2.個人的な記念日「結婚記念日」
●3.店舗で見て気に入った時
●4.自分へのご褒美(*4は、平成2年ごろから)
当時、ジュエリー業界の販促は、Xmasしかやっていなかった為、名簿を活用した様々な施策をおこないました。

■4.「マーケティングに基づいブランド戦略!」
*貞松社長が取られたCRM戦略は…
●「地方都市」(田舎)のCRM
若い人から年配者、お年寄りまで幅広い層がターゲットにCRM施策を実施。
●「都心」のCRM
お客さまの思考が成熟していて、自分のスタイルが、はっきりしている。また都心は、立地によってクラスターが はっきり分かれている為、情報発信が必要。
*「地方都市」と「都心」では、CRM施策の「間口」と「奥行き」が真逆になっています。
*また、今後マーケティングが大きく変わると言われています。
ジュエリー自体の価値も変化しました。
「資産価値」→「ファッション価値」(感性的/バブル崩壊後)→「精神的価値」(永遠)
マーケティングの神様「フリップ・コトラー氏」によると…
●今まで「M2.0→STP分析(資産価値・ファッション価値)」
これってどうですか?
●今後「M3.0→M2.0+精神価値」
これって良くないですか?
いいね!→これからは、「ミッション」「スピリッツ」が一番大切になると言われています。今後のマーケティングのキーワードは、「共感」と「仲間が集まる(お客さまが参加する)」
●将来「M4.0→5G時代になると、360°デジタルマーケティング」の施策が求められる。
*マーケティングに基づいたブランド戦略は…
●2006年 東京 表参道ヒルズに基幹店オープン
●2006年 海外に自社工場(ベトナムSPA工場)設立
●2017年 東京 銀座中央通り「フェスタリア ビジュソフイア ギンザ」をオープン(アジア戦略に基づいた情報発信基地)

■5.「ダイアモンドへの"探究心"!」
*世界中のダイヤモンドの9割が、「ラウンドブリリアントカット」というカット法を用いられています。そして、これが業界の常識でした。
しかし 貞松社長は、この100年前に開発されたカット法に疑問を抱いたと同時に、100年間 同じカット法が続いていることに、チャンスを感じたそうです。ダイアモンドのカット法なんて幾らでもあるので、「ラウンドブリリアントカット」に負けない輝きがあって、「ラウンドブリリアントカット」にない"付加価値"があるダイヤを創れたら もっと売れるはずだと。
そして、その"付加価値"こそが、「精神価値(M3.0)」だと考えました。
そうして 生まれたのが、主力商品である『Wishe upon a star』です。
今では ラウンドブリリアントカット以外の商品では、世界で一番 売れていると言われており、「ジュエリー業界にイノベーションを起こした」と言われている理由です。
*2019年10月、ダイヤモンド研究の第一人者である 畠 健一氏を招聘し、「ダイヤモンド研究所」を設立されました。これは、ダイヤモンドの歴史を紐解き、ダイヤモンドの現状、最新技術をより詳しく知り、ダイヤモンドの真の価値を伝えるための様々な研究や取り組みを行う機関とし位置付けられています。
企業理念である「ビジュ ド ファミーユ」のもと、世界の人々の願いを共に叶える象徴となり、そして 世界に通用するジュエリーの品質評価のグローバルスタンダードを確立することを目指されています。
私も前職は、家具のネット販売の会社にいましたが、その時に強く感じたことは、「『どう売るのか?』も大事だが、それ以上に『良い商品を創ること』が大事」という当たり前のことです。フェスタリアは、もっと視野を広げ 業界全体の為に、このようなことを実践されています。

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◎と言うことで…
「フェスタリアホールディングス」を調べて見ましたが、貞松社長が凄すぎるというのが率直な感想です。改めて かなり勉強させて頂きました。特に、データの捉え方です。
実は、沖縄に出店する際、他の人に沖縄についてのデータ資料を見せても、「全国で一番所得が低い、遠隔地で間接コストが掛かりすぎる」といった理由で反対されたそうです。それとは逆に、貞松社長は 表層だけを見るのではなく、その数字を深掘りすることで、全部 売れる資料に見えたそうです。
データというのは、やはり見る人によって捉え方は違うし、何より「チャンスは皆に平等にあり、それに気づくか否かの方が大きい」ということだと思います。
成長し続けている理由は、まだまだ書き足りませんが、貞松社長が言われているように「ジュエリー=永遠」は女性の感性そのものだと思います。
その準備として…
キャリアパス制度により女性の働き易い環境を創り、女性リーダーを育てる為に、一般社団法人「ウイメンズ・エンパワーメント・イン・ファッション」(WEF)と教育システムを構築されています。

しかし ジュエリー業界の将来は、明るいだけではありません。
人口減少による市場の縮小や、ブライダル需要の減少など 様々な課題を抱えています。
ここ数年のジュエリー業界を支えたものは、インバウンド需要でした。しかし 今回の、「新型コロナウイルス」の影響で、一気にインバウンド需要が減少し、ここ数年で一気に市場が縮小する可能性があります。特に、高額なジュエリー業界は対面型の販売がメインになるので、どちらかと言うとネット販売が難しい業界と言われています。更に 国内では、大手ジュエリー会社同士のM&Aも活発化すると言われています。
その為 今後は、国外での競争力強化が不可欠になります。そこで、「フェスタリアホールディングス」のアジア戦略が期待される所です。日本のジュエリー企業に於いて、まだ、インターナショナルブランドと呼べる企業は存在していませんので、是非 頑張って頂きたいです!

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●最後に、若手なりにC.I.について一言いわせて頂くとしたら…
大前提として本当に素敵なC.I.だと感じましたが、貞松社長の人生や考え方・想いが強烈なだけに「企業理念」が、少し勿体無くも感じてしまいました。初めて見た人に、意味が直感的には分からないと感じたからです。あくまで 補足の文章として、貞松社長の「想い」や「らしさ」、「何故 ジュエリーなのか?」といったことを、ストーリー化して表現すると、より一般生活者から"共感"を得るものになる気がしました。
また、「企業理念」に基づいた様々な企業活動の中で、「キャリアパス制度」を体現する具体的な「教育マニュアル」が、どのように"リンク"しているのか少し気になりました。
出来れば、コンカンが提唱するC.I.と、御社のC.I.を一度 照らし合わせて頂けると有り難いです。
*concanが考えるC.I.とは?
https://www.concan.co.jp/post/topics-ci
生意気を言って、すみませんでした。。。
長くなりましたが、以上です。

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