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みんな違って、みんなおいしい――ハマサキ『べじハム』

1巻7ページ

 かわいい+おいしい→メロメロ。

 ハマサキべじハムは野菜のようなハムスターのような生き物・べじハムがお姉さんと一緒に暮らす日常系マンガだ。鉢で育つべじハムは体の一部が野菜になり、お姉さんの食生活に彩りを与えていく。メインは「じゃがハム」「ねぎハム」「にんじんハム」「えだまめハム」の四匹で、他にも様々な野菜のべじハムが登場する。監修は野菜のエキスパートである青髭のテツさんが務めており、幕間では野菜の豆知識コラムも読める。



1巻16ページ

 べじハムたちは野菜の特徴が活きたキャラクターで読者を楽しませてくれる。ねぎハムは緑色の葉身部分を髪の毛のようにキメるオシャレさん。切って食べちゃうお姉さんにはねぎぼうずを生やして対抗するぞ。しかしそれでも食べようとするのがこのお姉さん。それほどべじハムの野菜がおいしいのか、はたまたお姉さんが食いしん坊なのか。


1巻67ページ

 にんじんハムは、お姉さんの友だちのハムスター(本物)に頭の葉っぱを食べられる。でもまた伸びてくるから大丈夫。根菜である身は切ったら戻らない=食べてもらいづらいことがにんじんハムにはコンプレックスだったようで、それが解消された4コマ目のキラキラした表情が可愛らしい。


2巻67ページ

 ハリネズミ?  いいえ、イガグリの「くりハム」です。トゲトゲのジレンマに落ち込んだところにみんなの優しさがあったかいね……。どのべじハムにも輝くシーンがある良心的な物語は、野菜を単なる食べ物としてだけでなく、個性ある存在であることを照らし出している。


2巻124ページ

 野菜がテーマなだけあって、作中ではお姉さんがちょくちょく料理をする。寝ぼけた朝でも野菜の力で一日を元気にスタートだ。4コマ目でハイタッチするにんじんハムとお姉さんからは、『やったね』の気持ちだけでなく、『ありがとね』の気持ちも何だか感じられる。べじハムが意志を交わせる存在として描かれているからこそ、彼らとの交流には野菜という食べ物から栄養そしてパワーをもらう、人間のポジティブな心があらわれているように思うのだ。

 小動物的な可愛さはもちろんのこと、多様性ある擬人的なキャラクターとして描かれているところが、べじハムの魅力だろう。物言わぬ存在であるはずの野菜と、こんな風にコミュニケーションできたら楽しそうだな、と思わせてくれる光景にほっこりした。みんな違って、みんなおいしい。愛らしくて温かいキャラとお話がステキな作品だ。

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