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他局を圧倒する日本テレビ。在京キー局の現在と日テレ今後の戦略。

2020年度のテレビ局各社の決算が発表されています。

8年連続で「個人視聴率三冠王」を獲得した日本テレビが、放送収入でも抜きん出ていることがわかりますね。

キー局の放送収入と日本テレビの独走

テレビ局の主たる収益は、広告収入です。なかでも、個別の番組を提供し、その番組内で広告配信するタイムCMと、番組とは関係せずに指定の時間で放送するスポットCMによる放送収入がその中心となります。

(スポットCMには、番組と番組の間で放送されるステブレと番組内で放送されるPTの2種類があります)

在京キー局のタイムCMとスポットCMの売上高を並べてみると、日本テレビの独走状況がはっきりとわかります。

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出典:『東洋経済オンライン』

各局とも新型コロナウイルス感染症の影響により、前年比で10%程度の減収となりましたが、日本テレビが頭ひとつ抜けていますね。


ちなみに、2月25日に電通が発表したリリースによると、2020年の日本の広告費は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、6兆1,594億円となりました。

2019年と比較すると、7,787億円の減少(前年比88.8%)となり、東日本大震災のあった2011年以来、9年ぶりのマイナス成長。1947年の「日本の広告費」の統計開始以降、リーマン・ショックの影響を受けた2009年に次いで2番目の下げ幅だったそうです。


頭ひとつ出た日本テレビ、その裏にある戦略

日本テレビが他局を圧倒する理由のひとつが、若年層の視聴率獲得に向けたコンテンツづくりだと思います。日本テレビは、数年前から「男女13~49歳」をコア層と呼び、このコア視聴率を重視したコンテンツ制作に取り組んでいました。

一時期、世帯視聴率で日本テレビに迫っていたテレビ朝日でしたが、その中身は高年齢層が中心。マーケターが若年層へのリーチを重要視するなか、そのニーズをとらえた日本テレビが、視聴率でも、放送収入でも他局を圧倒しているのですね。


日本テレビが、フジテレビから三冠王を奪還したのは2011年のことでしたが、そのときも戦略と実行力がすぐれていました。若手社員を13名も集めて、自局とフジテレビの全番組を録画し、黄金時代だったフジテレビを徹底的に調査させたんです。

CMを放送する時間をフジテレビとズラすことで、CMで離脱した裏番組のユーザーを確保するとか、そういった地道な努力によって12年連続視聴率三冠王だったフジテレビの牙城を崩しました。

トップになるためには、そのための戦略と実行がどれだけ大切なのかを教えてくれます。


日本テレビ、次の戦略について

視聴率や放送収入で他を圧倒する日本テレビ。昨年11月には、コロナ禍収束後もトップカンパニーとしてさらなる高みを目指すべく、「新しい成長戦略について」を発表しています。

そこには、大きく3つの軸が書かれています。ひとつが、「Huluを筆頭とした動画コンテンツ配信事業の拡大」を含む、デジタル領域事業の飛躍的拡大です。

昨年度も「Hulu」の会員数は順調に増加しており、その売り上げは前年比でおよそ54億円増加し(前年比+8.0%)、734億7千8百万円となりました。また、3,500万ダウンロードを突破した「TVer」もそのひとつですね。


ふたつめが、コンテンツへの戦略投資と収支構造の見直しです。

地上波にとどまらないコンテンツ制作のための予算として、200億円を投資。すでに、複数のプラットフォームに展開するコンテンツが検討されているそうです。また、総制作費の抑制やDX化にともなうコスト削減も、これからの注力事項のひとつです。


みっつめが、グループ事業の強化。特に、スポーツクラブの運営を主とする生活・健康関連事業は、コロナウイルス感染症による打撃が大きかった。不採算事業の整理と見直しをはかる。このあたりの領域については、デジタル領域とEコマースとの接続についても注目していきたいところですね。


YouTubeなどによる新規メディアプラットフォームの台頭に加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、メディアはじめ多くのさまざまなビジネスが変化を強要されています。

日本テレビをはじめ、各テレビ局がどう戦い、どう生き残っていくのか。今後も注視していきたいです。


【参考】


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