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『海がきこえる』を読み(視聴し)なおす:その45(終) おわりに

タグ: #読書の秋2021 ,#海がきこえる,#海がきこえるⅡアイがあるから,#氷室冴子,#スタジオジブリ,#アニメ,#小説,#考察,#ネタバレ


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おわりにーこれまでの考察を振り返ってー


 『海がきこえる』を読み(視聴し)なおす と題して、筆者は「note」上で45回にわたり考察を続けてきました。

 今回、考察を終えるにあたり、「どのような形で考察を続けてきたのか」、「考察をとおして何を明らかにしてきたのか」をまとめてみたいと思います。

1.作品解題

 まず、『海がきこえる』を考察するにあたり、読者の方にどのような作品であるかをあらためて知ってもらうために、いわゆる「作品解題」(かいだい:作品についての説明のこと) をおこなった。

 作品のジャンルや舞台・時代背景を紹介するとともに、『月刊アニメージュ』での連載に始まってどのような形で作品の出版・メディアミックス(TVアニメ化・TVドラマ化)がおこなれていったのかを紹介した。
 加えて、『海がきこえる』に対して興味を持った読者のために、「小説版・アニメ版」の入手についても記事を設けてみた。特に『海がきこえる』のオリジナルであり、後に出版された「ハードカバー版」・「文庫版」と異なる展開の存在する「アニメージュ連載版」入手のために、「国立国会図書館遠隔複写サービス」の利用方法についても簡単な紹介を行った。
 「Googleマイマップ」機能を利用して、『海がきこえる』の舞台となった「高知」・「東京」の地理に不案内な読者が作品をより理解することができるようにつとめた。

2.「アニメ版」についての考察

 次に筆者は「アニメ版」について、「杜崎 拓は武藤 里伽子をいつ好きになったのか?」及び「武藤 里伽子は杜崎 拓をいつ好きになったのか?」と題して考察をおこなった。
 考察の理由として、「アニメ版」の抱えるわかりにくさを「小説版」と比較対象することで解消し、作品の再解釈と再発見を企図してのことである。

 筆者は、高校時代の2人がお互いに対して、いつ好意を抱くようになったのか「感情と好意」の変遷を「アニメ版」ストーリーに沿って、シーンごとに丁寧にまとめた。
 「アニメ版」において2人がなぜお互いの気持ちを言葉にすることがないまま別離を余儀なくされたのかを明らかにした。
 「アニメ版」拓と里伽子について考察を続けていく過程で、2人の恋物語に大きな影響を与えた「松野・小浜・清水」の3人について、「インタールード」(幕間劇)と題して個別に考察を行った。
 また、アニメ版DVDパッケージやDVDディスクに描かれた2人のイラストについても考察を加え、「アニメ版」で描写されることのなかった拓と里伽子の感情の変遷を明らかにした。
 加えて「アニメ版」における拓と里伽子は、「小説版」のように知沙を介して「東京」で再会をはたすことがなかった。「小説版」と異なった演出で描かれた「アニメ版」拓の同窓会シーンと、大学生となった2人が「高知」に帰省した意味を深く考察することで、「アニメ版」エンディングで再会した2人が「わかりあうこと」ができた理由にたどり着くことができた。

3.「小説版」についての考察(「文庫版」を中心に)

 続いて、筆者はあらためて『海がきこえる』の「小説版」について、「アニメ版」との差異に触れながら紹介した。

 「アニメ版」と違い、高校・大学時代の2人を描いた「小説版」には、拓の成長を描いた「拓の大学生活」、里伽子のつらい経験を描いた里伽子の家庭問題、「小説版」の裏テーマともいえる「不倫」を描いた「知沙の失恋からのリハビリ」の3つの「ストーリーライン」が存在する。
 「恋物語」としての側面が強い「アニメ版」と比較して、「小説版」の「メインストーリー」は、拓が自身を成長させながら、里伽子を支えて「相棒」(恋人)として一緒に乗り越えていく拓の「成長物語」であることを明らかにした。
 「海きこ2」において、特に「不倫」にまつわる3人の女性(里伽子・知沙・美香さん)が一堂に会する「美香さんのお食事会」シーンについて、深く考察した。このシーンにおける里伽子の心境の変化が、美香さんに対する態度の軟化と、知沙に対する松野の予言に関係していることを明らかにした。
 また、「小説版」登場人物たちの名前を起点にして、登場人物たちの関係性や、今後の物語における予見される拓や里伽子との関係性についても考察した。特に、「清水・知沙・緒方」の3人は、地の文で一貫してフルネーム表記されており、「小説版」において特別な存在であることを推定した。

4.「海きこ3」についての考察(拓と里伽子の未来について)

 最後に、筆者は作者である「氷室 冴子」先生逝去にともない、永遠に描かれることのなくなった「海きこ3」(拓と里伽子の未来)について、「小説版」の構成要素と筆者の乏しい想像力とを駆使して考察を加えた。

 「小説版」の書き出し文が象徴するように、拓は未来のある時点「今」から高校・大学時代の里伽子との思い出を回想しており、未来の拓の視点が作中の拓を「大人びた存在」にしていることを明らかにした。
 また、拓の未来の側に里伽子がいない可能性(恋人関係を解消)を推定した一方で、さまざまな出来事を乗り越えてきた2人は「バディ」(相棒)と言える存在になっており、たとえ恋人同士でなくなっても、2人の「固い絆」は簡単に断ち切られないだろうことを明らかにした。

5.「作品タイトル」(「海がきこえる」とは何か)についての考察

 おわりに、筆者はタイトルである「海がきこえる」とは何かについて、拓と里伽子の視点にたって考察を行った。

 「海」とは、拓と里伽子にとって相手そのものであり、「海がきこえる」とは、拓にとって里伽子の存在・思い出が、懐かしさとなって拓の心に押し寄せている状況を指し、里伽子にとってズレてしまった里伽子が「素直な自分の心」と向き合うことのできる状況を指していることを明らかにした。

 「海がきこえる」という言葉の持つ深い意味を踏まえると、「海きこ3」以降、拓と恋人関係を解消しても、里伽子が「海」である拓のところにいつか戻っていくことを暗示しているようにも思えるのである。


参考文献・映像・ウェブサイト一覧


 以下に記載するのは、筆者が考察にあたり利用した参考文献・映像・閲覧したウェブサイトの一覧です。
 ウェブサイトについては、筆者が考察のために本文中で紹介したサイトに加えて、読者が今後『海がきこえる』の世界を深く知っていくうえで役に立つようなサイトも一覧に加えることにした。

 なお、ここに記載したウェブサイトは、2022年2月現在のものです。今後、サイトの削除やURL(リンク先)の変更で閲覧することが不可能になることが考えられます。その点、ご了承ください。


1.参考文献


○氷室冴子「海がきこえる」『アニメージュ』(アニメージュ連載版)徳間書店 1990年~92年 (連載全23回)

●氷室冴子『海がきこえる』(ハードカバー版)徳間書店 1993年

○氷室冴子『海がきこえるⅡ アイがあるから』(ハードカバー版)徳間書店 1995年

●氷室冴子『海がきこえる』(徳間文庫版)徳間書店 1999年

○氷室冴子『海がきこえるⅡ アイがあるから』(徳間文庫版)徳間書店 1999年

●氷室冴子責任編集『氷室冴子読本』徳間書店 1993年

○氷室冴子 原作『海がきこえる COLLECTION』徳間書店 1995年

●スタジオジブリ『スタジオジブリ作品関連資料集IV』 (ジブリTHE ARTシリーズ) 徳間書店 1996年


2.映像


○氷室冴子原作・望月智充監督作品『海がきこえる』(DVD)ジブリがいっぱい COLLECTION ブエナビスタホームエンターテインメント 2003年

●「あれから10年、僕らの青春」~ここからすべてが始まった!~制作スタッフによる高知での座談会『海がきこえる』(DVD)所収 2003年

○【第12回】Animage 40th Anniversary Memories(ゲスト:三ツ木早苗 小説担当編集者)
https://www.youtube.com/watch?v=DfLiBwoN0JM

●【第13回】Animage 40th Anniversary Memories(ゲスト:三ツ木早苗 小説担当編集者)
https://www.youtube.com/watch?v=RRPSSA85MpE

○【第6回】Animage 40th Anniversary Memories(ゲスト:高橋望 アニメ版プロデューサー)
https://www.youtube.com/watch?v=ActlnynYfC8

●【第7回】Animage 40th Anniversary Memories(ゲスト:高橋望 アニメ版プロデューサー)
https://www.youtube.com/watch?v=DQkp27rUFcU

○「Ghivlogジブログ」 ジブリ初の学園モノ『海がきこえる』を徹底解説!
https://www.youtube.com/watch?v=-d0co0MGZa4

●「Ghivlogジブログ」 高知で『海がきこえる』のロケ地めぐり【ジブリ旅 #8】
https://www.youtube.com/watch?v=BVxsuQ7Tp3g

○「Ghivlogジブログ」 『海がきこえる』杜崎拓の家に行く【ジブリ旅 #10】
https://www.youtube.com/watch?v=rBeHujQ-VTg


3.ウェブサイト


○「スタジオジブリ公式」 スタジオジブリ作品一覧 海がきこえる(1993)
https://www.ghibli.jp/works/umi/#frame

●「氷室冴子青春文学賞公式」 氷室冴子について
https://i-akariya.org/himuro-bungaku/himurobungaku/

○「Wikipedia」 海がきこえる
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E3%81%8C%E3%81%8D%E3%81%93%E3%81%88%E3%82%8B

●「Wikipedia」 氷室冴子
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B7%E5%AE%A4%E5%86%B4%E5%AD%90

○「海がきこえるを歩く」
http://akinori-naka.a.la9.jp/

●Googleの「マイマップ」機能について Google マップのマイマップとは?作り方から使い方まで情報まとめ
https://g-tips.jp/google-maps/maps-mymap/

○「南洋駄菓子本舗」 海がきこえる~幻の四万十編を追う①~⑦
http://geisyu.blog24.fc2.com/blog-category-10-1.html

●アニメージュ創刊 40 周年記念番組「MEMORIES~メモリーズ~」
https://www.animage40.jp/

○「日の出・日の入りマップ」(高知県)
https://hinode.pics/state/code/39

●「高知県の観光情報ガイドよさこいネット」(桂浜)
https://kochi-tabi.jp/search_spot.html?ID=702

○「格安移動」(東京→高知)
https://idou.me/search/all/tokyo/kochi-station-kochi

●「海がきこえる辞典」
https://ha7.seikyou.ne.jp/home/Anaken/jiten.html

○「Wikipedia」 国立国会図書館
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E5%9B%BD%E4%BC%9A%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8

●「Wikipedia」 納本制度
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%8D%E6%9C%AC%E5%88%B6%E5%BA%A6

○「国立国会図書館オンライン」
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/

●「国立国会図書館ホームページ」
https://www.ndl.go.jp/

○「カーリル 図書館蔵書横断検索サイト」
https://calil.jp/

●「Wikipedia」 新世紀GPXサイバーフォーミュラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%B4%80GPX%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%A9

○「新世紀GPXサイバーフォーミュラ OFFICIAL WEB」
http://www.cyber-formula.net/index.html


4.関連文献(筆者は未見ですが、作品と作者に関連する書籍)

○氷室冴子&近藤勝也『─海がきこえるより─ 僕が好きなひとへ』徳間書店 1993年

●氷室冴子原作『海がきこえる フィルムBOOK』徳間書店 1993年

○望月智充/近藤喜文『海がきこえる・そらいろのたね スタジオジブリ絵コンテ全集8』徳間書店 2001年

●「氷室冴子追悼特集」『アニメージュ』2008年8月号 徳間書店 2008年

○氷室冴子『氷室冴子: 没後10年記念特集 私たちが愛した永遠の青春小説作家 (文藝別冊) ムック』河出書房新社 2018年

●嵯峨景子『氷室冴子とその時代』小鳥遊書房 2019年


5.関連ウェブサイト(考察に直接関係しないが作品に関連するサイト)

○「徳間書店 氷室冴子 著作一覧」
https://www.tokuma.jp/author/a215237.html

●「海がきこえる/ゲド戦記ー金曜ロードショー」(ウェイバックマシーン アーカイブ)
https://web.archive.org/web/20110628214950/http://www.ntv.co.jp/kinro/lineup/20110715/index.html

○永田茂「海がきこえる」サウンドトラック 徳間ジャパンコミュニケーションズ 1997年
https://mora.jp/package/43000016/TKCA-71142/

●坂本洋子「海になれたら」(アニメ版エンディングテーマ曲)歌詞
https://music.oricon.co.jp/php/lyrics/LyricsDisp.php?music=35461

○「日本語あれこれ研究室」(アニメ版監督 望月智充監督のブログ)
https://ameblo.jp/mangetsuhakase/entry-12592652602.html

●「アニメ版監督 望月智充監督 Twitter」
https://twitter.com/fusatora2828

○「アニメ版プロデューサー 高橋望プロデューサー Twitter」
https://twitter.com/nozomut

●「海がきこえる 連載と単行本の異同」(sheep01210's blog)
https://sheep01210.hatenablog.com/entry/2013/06/06/120734

○氷室冴子さんを偲ぶ会(藤花忌)
https://nerimadors.or.jp/~saeko/

●「帰ってきた買っとけ!DVD」AVWatch(『海がきこえる』DVD紹介ページ)
https://av.watch.impress.co.jp/docs/20030812/buydvd95.htm

○「ジブリの「海がきこえる」が7月Blu-ray化。ジブリ長編全22作のBD化完了」AVWatch(『海がきこえる』Blu-ray紹介ページ)
https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/698931.html

●「本音ぶつけ合った青春」読売新聞(企画・連載記事 四国ストーリー)
https://www.yomiuri.co.jp/local/kagawa/feature/CO043811/20210523-OYTAT50017/

○「氷室冴子先生を偲んで・・・」(たいむのひとりごと blog)
http://time-de-time.air-nifty.com/blog/2008/07/post_8901.html

●「スタジオジブリ若手制作集団」が作った名作『海がきこえる』(スタジオジブリ非公式ファンサイト【ジブリのせかい】)
https://ghibli.jpn.org/report/the-ocean-waves/

○「小説版『海がきこえる』アニメージュ連載版のススメ」(スタジオジブリ非公式ファンサイト【ジブリのせかい】)
https://ghibli.jpn.org/report/ocean-waves-book/

●ジブリ旅4日目 高知で『海がきこえる』めぐり【前編】・【後編】(スタジオジブリ非公式ファンサイト【ジブリのせかい】)
https://ghibli.jpn.org/went/travel-8/
https://ghibli.jpn.org/went/travel-9/

○『海がきこえる』の名言ランキングベスト10はこれだ!(ジブリ森林公園へようこそ! ファンサイト)
https://ghib-mori.com/umikiko-meigen-1493

●「海がきこえるの映画情報・感想・評価」(Filmarks)
https://filmarks.com/movies/54072

○「カゼノトオリミチ/NHKみんなのうた」(アニメ版の望月智充監督・近藤勝也作画監督・田中直哉美術監督がアニメーションを担当。映像の中に『海がきこえる』を彷彿とさせる構図のカットが存在している)
https://www.nhk.or.jp/minna/songs/MIN200412_01/

●スタジオジブリの名作が《デジタルリマスター版》で新登場!
4/20(水)DVD発売!
https://www.disney.co.jp/studio/release/20220420.html


あとがき


「今」になって考えると、なぜ45回にわたって考察を続けてきたのかよくわからない。

 きっかけは、たしか久しぶりに「文庫版」を読み、ついでに「アニメ版」でも見ようかと、ふと思い立ったことにあった気がする。

 (名もなき)漫画原作者である筆者は「アニメ版」を見ながら、「アニメの構成・構図とマンガの構成・構図の差異はどこにあるのだろうか?」という疑問を覚えた。
 筆者は、図書館や書店でアニメの「絵コンテ」集を手に取ったことがあったものの、アニメの「シナリオ・脚本」についてまったく不案内であったため、好きな作品である『海がきこえる』でアニメのシナリオを勉強してみようと思ったのだ。

 筆者が行ったのは、「アニメ版」の映像を1コマごとに停止しながら、登場人物のセリフと登場人物たちの動き・表情、背景情報、構図を文字情報に起こすことだった。
(いわば会議などの議事録を録音したものの「テープ起こし」だと思ってもらえば理解できるだろう)

 アニメの映像をシナリオ形式で文字起こししてみて気づいたのは、基本となる「シナリオ・脚本」の書き方という点で、マンガ原作もアニメの脚本もそれほど違いがないということだった。
 ただ、アニメの場合、マンガのような「コマ割」や「ページ割」という概念が存在しない。
 一方、連続した映像で登場人物や背景(や乗り物など)が動いていくため、「画面内・外への物体の動き」や「画面の手前・奥の概念の存在」を意識してシナリオを書く必要があることを実感した。
(ただし、筆者は「アニメーター」や「アニメの脚本家」でない。実際のアニメ制作の現場で、脚本家がどこまで「画面演出」(モノの内・外への動き出しや画面手前・奥の位置関係)を意識してシナリオを書いているのかわからずじまいだったが)

 1コマずつの文字起こしは、かなり大変な作業(いわゆる「苦行」というヤツです)であったが、その過程で拓や里伽子のちょっとした仕草が(無意識のうちに)私たち視聴者にさまざまな情報を与えていることに気づくに至った。
(スタジオジブリによって細部まで丁寧に制作されているので尚更である)

 映像(「アニメ版」)の持つ豊かな表現力に気づいた筆者が、文章(「文庫版」)がもたらす表現との「さまざまな差異」に関心を持つのは、漫画原作者としていわば必然の成り行きでした。

 かくして、「はじめに」でも書いたように、

「漫画原作者」の視点から、あらためて『海がきこえる』のアニメ版と文庫版に触れたことで、浮かび上がってきたアニメ版と文庫版の差異や疑問を私なりに解き明かしてみたい。

と考え、考察を続けてきたのですが、正直45回の長きにわたるとは思ってもみませんでした。

 特に「アニメ版」の拓と里伽子がお互いをいつ好きになったのかを考察する回では、「前後の回」や「拓と里伽子のそれぞれ該当するシーンの回」との整合性を(無意識のうちに)意識するあまり、思いに反して筆が進まなかったことを覚えています。
 「ハワイへの修学旅行のシーン」の考察のあたりは、本当に筆が止まりそうになりました。
(作品の中でハワイは拓と里伽子にとっても因縁の場所でしたが)

 それでも、最後まで投げ出さずに考察を終えることができたのは、ひとえに『海がきこえる』が筆者にとって「特別な作品」であるからです。
 「アニメ版」のシナリオ文字起こしから数えて半年近く経過しましたが、考察してみて良かったと思っています。

 この考察で、作者である『氷室 冴子』先生や「アニメ版」の望月監督以下スタッフが作品に込めた「真意」にどこまでたどり着くことができたか、はなはだ心もとないです。

 それでも、この考察を読んだ読者の方が一人でも、より『海がきこえる』という作品を好きになる一助になれば、筆者としてうれしいです。

 筆者も、今後の漫画原作の創作に今回の考察で得た知見を是非活かしていければと思います。

 考察の対象となった、『海がきこえる』の生みの親たちである『氷室 冴子』先生や、「アニメ版」のスタッフの皆様に感謝を。

 最後に、「アニメ版」と「アニメージュ版」の拓の述懐を引用して、この考察を締めくくりたい思います。

拓「ああ やっぱりぼくは好きなんや…そう感じていた」
里伽子 今、なにしてる?
「アニメージュ版」連載第23回 アオリ文より引用


おしまい


※記事に使用した場面写真は、スタジオジブリ公式サイトが提供する「スタジオジブリ作品の場面写真」のうち、「海がきこえる」のページのものを使用・加工しております。


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