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お嬢様は庶民の味に興味津々――房『慧都様にはお見通し!?』

 可愛いぽっちゃりキャラに定評のある房さんの初4コマ作品です。 
主人公の四王天慧都(しおうでん けいと)はフランス育ちのお嬢様で15歳で親元を離れ来日しました。庶民の学校に通い人生の勉強をするという設定です。性格はプライドが高く高飛車で負けず嫌い。スペックは高いのですが豆腐メンタルなところがあります。「全知全能の私に解けない謎などありませんわあ!」と言っちゃうキャラなのです。

 彼女が目の前に現れる謎を推理力で解き明かしていくコメディです。解き明かす謎というのが食べ物。たこ焼き、カレーライス、うどん、焼き鳥、クレープ、唐揚げ、かき氷。変化球でパン食い競争というのもあります。日本で暮らしていると身近な食べ物です。これを慧都が名前だけ聞いた食べ物を試行錯誤して解き明かしていくわけですね。フランス育ちの上流階級のお嬢様というのはキャラ付けだけでなく、庶民の食べるものを知らないというギミックになっています。
 たこ焼きという名前だけでたこ焼きにたどり着けるか。その存在を知っている読者にはもはや経験できない、知らない食べ物に相対する慧都の思考の追体験が面白さの肝なのです。

 知らない食べ物を調理しようとする以上そこには失敗がつきものです。慧都のトライアンドエラーが笑いを誘う構図なのですが、失敗を笑うというのは読者のネガティブ感情を生じさせるリスクもあります。それを回避するための作品には仕掛けが施されているのです。
 一つ目は慧都というキャラクター自体にその効果が発生しています。慧都は高飛車、負けず嫌い、大言壮語と有言実行で自ら退路を断つという性格です。乗せられた感はありますが、未知の料理への挑戦は慧都自身が望んでいて、強制された行為ではありません。負けず嫌いゆえに挫けそうになっても挑戦を諦めない。前向きな慧都の姿勢が良い印象を与えています。


 二つ目は慧都へのフォローが行き届いていることです。慧都に仕える執事の忠佑(ただすけ)とメイドの牡丹は慧都か料理に挑む際に材料と調理器具を用意します。まったくの無から慧都は挑戦することはありません。

 また料理に行き詰まった慧都にヒントを出します。慧都へのバックアップがされているので慧都のチャレンジを安心して観てられるのです。ただ執事の忠佑は結構いい性格なので、主人である慧都をけしかけることが多々あり笑いの幅を広げています。
 三つ目は成功結果を得られることです。慧都はトライアンドエラーで苦心惨憺としても最後には成果を手にすることができます。成果の中身は目的の料理だけでなく、挑戦することで慧都の人生がちょっとずつ広くなる要素も含んでいるのです。

 これはカレーを作り開けた際の慧都です。満足感に浸る表情は苦労に見合う成果を得ていることがわかります。

 慧都トライアンドエラーを面白さの肝にしているのですが、ネガティブ感は排除して笑いにしているのです。

 最後に房さんといえば何はともあれぽっちゃりキャラです。可愛いぽっちゃりキャラは語っておかないといけません。主人公の慧都はファミリー4コマ誌ということもあってほんのりぽっちゃりですが、たまにぽっちゃり、むっちりのエレガントな姿をみせてくれます。

 眼福ですね。さらに慧都以上にぽっちゃりの可愛さを知らしめてくれるのが、メイドの牡丹。素晴らしいぽっちゃりラインのキャラクターです。

 デフォルメをしながらもぽっちゃりの可愛さを表現しています。流石です。ぽっちゃりの可愛さが好きな人にはたまらないキャラクター造形を楽しませてくれます。

 


画像出典 芳文社 『慧都様にはお見通し!?』1巻 P3,P6,P10,P25,P52,P69


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