#現代4コマオールスター展2024 追想byトウソクジン
ヘッダー画像は原宿で見つけたイガイガひまわり。
4コマ!
8月2日から8月4日の3日間。原宿にあるデザインフェスタギャラリー原宿というところで、「現代4コマオールスター展2024」が開催された。展覧会レビューには違いないが、いつもと異なるのは私自身がその運営に関わっていたということ。
今回はおもに運営(関係者)側の視点に立った、ひと味違う記事になると思う。
現代4コマとは?
ひとまず軽く解説を挟んでおこう。現代4コマとは「4コママンガに囚われない4コマの姿を探求する、SNS発の新しいカルチャー」といった感じのものである。
みんなで日々「4コマ」を使って遊んでいる、やや大喜利に近いコンテンツだ。作品の発表、批評、討論などいろいろひっくるめてひとつの文化や運動、「現代4コマ」として成り立っている。単にシュルレアリスムと呼称するとき、その文学や美術、思想などを含むのに近いかもしれない。
現代4コマ作品を鑑賞するにあたって入門書となるであろう記事を以前執筆した。現代4コマ作品における主要な言語を「4つ・4種類ある状態」「4コマ」「4」「十字」の4種類と定め、それぞれに関連する表現方法を紹介している。よろしければぜひ読んでみていただきたい。
1日目
ここからはオールスター展の追想となる。
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10時半過ぎごろギャラリーに着く。会場はWEST館2-A室である。
いち早く着いたためギャラリーのスタッフさんにあいさつをし、そのあと会場であるWEST2-Aに入る。キャタツも借りた。
主催の人生さんたちが大荷物を持ってくる。キャプションデータの作成等はお手伝いできたけど、掲示物の印刷やそれらの搬入はお任せすることになってしまっていた。本当にありがとうございます。そしてお疲れさまでした……。
続々と在廊スタッフ、そして出品作家の方々が集まってきてくれた。さあ設営をしていこう!
ひっつき虫や両面テープ(ギャラリー指定のもの)で大量の掲示物を貼り付けていたのだが、思っていたより時間がかかる。みんなで頑張ったけど、2時間で終えて13:00開場のはずが、実際に終わったのは14:00から15:00の間くらいだった。
13:00過ぎに一応開場、人生さんが準備中のためゆっくり来てくださいと告知を打つ。設営の途中でひとり熱心な現代4コマファンの方がいらしてくれた。
先述の通り設営が終わったのは開場したあと。いや~在廊スタッフだけではとても終わりそうになかったから、早めに来て手伝ってくださった作家の皆さんには感謝しかない。これで正真正銘、オールスター展の始まりだ!
※変に気を張っていたのか、あまり持ち場から離れなかったためそんなに写真を撮れていない……。Xにも投稿されている本展の出品作を参照しながら、印象深い出来事を列挙していく形式をとろうと思う。基本は私が絡むこと、運営側として目の当たりにしたことを書いていく。
●なむさんと私の作品を売約してくれた方がいた
なむさんの『指紋が二つ少ない人』と私の『Entrance』のキャンバスアートを買いたいという方、マサヤンさんが現れた。前者はなむさんの作品のなかでもかなり好きなものだし、後者も自分のなかで気に入っている作品のためとてもうれしい。
なむさんが2日目以降に来るということで、マサヤンさんも翌日再訪されることに。……とは言いつつも、マサヤンさんは3日間とも足を運んでくださることになる。ありがたい。
●外国人観光客の方が怪作を気に入る
ひとりで物販コーナーに座っているとき、外国人の方に声をかけられた。
視力さんの作品、『コマ人間』のアクリルスタンドに目が留まったようだ。これは𝓢𝓽𝓪𝓷𝓭 𝓸𝓷させるアクリル製のフィギュアみたいなものだと、たどたどしくも伝えた(伝わっていたと思う……)。
「これはあなたが作ったのか?」と訊かれたため「いえ、Shiryokuという人です」と答え、視力さんの展示コーナーへ案内する。
結局グッズを買っていかれたわけではなかったのだけど、この作品を面白がれる感覚は万国共通なのかもなと思った。いわゆるピクトグラムってやつに近いし。コマ人間が4コマなのかはよくわからないが!
●作家の私物がお客さんにウケる
いとととさんの私物である4コマトートバッグ? を気に入って、これが一番好きと言っている方がいた。いいよね~。販売してほしい。
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1日目はこんな感じだろうか。久しぶりに会う作家さん、初めて会う作家さん、そしてお客さん。いろいろな方と言葉を交えた。
楽しかったけど疲れもある。翌日以降も体が保つか心配だった。この日は直帰し、2日目に備えた。
2日目
10:40ごろだっただろうか、ギャラリーに着く。在廊スタッフのひとりである最中猫さんにお目にかかる。彼は2日目からの参加となっていた。一晩の間に落ちてしまった掲示物があったため、ふたりで元に戻した。
そして前日に家で準備してきたものを貼り付ける。『撮影可の4コマ』と『Photography allowed』だ。撮影可能であることを明示し忘れていたため、1日目は付箋で作ったしょぼいものを掲げていたのだった。
この日の開場時間は11:00~18:00だ。
●パクチー
パクチーみたいな色のTシャツを着ていたため、展覧会のスタッフであることを示す首掛けの札に、「パクチー(トウソクジン)」と書いた紙を貼り付けた。この日はパクチーに自我を持っていかれたこともあった。
●私の耳は四のコマ
その場でこしらえた雑な現代4コマ詩を貼り付けた。元ネタはジャン・コクトー(堀口大學訳)の「私の耳は貝のから/海の響きをなつかしむ」という短い詩だ。
●ブルーレット、置かれる
写真を撮るのを失念していたのだが、部屋の隅にブルーレットが置かれた。それが発見される直前に部屋を出られた鯏副社長さんに置いた人物としての嫌疑がかかっていたが、当日中に彼ではなかったことが判明した。
●めちゃくちゃお話をする
とても熱心に鑑賞してくださっている方がいた。「4コママンガのススメWeb」のライター、すいーとポテトさんだ。過去には現代4コマも取り上げていただいている。とてもありがたい。
↓「4コママンガのススメWeb」(現在はtumblrではなくnote.comで更新されている)
↓すいーとポテトさんの個人的な記事
すいーとポテトさんとはたくさんお話をすることができた。私の現代4コマ詩シリーズを高く評価していただけてとてもうれしかった。
現代4コマ詩は短歌や俳句などの定型詩に、4コマの図像を組み込む手法が一般的。4コマと同時に定型詩を成立させないといけないため、これらを考えるのは結構難しいのだ。最近は作れていないから、なんとか新作に挑戦したいな……。
また私の代表作(と自負をしている)『サーモンおいしい』にも触れていただいた。
「コマを横並びに配置し、かつ傾けることで躍っているように見える。筆記体が視点の移動を促すため、動感がさらに強調される」といったようなことをおっしゃっていたのだが……
トウソクジンにそこまでの考えはありませんでした……。
そのような解釈ができるのかと純粋に驚いた。新たな見方を加えていただけてとてもうれしい。
そのあとも他の作家さんと言葉を交わされていた。そして『サーモンおいしい』といとととさんの『ベートーヴェンの4コマ』のキャンバスアートをご購入いただいた。ありがとうございます!
後日「4コママンガのススメWeb」さんから本展のレビュー記事が出るとのこと。とても楽しみだ。
●マスコット? 現る
出品作家であるアラヤマさんが謎のかぶり物を身につけてやって来た。あたり判定が大きい。そして下を向くときにかぶり物を抑えていたため、なんだか深く考えているようにも見えた。場の空気を完全に自分のものにしていて強者だった。
●みんなでサインを書く
マサヤンさんがいらっしゃって、彼が持ってきた色紙にみんなでサインを書いた。これはなかなかすごい代物だぞ……! なむさんともお話できたようだった。
また売約されていた『指紋が二つ少ない人』と『Entrance』を購入いただいた。ありがとうございます!
●現四通信を気に入っていただく
来場された方が現代4コマのフリーペーパー「現四通信」に興味を持ってくださり、2024年7月号を持って帰られることになった。これはすごいことだ! 私はとてもうれしかったし、発行に関わっている方々もそうだったに違いない。
●ヨングラス、壊れる
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2日目はこんな感じ。お名前は挙げないが仲良くしていただいているフォロワーさんが来てくださったり、昨年11月に開催された「現代4コマ展in湘南」の主催者さんがいらっしゃったりした。かなり遠方の作家さんたちも数人駆けつけてくれて、とても賑やかな1日だった。
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といってもこの日はこれで終わりではない。まず1日目の晩とは違い、ホテルに泊まることになっていた。そして皆さんと別れたあと、いとととさんと一緒に『ヨングラス』の補修で使う接着剤を探しに行った。
新宿駅に移動し、鈍器に行って見つからず、ドラッグストア(松本清)に行っても見つからず、コンビニ(F)に行っても見つからず……。
そろそろ諦めようとしたいたところ、コンビニ(7)で接着剤を発見!!!!
いやこれじゃない。製品のアロンアルフ○だ。よかった~。
接着剤を見つけたあとはいとととさんと少しお話をした。おもしろいことを考える人の思考を垣間見ることができとてもよかった。また明日! と別れたものの、泊まるホテルがわりと近くて途中まで道が一緒だった、というエピソードもある。
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ホテルは初めて泊まるところだったが、なかなか快適だった。ほどほどの時間で横になる。
3日目
6:00過ぎに目が覚め、まだ早いと二度寝。ふたたび起きると8:30くらいだった。ちょうどいい時間である。
ホテルの食堂で優雅にモーニング(370円)をいただく。バターを塗った食パン2枚とゆで卵、ホットコーヒーのシンプルなセットだ。
いつでもチェックアウトできるよう準備をしたあと、休憩室で少しだけ読書をした。
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ホテルを出、10:40ごろギャラリーに着く。とうとう最終日だ。
●イカ
アワダさんが𝓢𝓺𝓾𝓲𝓭(イカ)の4コマをくれた。イカ、つまり頭足類だ。「トウソクジン」の由来のひとつである「頭足人」にかけて、『サーモンおいしい』をはじめとした筆記体シリーズのオマージュとして作ってくれたのだろう。ありがとうございます!
前日はパクチーだったが、この日は首掛けの札に𝓢𝓺𝓾𝓲𝓭をつけて歩き回った。名札代わりに「トウソクジン(頭足類)(空)」みたいなことを書いた紙を胸ポケットに貼り付ける。この日は空色というか曇天一歩手前、みたいな色のTシャツを着ていた。
●ヨングラス、なんとかなる
いとととさんが頑張って補修していたがなかなかうまくいかず……。挟むものないかなと在廊スタッフで話していたのだが、最終的にはなんとかなり、かたちはもとに戻ったようだ。リタ伯爵さんが心強かった。
また作るんか……!?
●ひとびと、暴れる
3日目は物販コーナーの番を人生さんと最中猫さんに任せ(すまん)、部屋に新作を設置したり来場者とお話をしたりすることが多かった。
よくわからんものをいろいろ生み出す。写真は撮り忘れたが、『4コマは何者もこばまぬ』とか『何か思いつきそうだった』とか『open!(アワダさん案)』とかも作った。
2日目あたりから、こうして出品作以外のものをその場で展示する行為が加速した気がする。
●何やってんだ!
付箋が伸びてた。4コマ関係ねぇ!
上掲の写真は、ちょうど雀100さんが「ペロンアルファ」を撮っているところなのではないだろうか。
伸びすぎだよ!!!!
ほとんどバリケード化していた。
まあ私もいくつか加担したんだけどね。
●『土星』売れる
旧知の友人ふたりが来てくれた。じっくりゆっくり観てくれていた。作家さんたちともお話していたな。楽しんでくれたようで何よりだ。
ひとりが私の作品『土星』のキャンバスアートを買ってくれた。ありがとうございます!
そういえばキャンバスアートを購入いただいたとき、Xでお礼のメッセージを書いた。
●『製麺機からうにょん』を買う
現代4コマ作品のなかでも好きなもののひとつ、んぷとらさんの『製麺機からうにょん』のキャンバスアートを購入。
閉場時に残っていたら買おう、くらいのつもりだったのだが、意外と他作品の売れ行きがよく、手に入らないのは惜しいため早めの決断を下した。
いまは毎日壁からうにょんしてもらっている。もうこれなしでは生きられない体になってしまった。
●ヌニャる
時間をもらって外出、スタバでヌニャってきた。冷たい飲み物が染みるぜ……。
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さてさて、17:00過ぎとなり、惜しくも閉場の時間だ。3日間合わせて、なんと230人ほど動員することができた。すごい!
残った関係者みんなで協力して掲示物を剥がし、撤収の準備を進める。ひととおり作業が終わったあと、掲示物の一部を各人が持ち帰ることに。翌日はオールスター展4日目だ!
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19:30ごろ。ギャラリースタッフさんに現状回復後の状態を確認してもらい、晴れて撤収完了となる。
3日目もこれで終わり。皆さんお疲れさまでした。また会えるといいな。いや、また会いましょう!
4日目
オールスター展 4日目──
設営場所が限られていたため、複数回の作品入れ替えが行われた。
また展覧会を振り返れる楽しさと、終わってしまったんだなというもの悲しさがある。
こちらはいただきもの。九本さん、アワダさん、雀100さん、んぷとらさん、ありがとうございます!
購入品
おわりに
うまくまとめられる気がしないため、よかったことを大きくふたつに分けて書いていく。
●色々な人に会えた
何よりもまずは、たくさんの人に会えたことがうれしかった。
久しぶりの方も初めての方も、日本各地から現代4コマ作家さんが来てくれた。みんな実体があったということを確認できてよかった。まったく同じメンバーが一堂に会することはないかもしれないけど、いつかまたグループ展を開けるといいな……。私も企画力を磨かなくちゃ。
来場者の方々とのお話も楽しかった。本展を機に新たに現代4コマへと参入してくれた人もいて、それも非常にうれしい出来事だった。
●キャプションが思いのほか好評だった
私は一部キャプションの文章を書き、そして全キャプションの監修・製作を担当したのだが、「『網膜音楽』は説明を見てはじめて理解できた」とか「展示品のなかでも『添え4』のキャプションがおもしろく、笑ってしまった」とか、そういったお言葉をSNS上で見ることができた(後者のご意見は、同じくキャプション担当だった視力さんからのタレコミだ)。
会場でも解説に目を留めてくださる方がいたように思う。私は展覧会に行ったら時間の許す限りは文章も読む派なのだが、読まない人もいることは重々承知の上作成した。それでも褒めていただけるのは制作者冥利に尽きるというものだ。うれしくなっちゃったため、概念紹介キャプションをすべて掲載しよう。気になったものはぜひ調べてみてね。
おわりのおわり
楽しかったし楽しんでもらえた。そんな展覧会になったんじゃないだろうか。いままでに観たどんな展覧会よりも豪華だったし高い密度だった。願わくばこのエネルギーが途切れることなく続いてほしい。
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本展を企画・主催された人生さん、運営チームの最中猫さん、いとととさん、んぷとらさん、視力さん、九本さん、ケフィアさん。作品タイトルの英訳を担当いただいたきのじさん。出品作家のぷらりねさん、なむさん、アワダさん、桜桃さん、アラヤマさん、鯏副社長さん、qpdbさん、雀100さん、リタ伯爵さん、朽羊歯ゾーンさん、:)さん、城ぶどうさん(順番は告知画像の参加アーティスト紹介に準拠)。そして『自由に会話できる○てじん(展開図)』を出品されたエソラゴト(周六)さんはじめすべての現代4コマ作家の皆さま、ご来場いただいた皆さま、ギャラリースタッフの皆さまに心より御礼申し上げます。
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ご報告
8/8(4コマの日)をもって、Xアカウント「現代4コマ」の運営スタッフに加わることとなりました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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