マガジンのカバー画像

4コママンガのススメWeb

11
毎月4日・14日・24日の前後に4コママンガの紹介や感想を投稿します。メンバーは、すいーとポテト、水池亘、量産型砂ネズミの三名です。/2024年3月以前の記事は Tumblr の…
運営しているクリエイター

記事一覧

小さな体に大きな恋――紬音ユユ『S×S どっちも背が低いカップルのお話』

 背は小さいけどおむねはおおきい……ふむ、続けたまえ。  紬音(つむね)ユユ『S×S どっちも背が低いカップルのお話』は、高校生でクラスメイトの二人、身長 158cm の進藤卓(すぐる)くんと自称 145cm(本当は 143cm)の鈴木さくらちゃんが織りなすラブコメ4コマだ。タイトルの「S×S」は二人がスモールサイズ同士であることに加えて名前のイニシャルもあらわしている。2015年から9年間続くシリーズであり、紬音さんの顔とも言える作品だ。Kindle ではウェブ連載をまと

驚きの演出、誰にも真似できない世界――若鶏にこみ『かみねぐしまい』

 若鶏にこみ『かみねぐしまい』1巻が発売されました。神様の子供という異邦人を起点に、双子の姉妹とその家族の心のやりとりを繊細かつ丹念に描いた本作は、まず何より物語としてずっしりとした手応えのある傑作です。また、この作者にしか描けない独特の雰囲気・世界観もまた大きな魅力のひとつでしょう。  本稿では世界観描写の基盤となっている特異な演出テクニックの数々について紹介します。いや本当に、凄いんですから。  序盤ですが、最も驚嘆したシーンです。ごく自然な日常描写の中で「(部活を)知

楽しさのおすそ分け――さいにゃん『てくてくっ!秘密リサーチ』

 さいにゃん『てくてくっ!秘密リサーチ』の主人公・ひぐれは歴史に思いをはせながら街を歩くのが趣味の女子高生です。例えばこんなふうに。  古地図を片手に、「地下に埋められた川」である春の小川をたどって水源を探す。そんな散策は知的好奇心をくすぐるもので、とても楽しそうです。この楽しさを少しでも人に知ってもらいたい、そんな思いから彼女は散策のたび、動画に撮って自身のチャンネルにアップしていました。  ただ自分が楽しむためだけならネットにアップする必要もないですから、彼女は趣味を

世界の平和を守り宇宙一のアイドルになる!特撮アイドル4コマ登場――猫にゃん『Vドライブ』

 今回取り上げるのは猫にゃんさんの新作『Vドライブ』です。前作に続き特撮をモチーフにしています。前作の『ニチアサ以外はやっています!』が特撮を愛する女子高生たちが部活で特撮作品を作り上げるストーリーですが、今作はストレートに特撮作品となっています。動画配信と変身ヒーローを組み合わせたヒロインが人類の敵と戦うストーリーなのです。  作品の中での最重要キーワードが「Vライバー」。アバターの姿で歌い踊る仮想空間のアイドルです。いわゆるVチューバー、バーチャルYouTuberです

みんな違って、みんなおいしい――ハマサキ『べじハム』

 かわいい+おいしい→メロメロ。  ハマサキ『べじハム』は野菜のようなハムスターのような生き物・べじハムがお姉さんと一緒に暮らす日常系マンガだ。鉢で育つべじハムは体の一部が野菜になり、お姉さんの食生活に彩りを与えていく。メインは「じゃがハム」「ねぎハム」「にんじんハム」「えだまめハム」の四匹で、他にも様々な野菜のべじハムが登場する。監修は野菜のエキスパートである青髭のテツさんが務めており、幕間では野菜の豆知識コラムも読める。  べじハムたちは野菜の特徴が活きたキャラクター

異常な熱意、異常な精神性――青田めい『オールドヨコハマラジオアワー』

 これ、恐ろしいのは1回のループに半年かかっていることなんですよね。計12年半。頭おかしくならないのか。ならないのです。だって推しへの愛があるから!  青田めい『オールドヨコハマラジオアワー』は推しタレントの推しラジオ終了を阻止するべくループを繰り返す女性の物語です。彼女の熱量は全て「このラジオをずっと聞き続けたい」という思いによるもの。そこに混じり気はひとつもありません。  似たような思いを経験した人も多いでしょう。しかし、直後に半年前にタイムリープして「やった! これで

お嬢様は庶民の味に興味津々――房『慧都様にはお見通し!?』

 可愛いぽっちゃりキャラに定評のある房さんの初4コマ作品です。  主人公の四王天慧都(しおうでん けいと)はフランス育ちのお嬢様で15歳で親元を離れ来日しました。庶民の学校に通い人生の勉強をするという設定です。性格はプライドが高く高飛車で負けず嫌い。スペックは高いのですが豆腐メンタルなところがあります。「全知全能の私に解けない謎などありませんわあ!」と言っちゃうキャラなのです。  彼女が目の前に現れる謎を推理力で解き明かしていくコメディです。解き明かす謎というのが食べ物。た

『スマ見の4コママンガ劇場』で珠玉の4コマをまとめ読みしよう

 以前に旧ススメWebで紹介した「スマ見」さんのマンガが『スマ見の4コママンガ劇場』シリーズとして Kindle の電子書籍になっています。Twitter でのコママンガをまとめたもので、現在までに全5巻が出ており、すべて無料で(Kindle Unlimited でなくても無料で)読むことができます。  スマ見さんのファンとしては、ぜひみなさんにも珠玉の4コマを読んでいただきたい、ということで、この記事では私が独自に5つの観点を設定し、それぞれ2本、合計10本を選り抜きで紹

たとえ推しと知り合ったとしても――むぐら『escape into the light』

 推しと知り合いになったら、あなたはどうしますか?  むぐら『escape into the light』はとある少女・つむぎが、大ファンだった匿名ネット歌手・miraiの正体・みきと学校で知り合うところから始まります。何とクラスメイトだったのですね。ものすごい偶然ですが、喜ばしくはありません。なぜなら、その「推しの中の人」は人を見下し寄せ付けない最悪な性格だったからです。  面白いのは、そこでつむぎがあまりショックを受けないところ。  彼女は推しそのものを目の前にして、「

この想いは私の命とともに――類家海『けがわとなかみ』

   「すきです」。好意を端的に伝える言葉です。ですがこの奇妙な関係は何でしょう。被捕食者が捕食者に対しての告白です。  きつねでなくてもこの状況には戸惑います。これから喰らおうとしていた獲物が好意の告白をしてきたのです。戸惑いは疑問と興味を誘発します。きつねの感情はそのまま読者の感情とリンクするのです。キャラクターの造形もきつねが写実に近いのに対して、獲物であるうさぎはカリカチュアライズされています。これがこの作品の1話目です。まさしく狐につままれたこの状況は何か面白いこ

「4コママンガのススメWeb」は Tumblr から note に引っ越しました

お知らせ本編 管理者のすいーとポテトです。ブログ引っ越しのお知らせです。 「4コママンガのススメWeb」は Tumblr からこの note に引っ越しました。共同運営マガジンの機能を使い、次のリンク先で更新していきます。  過去の記事の移行は難しかったため、note ではまっさらからの更新になります。今後も Tumblr の方は削除せずに残し続けますので、過去の記事は次のリンク先から参照ください。  今後も「4コママンガのススメWeb」をよろしくお願いします。 引越