「リーダーのいない町おこし」によって、地域の連帯を育む 【コミュニティづくりの現場から#1】
こんにちは、NEWPEACEのプロダクト開発チームです。
今回から、【コミュニティづくりの現場から】と題してnoteを書いていきます!
【コミュニティづくりの現場から】とは?
NEWPEACEのプロダクト開発チームでは、プロダクト開発のために、
・店舗のコミュニティ化に取り組む店舗オーナーの方
・商店街活性や地方創生の文脈で、地域コミュニティの構築の最前線で活躍する方
など、「コミュニティづくり」の現場で活躍する方々にヒアリングを重ねています。
【コミュニティづくりの現場から】は、ヒアリングの過程で私たちが学びになったお話や、勉強になった具体的な事例などをピックアップして、お伝えしていくシリーズです。
今回は、愛知県瀬戸市の銀座通り商店でゲストハウス「ますきち」を経営する南さんと、瀬戸市の「ものづくり商業振興課」の前嶋さんのお二人へのヒアリングをまとめました。
今回お話を聞いた人
南慎太郎さん
1994年、愛知県瀬戸市生まれ。北海道大学卒業後、Uターン。1年間の準備期間を経て、2018年「ゲストハウスますきち」オープン。2019年にライターの上浦未来と共に、PRチーム「ヒトツチ」スタート。2020年に「CONERU NENDO shop & space」を創業、同副代表。「瀬戸を面白がる仲間を作る」を軸に活動している。
前嶋依理子さん
1975年、北海道旭川市生まれ、札幌育ち。
北海道大学大学院修了後、『脱・お役所宣言』をキャッチフレーズとして職員募集をしていた瀬戸市役所へ建築技師として入庁。
2016年頃から空き家対策の担当となり、2018年3月に瀬戸市空き家等対策計画~せとで住もまいプロジェクト~の策定に関わる。
2020年4月より空き家対策計画の中で特に重きを置いていた「ツクリテの定着支援」を担う部署へ異動となる。
ものづくりやアートに携わる人があふれる瀬戸のまちに
生まれ育った北海道とは違う楽しさを見出している。
瀬戸市とは
愛知県の北部に位置し、「やきもの」の産地として1000年以上の歴史を持つまち。
瀬戸市でモノづくりに携わる方々は「ツクリテ」と呼ばれ、市が率先してツクリテの支援・育成に取り組むことで、今でも多くの窯元や工房がこの瀬戸の地に集まり、日々新たな作品が生み出されている。
時にそれぞれの立場を超えて協力し合いながら、瀬戸の町おこしに取り組むお二人。お話を聞く中で、特に印象に残った工夫や取り組みをまとめました。
リーダーのいないまちおこし
「上手くいっている町おこし」と聞くと、旗振り役としてリードする存在がいるイメージがありませんか?
少なくとも私はそうでした。瀬戸では、真逆のアプローチが肝だとお二人は口を揃えます。
南さん:「瀬戸ってあまり『この人がリーダー』っていないんですよね。」前嶋さん:「むしろあえて設定してないかも。ますきち(※南さんが運営するゲストハウス)のカフェスペースに集まって、議論したり相談していくことで繋がっていくよね。」
リーダーに頼りすぎてしまうと、リーダーの周囲でしか取り組みが盛り上がらなかったり、取り組みに参加する人が固定化されてしまうこともあります。
瀬戸では、「リーダー」に当たる人がいないからこそ、同じ課題をみんなで共有でき、「みんなで盛り上げていこう」という思いが強いのだとか。お店同士が集まった時に、「実は一緒に連携してみたかった」「次はこのお店と組んでやってみよう」といった声が次々生まれ、連携の輪が軽やかに広がっていくそうです。
こういうった流れについて、お二人は「縁」や人のお陰だといいますが、お話を聞く中で独自の工夫や発見が沢山ありました。
「お店同士の交流の場」が原動力に
南さんが経営するゲストハウス「ますきち」には、一階にコミュニティスペースのような空間があり、まさに「お店同士の交流の場」になっているそうです。
南さん:「今年はますきちを起点に、ジャンル別の繋がりをたくさん生むことができました。飲食店の人と焼き物で器を作ってる人が知り合えたり、それぞれのお店のジャンルを飛び越えた繋がりが作れましたね。」
「洋食店のオーナー」と「窯元」、「アートスペースで暮らす芸術家」など、同じ場所に暮らしながら、実は関わりがなかった人たちの交流がいくつも生まれるようになったそうです。そういった何気ない情報交換を通して新しい取り組みが生まれたり、特定のお店同士でしかやっていなかった取り組みが、他のお店にも広がっていくのだとか。
みんながカジュアルに集まって、気軽にお互いの仕事や悩みを共有できるような場。それが、自然と新しい取り組みが生まれる土壌となり、「リーダーのいない町おこし」を支えています。
お客さんとお店の繋がりを育む、「はりきりチケット」
新型コロナウイルスの流行という「人が集まること」が難しくなる危機的な状況の中でも、町を盛り上げるために、南さんはアクションを続けられました。そのユニークなアイデアについてお聞きしました。
愛知県瀬戸市では毎年9月に「せともの祭」という、大規模な陶器市が行われていました。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったそうです。そこで南さんを中心に立ち上がった取り組みが、取り組みが「せとひとめぐり」でした。
「せとひとめぐり」は、瀬戸にあるお店、焼き物の窯元など総勢27の拠点をめぐるツアーのようなイベントです。
「ただ中止にしてしまっては、まちの士気がさがってしまう」といった危機感から立ち上げたそうですが、窯元の人も巻き込み、結果は大成功。
そして、この「せとひとめぐり」を実施するために行われたクラウドファンディングの返礼品として設けられたのが「はりきりチケット」。6枚綴のチケットで、連携店で商品を買う際にこれを見せると、お店の店主さんが「ちょっと張り切って」何かをしてくれるというチケットです。
アイデアを聞いた時、「確かに使ってみたい!」とわたし達もワクワクしました。
「お店からの返礼品」といえば、真っ先に割引券やクーポン券などが思い浮かびます。なぜそういった返礼品ではなく、「はりきりチケット」というアイデアに思い至ったのでしょうか。
南さん:「ただでさえ外出が憚られるこのご時世に、お客さんがわざわざお店を訪れる理由ってなんだろう、と考えた時に、『予想外の出会い』だったり『予測できないような何か』を求めているんじゃないかなと思ったんです」
「はりきりチケット」は、お店の店主さんがちょっと張り切って「何か」をしてくれるチケット。
そんな予測できない「何か」に対するワクワクや期待感が、今まで知らなかったお店、行ったことのなかったお店に足を運ぶきっかけになり、お客さんとお店の「偶然の出会い」「予想外の繋がり」をたくさん生み出してくれるのかもしれません。
おわりに
今回は、南さん、前嶋さんのお話をまとめてみました!
お二人の話は勉強になることばかりで、時間を忘れて2時間以上お話をお伺いさせていただきました。ありがとうございました。
今後もヒアリングや日々のリサーチから得られた学びなどをまとめてお伝えしていければと思います。
※「ヒアリング協力できます」という方がいらっしゃいましたら、下記までお気軽にご連絡ください!
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書き手 : Kazumi Higashino
編集 : Naoya Higuchi (Twitter : @n_hgc36)
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