3.夫には聞こえず、私には聞こえる音

 大阪の自宅マンションに12年ぶりに戻ってこれて、引っ越しの片付けもひと段落し、新しい暮らしを楽しみにしていた私でしたが、午前3時過ぎに目が覚めるようになります。謎の音に起こされるのです。

 それは、「ドンッ ドドドドド・・・」というトラクターの運転音のような、信号待ちのバイクのアイドリング音のような、謎の機械音。強弱があり、ドンッと何かが爆発するような強い音もときどきまじっています。

 当時、引っ越しの輸送で壊れてしまったウォーターベッドのマットレスを新しく買い替えたばかりで、かための寝心地に慣れていなかったこともあるのですが、私はあまり眠れなくなっていました。ドドドドド・・・という謎の機械音が気になるだけでなく、後頭部がひねられるように痛くて苦しいのです。枕ごと頭をたたかれているような振動も感じます。
 マットレスの下にあるヒーターか、温度調節のコントローラーに原因があるのかもしれないと思った私は、ベッドの電源を切りました。それでも、音も振動も変わらず続いています。
 
 この音は、ベッドが原因じゃないんだ。道路工事でもやっているのかな。

 この出来事をきっかけに、私の睡眠不足はどんどんひどくなっていきました。鼓膜と胸を圧迫するような重く低い音、横になると後頭部をマッサージ機のようなもので延々と叩かれ続けるような振動を感じ、とても寝るどころではありません。起き出してソファにもたれ、苦しさを我慢して朝を迎える、という状態になっていました。朝7時頃になると、体から重りがはずされるように苦しさが遠のいていくのです。

 不思議なことに、一緒に暮らしている夫は、そんな音はまったく聞こえないと言うのです。ベッドに寝ても揺れなんてほとんどない、ましてや、頭が揺れ続けるような振動は感じない、と。 

 このような自分の症状が、「低周波音被害」を訴える人々と同じだと気づいたのは、エコキュートの低周波音被害についてかかれた汐見文隆氏の文章を読んだのがきっかけです。私が暮らしているオール電化マンションは、各家庭のベランダにエコキュートが設置されています。
 しかし、このときの私はまだ、自分が低周波音症候群であることにも、エコキュートに大きな原因があることにも、気づいていませんでした。深夜に聞こえてくる音は、ベッドではないなら冷蔵庫かもしれないと思い、そろそろ寿命なんだろうと思って古い冷蔵庫を買い替えます。
 しかし、静音性の高い冷蔵庫への買い替えが、私の症状をさらに悪くさせてしまったのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?