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たった8日間の「非日常」が「日常」の種になる~Compathワーケーションコースレポート~


「たった8日間で何が変わるのだろう。」


初めてCompathワーケーションコースの募集を見た時、心の中でこうつぶやいていました。

長期間でもない。海外でもない。都会でもないから刺激も少ない。ワーケーションコースだから、みんなで一緒に何かするのはたった数日間。まして、今はコロナの影響で、人とゆっくり話すことも不自由になるのかもしれない。

そんな中での8日間。一体何が変わるのだろう。
とてつもなく斜に構えた私のもやもやは、北海道行きの飛行機に乗り込んでからも、北海道の広い空を眺めながら電車に揺られている中でも、ずっと頭の片隅から消えませんでした。


でも、ワーケーションコースを終え、少し時を経た今、見えてきたことがあります。

『この8日間は参加者にとっても、Compathにとっても「種をまく」8日間だったのかもしれない。』と。

たった8日間のプログラム。その中で私がどんな「種」をもらったのか。ワーケーションコースのレポートとして、お伝えできればと思います。

私のこと。Compathとのこと。

まずは、簡単に自己紹介。
Yuriこと外村祐理子(そとむらゆりこ)です。大阪在住で、京都の大学に通っています。

2年前、たまたまご縁があり、デンマークの「フォルケホイスコーレ」に半年留学しました。
帰国後、そろそろ就職活動始めようと思っていた矢先に、コロナに直面し、企業説明会も、インターンも、面接も、すべてリモートになりました。就活というシステムに元々疑問を持っていた私は、手触り感のない将来に決め方に疑問を持ち就活を放棄。陸前高田にあるChange Makers’ Collegeに参加し、東北で極寒の田舎暮らしを4か月経験しました。
そして、そのプログラムを運営している方からご紹介いただき、Compathに出会いました。

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(フォルケにて。授業ではこの芝刈り機を自転車にくっつけるというよくわからない授業だった。)

私はフォルケホイスコーレの留学経験がありますが、「日本にフォルケは作れない」と思っていました。だって、「フォルケはデンマークの文化とシステムがちゃんとあるからこそ実現していることだ」と現地で骨身に染みるほど感じていたから。
だから、「日本でフォルケを作りたい」みたいな雰囲気には結構懐疑的でした。

でも、Change Makers’ Collegeで日々を過ごし、私も一緒に過ごしている仲間も緩やかに変化していく姿を見て、こういう場所は日本に、というか今の日本だからこそ必要なんだと痛感。
同時に、「日本で「フォルケをモデルにした日本の学び舎」を作りたい」と話しているCompath2人のバランス感覚や思考の豊かさに惹かれました。

「日本のフォルケ」じゃなくて、「フォルケをモデルにした日本の学び舎」を作るとしたらどういう学校になるんだろう。
興味を持った私はCompathでのインターンを直談判。今年の4月からインターンとして運営に関わっていました。

記事を書いたりしていた↓


インターンはリモートで大阪から関わっていたので、東川に来るのは今回が初めてでした。そして、今回私は参加者ではなく、「ハウスマスター」という参加者のご飯の準備など、生活面のサポートをする役割を担っていました。
なので、今回は参加者でもあり、運営者でもある私だからこそ、感じたプログラムの魅力をお伝えできればと思います。

合言葉は「センスオブワンダー」

今回のワーケーションコースのテーマは「センスオブワンダー」でした。
これは「沈黙の春」などの著作で有名なレイチェル・カーソンが晩年に書いた本のタイトルから取っています。レイチェルはこの本の中で、「子どものころに持っていた好奇心や違和感という感性が、豊かに生きる上でとても大切なのではないか」というメッセージを残しています。

…。と偉そうに説明していますが、実は私この「センスオブワンダー」を読んだのはこのプログラムの後でした(笑)。だから、プログラムのコンセプトもあんまりわかっていないまま、参加していました(笑)。

プログラム内容もコンセプトに合わせて、自然に触れるワークショップが中心でした。スケジュールはこんな感じ。

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ワーケーションコースなので、基本的にみんなで行うワークショップは初日と週末の2日間を合わせた3日間。あとは余白の時間として、お仕事をしたり、選択授業を受けたり、ただただぼーっと過ごしたり。みんな思い思いに過ごしていました。

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「せんすおぶわんだー…?」というくらい無知な私でも、プログラム中に何度もその力を目にすることになります。

例えば、選択授業で夜の森をほとんど灯りなしで歩く授業がありました。私はあいにく参加できなかったのですが、帰ってきたルームメイトの一人がすごくわくわくした表情で感想を伝えてくれました。

「灯りがほとんどない状態で歩くことが最初はすごく怖かった。そんな時に感じたのは、視覚ではなく足の裏の感覚だったの。足の裏でしっかり地面を踏みしめる。一歩一歩進んでいくうちに、私ここまで足の裏に感覚を研ぎ澄ませたことなかったな…って。でもその感覚が不思議と安心感あるんだよね。これがセンスオブワンダーなのかも!」


目をらんらんと輝かせて、前のめりに話すその人の表情は、仕事をしている時とは別人のようで。実はクールで近づきがたいなと勝手に思っていた私は「この人こんなに無邪気な顔するんだな…」とすごく驚きました。
同時に、その感覚と感性はその人にしかないもので、それを捕まえた時、人はここまで素直に自分を信じることが出来るのかと、自分の中で「センスオブワンダー」という言葉がすとんと腑に落ちた感じがしました。

プログラムを通して、みなさんのどんどん表情が柔らかくなっていき、窮屈な靴から裸足で森を歩くようになり、「葉っぱってこんな色だったんだ」とつぶやくようになる。最終日にはなぜか馬飛びを始めるということも。笑
そんな変化を間近で見て、私は「センスオブワンダー」の意味を理解する前に、体感しました。

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「センスオブワンダー」は、自分が不自然に入っていた力を緩め、自分の感覚をほどいていく。そして、自分の持っていた感覚を丁寧に手に取っていく。
自分の中にしかないこの力を、少しずつ自分に近づけていくことで、自分の感性を信じるようになる。そして、その感性が自分にも他人にも素直で誠実で在り続けるヒントになるのではないか。
これがこの力が持つ穏やかな強さなのだと思います。

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(森の中で自分の作品を作ろう!というワークショップの中で出てきていた言葉。個人的に世界の色が変わったような気がして、すごく好き。)


凸凹って本当に埋めてもらえるんだ

突然ですが、みなさん自分の短所やできないことについてどう思っていますか?


自分の伸びしろであると思う人。
自分の限界点だと思っている人。
短所があるから人間らしいんだよと思う人。
いろんな捉え方があると思います。

私は自分の短所やできないところには、すごくネガティブな印象を持つタイプ。だから出来るだけ人には見せたくないし、できないことでも、最初は「できます!」と瞬発的に言ってしまい、後から後悔するようなタイプでした(笑)。

今回、私はみなさんの生活のサポートをする「ハウスマスター」というお役目がありました。そんな私に大きな壁が立ちはだかります。

それは…お料理問題です。

正直に言います。私はあまり料理が得意ではありません。
普段は実家で暮らしているので、ご飯を作る機会はほとんどありませんでした。「趣味は料理です!」と優しい笑顔で言いたいところなのですが、大らかな私の性格だと、どうしてもレシピを無視して作ってしまうことが多く…(笑)。料理に対してあまり楽しいイメージを持っていませんでした。

でも、今回は約15名分のご飯を作らないといけない。しかも、以前からショートコースの料理長をしてくれていたみゆうちゃんが、今回はプログラムの後半から不在に。私が料理長としてみなさんのご飯を作る予定になっていました。

窮地に立たされた私。誰かに頼りたいところだけど、みんな参加者で自分の時間も必要だしな…。迷惑かけらんないよな…。でも、運営側も結構忙しそうだし…。とうじうじ考えていました。
でも、考えていてもおいしいご飯はできないので(笑)、「私あまり料理が得意ではないので、プログラムの後半が心配なんです。」と参加者にこそっと話しました。

すると、「私料理好きだから手伝うよ!」といろんな人が私に声をかけてくれて。気が付いたら、みんなでわいわいご飯を作ってくれていました。作るのは苦手だけど、たくさん食べることは得意な私は大感動。(ちゃんとお手伝いもしました!笑)

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(朝の会で使ったワークショップの紙を張り付けたまま、お片づけをしてくれている。笑)

料理をお任せすることで、想像していなかった嬉しいこともありました。
それは、料理をしながらみんなでたくさん話すことが出来たこと。
晩御飯を作ったり、片付けたりしている中で、みんなが今日のことや最近考えていることをたくさん話してくれました。
よくよく話を聞いてみると、実は管理栄養士の資格を持っていたり、誰かにご飯を作ってあげることがすごく好きだったり、ワークショップだけでは拾いきれない、みんなの小さな魅力にたくさん出会いました。


私は昔からいろんな人に「人の役に立つことをしなさい」といわれ続けてきました。
そして、その数と同じくらい、「人に迷惑をかけてはいけない」ということも諭されてきました。


だから、自分のできないことや短所を見せてしまうと、人は悲しんだり、面倒だと思ってしまい、私のことを見放すのではないか。そういう恐怖感のせいか、私は幼いころから「できない」ということがとても苦手でした。

「人に迷惑を書けていはいけない。なんとか自分で頑張らなきゃ。」
そう思い続け、コチコチに固まっていた自分に、デンマークで出会った恩師がさらっと言ってくれたことがあります。

「社会ってね、人間の凸凹を補いあうことで繋っているんだよ。自分の短所があったって、そこを上手に埋めてくれる人が現れる。それくらい、社会も人生も上手いことできてる。だから、自分に凸凹があってもいいんだよ。」

当時の私は「それはデンマークの話でしょ…。」と、これまた斜に構えた返事をしてしまったのですが、今回みんなが料理をしてくれている姿を見て、ふとこの言葉の意味を初めて心から受け止めることが出来ました。

自分の短所やできないことをできるようにする努力はもちろん大切です。でも、それでもできないことは確かにあります。
でも、その凹があるから私たちは人に頼ることが出来る。逆に頼まれたら、自分のできることを発揮することが出来る。レゴブロックのように、人の凸凹が組み合わさる時に、人は出会い始めるのかなと思います。

この風景はワークショップの時でも、どこかに行っている時の話ではありません。だけど、ワーケーションコースはこうした生活の中で、みんなの魅力を垣間見たり、自分が出来ることを見つけたりできることが魅力だと思います。


自分を見つめ直すこと。これは意外と日常のなかでも出来るのかもしれない。みんなが料理をしている背中を見ながら、そう思っていました。

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「種をまく」8日間


「この8日間って、ちゃんと日常に還元できるのかな?」

ワーケーションコースを終え大阪へ帰る道すがら、私はずっとこの問いを考えて続けていました。

8日間を通して、自分の感性を信じる「センスオブワンダー」に出会う。
共同生活をする中で自分の持っている力に気づく。
自分の心の声や小さな問いを話し、共有できる心地いいコミュニティができる。
確かに、たった8日間とは思えないくらい、たくさんのものを貰いました。

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でも、それはあくまでもこのワーケーションコース中でのお話。
コースが終わるとみんなは離れ離れになります。「非日常」だった東川町から離れ、それぞれの仕事や生活の場、いわゆる「日常」に戻っていく。場所が変われば、自分の感覚も見失ってしまうかもしれない。

「自分の小さな問いを社会につなげる」ことを大切にしているCompathですが、それは本当にたった8日間の「非日常」で形にすることができるのか。ただただ体験を「消費」してしまっただけじゃないか。もしそうなら、それはあまりにももったいないし、悲しい。
私の心の中で、もやもやした迷いが生まれていました。

でも、コースを終え数週間たったある時、参加者のみんなが自分が感じたことをnoteにして送ってきてくれました。



それは、「この経験を基にこんなプロジェクトを作りました!」みたいなものではなく、みんながワーケーションコースでどう感じ、帰った後もどう思っているのかをつづったシンプルな言葉の数々でした。
言葉と通じてみんなの感性に触れながら、またデンマークで教えてもらった言葉を思い出しました。

「フォルケホイスコーレは『種をまく』場所なの。自分の好奇心や、クラスメートを自分の鏡にして、自分にも誰かにも種をまいていく。その種はいつ芽が出るのかわからない。数か月後に出るかもしれないし、10年かかるかもしれない。もっというと、目は出ないかもしれない。でも、それでいい。だって、種はまかれたんだから。それに意味がある。」


たった8日間のプログラム。ここまで読んでくださった方はもうお分かりかもしれませんが、たった8日間で人は変わりません。何かが形になるわけでもありません。ただただ、穏やかに自分の声を聞きながら過ごす、シンプルな8日間です。

でも、その「非日常な8日間」は確かに種となって、それぞれの心の中に深く埋まっていきます。
その芽はでるのか。どんな芽がでるのか。そして、それはどういう木や花になっていくのか。それを何年、何十年にもわたって好奇心を持って見つめることが出来る。
その種をまく場所がワーケーションコースだと私は思います。

自分の中に種をまく8日間。
自分はどんな芽をだすのか。みんなはどんな芽をだすのか。
そう思うと不安で暗い将来も、ちょっと好奇心をもって動き出せる気がします。
だって、何が起こるかわかりませんから。

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<12月ワーケーションコースのお知らせ>

12月5日~12日に今年最後のワーケーションコースを開催します。
今回のテーマは「2021年を綴じる」です。
いろんなことや想いを持ったこの1年を冬の静かな東川で振り返り、綴じる準備をしませんか?

ワーケーションコースの説明会も行っていますので、興味のある方はこちらからお申し込みください。


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