見出し画像

地球温暖化を逆転させる100の方策 ドローダウン ワークショップレポート

Co-musubiでは、これまで子どもたちと「SDGs(持続可能な開発目標)」について考える機会を何度も作ってきました。


それらを通し、フードロス、アマゾンでの森林火災、海洋プラスチック等の課題を知り、興味を持ち始めた小学校高学年・中学生の子どもたちと、今回は「地球温暖化」という視点からその方策を考える親子のオンラインワークショップを外部講師の方をお招きし開催しました。
今回はその模様を、メンバーがレポートいたします。

ファシリテーターは鮎川詢裕子さん

画像5

メンバーの一人がそのワークショップに参加して感銘を受けたことからご縁を頂きました。


題材は、事業家・ベストセラー作家・アクティビストとしても知られるポール・ホーケン氏が監修し、2017年にアメリカで環境分野のベストセラーとなった書籍『DRAWDOWN~地球温暖化を逆転する100の方策~』です。


まず最初に、一人ひとりが自己紹介を兼ねて、今日のワークショップへの意気込みや期待を話します。

 ・地球温暖化は知っているけど、どうすればよいのかはよく知らない。自分ができることを考えたい

 ・地球温暖化を解決するために、どんな職業があるのかを知りたい

 ・地球温暖化の原因が二酸化炭素だけなのか、本当に温暖化が進んでいるのかを科学的に知りたい

などなど。「地球温暖化」は、数十年前から学校の授業で習う現象・課題ですが、それが解決されつつある実感も、自分が当事者だという認識も持ちにくいのが現実のようです。

 次に、「DRAWDOWN」(以下、ドローダウン)という概念についての説明を聞きます。

 ドローダウンとは、「増加の一途をたどる温室効果ガスの排出量が最大値に達した後、年ごとのペースで減少に転じる歴史上の一点」

ポール・ホーケン氏が話す動画を見ながら、理解を深めます。

画像2

画像3

NASAの観測画像

ポール・ホーケン氏のことばで印象的だったのは次のようなことです。

炭素を地球に戻す。その唯一の方法で現実でも起こっていることが「光合成」です。

NASAの観測画像を見ると、1年という周期の中で、CO2排出量が増えている(レッド系の色)ときもあれば、減少に転じている(ブルー系の色)ときもあることが分かります。この減少は光合成によるもので、地球温暖化の方策には、温室効果ガスの排出量を削減するとともに、排出された温室効果ガスを地球に戻すことを視野にいれる必要性に気づかされます。

◆解決策は物ではないのです。私たち自身で自分たちを救えるのです。

 解決策の第1位は有害な冷却材の管理、第2位は風力発電でしたが、第3位はフードロスの削減、第4位は菜食中心の食生活、第6位は女性の教育(最低でも12年間以上の学校教育)、第7位は家族計画でした。第6位・第7位を合わせると、第1位の効果も上回り、「温暖化対策の一番の解決策が女性のエンパワメント」とも言える結果です。このように、効果的な解決策は、物や機械だけではありませんでした。

私たち自身の意識、意思、行動が、自分たちを救えるのです。

◆リストのすべてを実行に移す必要がある。だからこそ、それぞれに響くものから。

ついついリストのトップにばかりに目をむけがちですが、ドローダウンの実現、地球温暖化の逆転には、リストのすべてを実行に移す必要があり、すべてが必要ですべてに敬意を表すことが大切だと言います。
そして、人それぞれ、気づき、納得感が大きいもの、響くものが異なります。
「こうすべきだ」を押し付けるのではなく、それぞれが、自分や自身が属するコミュニティや企業に響くもの、違いを創れるもの、影響力を発揮できるものに取り組む方がずっと効果的なのです。

参加者一同、静かに集中して動画に見入りました。


いよいよ100の方策のリストに移ります。

画像4

*分野別一覧。パチャママアライアンス作成、ドローダウン フォー ジャパニーズ和訳。この他に、ランキング一覧もあります。

まず、いくつかの項目について対話をします。

例えば、フードロスの削減。

鮎川さん:スーパーでは賞味期限の近い商品を避けて取りがちだけど、その商品が売れなかったらスーパーで廃棄され、間接的にフードロスを増やしてしまう。もしすぐに食べるのだったら、賞味期限が近いものを選ぶこともあっていいね。また、食べ物の輸送も地球温暖化につながっているんです。

子ども:「地産地消」の取組みは、輸送が少なくてよいと思う。

子ども:確かに近くから買う方がいいけれど、例えば、フィリピンで頑張っているバナナ農家さんの商品を適正価格で買うこと(フェアトレード商品を購入する)で、海外の貧困を無くす面もあるから、いろいろ考えたい。

ひとつの事象を多面的に捉えながら話がはずみます。

続いて、鮎川さんから問いかけがありました。

「では、いよいよリストに目を移してみましょう。2分くらい見てみて下さい。みんなにとって、ピンとくるもの、何か気になるものがありますか。」

子どもたちから手が上がります。

画像6


・女の子の教育が地球温暖化の対策になるなんて、びっくりした

・「ビルの暖房に代えて地区暖房を導入する」というのがおもしろいと感じた

・「メタン・ダイジェスター」って何だろうって思った

(かっこいい乗り物、キャラクターの名前みたいだからか!?)

・「先住民族の所有地のマネジメント」に興味が湧いた

・「女性小規模農業従事者」というところにも「女性」がある

・「徒歩での移動を前提にデザインされた都市計画」は、すごく気持ちよさそう

などなど。

子どもの興味関心は、効果の高低や、既存知識で理解できそうなものなどに全く縛られない範囲で飛び交います
(こんなに広範囲で難しい項目に、鮎川さん、どう答えるんだろう……と少し心配になってしまった、苦笑。)

その都度、鮎川さんが「そうだね。気になるね。」など、受け止めてくれます。
こうして、自分の感覚を声に出し、それを受け止めてもらえると、知識を詰め込むのとは違う学びの姿勢・意識が引き出されるように見えます。

「私も、すべてに詳しいわけではないのだけど、あとで資料を送るから見てみてね。自分でも調べてみるといいね。」

最後に、鮎川さんから、プロジェクト・ドローダウンのリーダーであるポール・ホーケン氏のことばが紹介されました。

◆ 私たちは、今の時代に生きていることを不運だ、被害者だと考えがちです。しかし、地球温暖化は私たちのために起こっている、私たちのすること全てを再考し変えるためのインスピレーションを与えるために起こっている機会であると捉えることもできる

これを聞いて、参加者は不思議な感覚に包まれました。

私たちが、対話してきたのは、地球温暖化を逆転する100の「方策」だと思っていたのですが、私たちの「生き方」、「あり方」を話してきたように感じたのです。

あとで聞くと、ポール・ホーケン氏の動画を見ている間、ある中学1年生の女の子は「地球温暖化を考えることは、生き方を考えることなんだね。」と隣にいたお母さんにつぶやいていたそうです。

終了後に寄せられた感想の一部をご紹介します。

まずは子どもたち。

・(中1女子)解決法が100もあって驚きました。理解できなかった解決法を自分で調べたいと思いました。また、フードロス対策について、残さず食べることは実行していましたが、スーパーで賞味期限の近いものを選んで買う、も意識しようと思います。

・(中1女子)一番驚いたのは、6位の「女の子が最低でも12年間の学校教育を受けられるようにする」です。学校に行けない・学べないというのは世界を知れないことで、世界を知れないと地球温暖化につながると分かりました。もう一つ驚いたのは、この問題を解決するというのは、人と人のつながり、生き方だということです。この非常に大きい問題は、多面的に考えることによって解決の道に進めるのではないかと感じました。

・(小6男子)僕は温暖化の対策をするためには、何か楽しいことか得をして温暖化を防いでいくことが大事だと思いました。温暖化を防ぐための取組みの中に、「なるほどな」「おもしろいな」というような発見ができるものがありとても興味深かったです。

・(小6男子)心に残ったのは、地球温暖化対策がこんなにたくさんあること、大きく7つの項目に分けることができ分かりやすいこと、僕たちでもできることがたくさんあることです。また「徒歩での移動を前提にデザインした都市計画の実現」は、こんなまちがあったらいいなと感動しました。温暖化対策は我慢ばかりではなく、今より豊かになるものもあると感じました

続いて大人たち。

・「女性の教育」についての鮎川さんの説明をききながら、こうして考え選択していく今日のような学びこそが温暖化がドローダウンするきっかけになるんだと希望を感じました。

身近で起こっている様々な事に目を向けるきっかけを改めていただきました。

・地球温暖化の時代を嘆くことではなく、この状況をどうしていこうと工夫するチャンスと捉える。温暖化に繋がる行動をしている相手を批判するのではなく、何でこうするのだろうと好奇心を持ち、自分達に興味を持ってもらって、一緒に取り組む姿勢のあり方
考え方1つで景色は変えられるんだなと思いました。
100リストを学校に持って行きたいと息子から言われて、今日学んだことをクラスや友達に伝える、凄くいいなと思いました。

・みんなでめっちゃ気をつけても何十年か後にならないとドローダウンが起こせない事実は衝撃でした

・一番心に残っているのは、今私たちは、未来のために選択して行動することができる時代に居合わせたのだというお話でした。小さくても、できることをやっていくことから、まずはそれでいいのだと改めて思いました。

感覚ではなく、ファクトに基づくご説明で、非常に惹かれるものがありました。分析の結果も意外性に富むもので、驚きました。
その中で、不勉強なので、どれくらいの量を行えば目標を達成できるのかのイメージを持つことができませんでした。しゃかりきになってギリギリなのか、効果的な行動を選択すればそれほどでもないのか、といったことです。今回の講義を機会に、さらに勉強したいと思います。

方策のほとんどは、モノではなく、ヒトの意識と意思と協働的行動であるドローダウンは「課題への対策」ではなく、これからの「人類の生き方」(個人の志向というレベルではなく、生物としての健全な生存の道)である、この気づきが今回のワークショップの大きな価値だと感じました。

参加者にとって、今回のワークショップが、生活の中で温暖化対策とつながっている様々なことを意識し、さらに将来に向けても多面的な学びを深めていく、大きなきっかけになりました。

鮎川さん、貴重な機会を本当にありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?