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【note百物語2017】かくれんぼ×かくれんぼ
お友だちと、たくさん遊んどいで
だけど、かくれんぼはやっちゃいけんよ―…
けっして、かくれちゃあいけんよ
大きい山がいっぱいあるところに、1人で住んでいる、おばあちゃん。
ぼくとおかあさんが遊びに行くと、いつも大きな声でわらってくれる。
「遊びにいってくるね!」
ぼくはリュックサックを玄関におくと、ここでできた友だちに会うため、またすぐ出て行こうとした。
「覚(さとし)!かくれんぼは
オリジナル短編『コエゴト』vol.01
最近、彼女の様子がオカシイ―…。
お見合いで出会って、4ヶ月。
順調にデートを重ね、想いを重ね合ってきたというのに。
なぜかここへ来て、ビミョーに避けられている…気がする。
気がする…というのは、オレには全く避けられる理由がわからないからで。
なにか問題があるのなら、言って欲しいのだが…おとなし過ぎる彼女に、それを求めるのはちょっぴり酷なように思う。
なので…ちょっとづつ確認してみるのだが。
片想い企画『待ち人』スピンオフ小説
私は、忘れっぽい。
一緒に仕事をした人の名前。
何度も行ってる場所。
自分で書いた歌詞さえも、忘れてしまう。
「え?なんで?」
せっかく書き上げた新曲の歌詞を、柳に突き返されて私は目を丸くした。
自分で言うのもなんだけど、今回はかなりいい仕上がりだったと思う。
それなのに、柳は大袈裟なくらい深いため息を吐いて、私を睨むのだ。
「いいか。心をまっさらにして、もう一度よく見直してみろ!」
文
地獄の沙汰も金次第 [後編]
<前編より>
「…死に方?」
天城の言葉に、藤村の足が止まる。壊れたコンピュータが、デタラメな計算式で、出るはずの無い答えを弾き出そうと必死になっていた。
天城はそれを察して、革靴の音を響かせながら、藤村の隣へ移動する。
そして、フリーズしている男の目にも映っているであろう、眼下に広がる景色を見た。
昭和を感じさせる商店街の各軒先は、古びていたがどこかしら味がある。
平日の午後だが、馴染み
地獄の沙汰も金次第 [前編]
「100万?」
「ええ。税込で」
古い十階建ての雑居ビルの屋上に、早春の匂いを含んだ風が吹いたが、降り積もった埃を舞い上げただけで、そこに居た2人の男は少し咽た。
1人は20代後半。
着古したジャケットに、くたびれたジーンズ。
履き潰したスニーカーは、所々穴が開いている。
髪の毛は寝癖がついたままで、顔色が悪い。
手摺を握り締めたまま、呟いて声の主を見る。
後方に居る、もう1人の男はベーシ
[short×short]504910816 #AVFTribute
「ゴホッ、ゴホッ」
咳をするたび、君への想いが募る。
数えたことはないけれど、もう504,910,816回は君のことを想った。
その数は、1秒ごとに増えてゆく。
僕の愛は止まらない。
消毒液とわずかな潮の香りの中で、溺れながら君を想う。
これは、愛。多分、愛。きっと、愛。
だって、肺胞を218,324,567個握りつぶされたみたいに、胸が苦しいから。
こんなに苦しいのは、君を愛している証で
キュン♪ときたら「スキ」ください。
「好きだ!」
真正面から至近距離で、あなたに言われた。
仕事の打ち合わせが終わると、赤ちょうちんの居酒屋で一杯。
メンバーは、いつもの4人。
上司の城田さんと、先輩の池野さんと皆木さん、そして私、佐倉久美。
男の中に女が1人なんて、浮いちゃいそうだけど、もはや家族みたいなものだ。
それなりに言いたいことを言い合って、笑って、泣いて、受け入れてくれる。
もしかすると本当の親よりも、私のことを理
洋菓子店の彼女と花屋の僕 #ハピバレ2015
「あの、さ」
もう何百回も声を掛けているのに、口が渇いて上手く声が出せない。
それは、今日という日だからだ。
「はい?」
僕の声に振り返る彼女も、すっかり見慣れているのに、見惚れてしまう。
それは、覚悟を持って呼び止めたからだ。
「これ…どうぞ」
一輪の赤いチューリップを、差し出す。
彼女を想ったときに浮かんだ、赤いチューリップ。
「え?どうしたんですか?コレ」
もう何万回もラッピン
少女とハートとドラゴンの話
何もない、固い茶色い土の上に、一人の少女がおりました。
音も色もほとんどなく、静かな静かな世界です。
少女はいつも、なぜ自分がここにいるのかわからずに、蹲って泣いていました。
そこへ一匹のドラゴンが、やってきました。
まだ幼いドラゴンは、人懐っこい声で少女に話しかけました。
「やあ!お待たせ!」
少女は驚いて顔をあげ、小さな声でたずねました。
「あなた、だぁれ?」
ドラゴンは瞬きを二度し