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たまり場はクローズドな世界(その2)



前回、”たまり場”とは、個人が「たまりたい」という欲求を持っているのではなく、意図せず溜まってしまう場の事である、ということを書きました。



今日は、こうした場所性についてもう少し書いてみます。


目次
・たまり場はクローズドな世界
・たまり場に求められるのは「俺たちのアジト感」
・まとめ


たまり場はクローズドな世界


たまり場という言葉は、主に地域社会で使われてきた背景もあって「みんなのたまり場」や「多くの人が立ち寄れる場」といった万人のための場という印象が強いかと思います。

しかし、実は超クローズドな空間こそがたまり場へと変容しやすいのです。



例えば、スターバックスコーヒー。

今や知らない人はいない代表的なカフェです。


商業ベースで人が集まる場を作ろうとした時には、コアな常連客を増やしていくよりも、一見(いちげん)さんでも良いから多くの人に利用してもらった方が利益を生みます。そのため、少しでも多くの人が”心地よい”と感じるような、いわば万人ウケする店内となっています。だから店内もきれいにしていますし、メニューも豊富に準備しています。


ただ、これらは一人でも入りやすい、ゆっくり話ができる、といった条件が整う一方で、多くの人に受け入れらる場づくりとなってしまうため、どうしても画一的な場となってしまいます。そのため、たまり場特有にみられる「友人とついついそこに行ってしまう」、「そこに行けば知り合いがいる」という心の拠り所にはなりにくいのかな、と感じています。



私が思う人間関係に基軸を置いた本当の「たまり場」というのは、小さな町にある個人経営の喫茶店などと思っています。前田裕二さんの言うスナックもそれに当たります。


(ちょっと昔すぎ?)


対して、田舎の喫茶店を例に取ると、単純に人口が少ないこともあって、多くの一見さんは期待できません。ですから、そのお店に週7日通うような超常連さんを複数作らないと経営が成り立ちません。


そのため、こうした喫茶店などは、特定の人々に対してのみとても心地よい”空間になっています。喫茶店によっては、常連と一見さんであからさまに態度を変えるお店もあります。


こうした、一見さんを迎え入れる姿勢はとりつつ、「常連さんのためのお店」という超クローズドな空間を提供してあげることこそが、本来的なたまり場といえるのかな、と考えています。


たまり場に求められるのは「俺たちのアジト感」


こうした超常連さんを作っていくためには、特定のターゲットの趣味嗜好に合わせた空間づくりをすることが求められます。


言い換えれば、超常連さん達にいかに「俺たちのアジト感」を抱いてもらうか、ということが重要になってきます。



その方法のひとつとして、そのお店のメニューがあります。


以前私が初めて入ったお蕎麦屋さんで、となりのおじさんがとてもおいしそうな蕎麦を食べていたので、店員さんに



「あの方のお蕎麦は何ですか?」


と聞くと、


「すみません、あれは常連さんだけなんです。」



とやんわり断られました。


どうもそのおじさんは10年くらい毎週日曜日の昼時に来るらしく、だんだんとその人の好みに合わせたメニューができたそうです。自分のために融通を利かせてくれる、というのもフランチャイズにはない「俺のアジト」や「俺の家」感を抱いてもらう方法のひとつと言えます。



他にも、勘定でツケができる、開店前や後にも入店できる、といった一般的なお客さんとは違う扱いをしてあげることが超常連さんを作る第一歩といえるかもしれません。


まとめ


今日も、たまり”場”について書いてみました。
簡単にまとめると以下の通りです。


まとめ
・たまり場は、超クローズドな空間である。
・たまり”場”を作るには、いかにお客さんに「俺たちのアジト感」を抱いてもらうかである。
・「俺たちのアジト感」を抱いてもらうには、その人のメニューを作る、営業時間外でも入店できるなど、他のお客さんとは違う扱いをしてあげる。


超クローズドな空間をつくることこそ、単なる場所がたまり”場”として変容するきっかけかもしれません。


しかし、それはあくまで物理的な”場”のお話。道端で井戸端会議をしている
おばちゃん達のように、溜まるためには、必ずしも物理的な”場”が必要、というわけではありません。次回はその辺について考えてみたいと思います。

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