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「やりたくないこと」から考えたっていい。25卒の就活へのギモンから始める哲学対話 【後編】

本記事では、COLOR Againというプロジェクトが青山学院大学 宇田ゼミを訪問し、就活を控えた学生たちの“哲学対話”の様子を綴っています。

前編(第1回の対話)では、「やりたいこと」「個性」について、それってそもそも何なのか、必要なのかという問いを立てて話しました。

そこで「やりたいこと」が分かるようになるのは難しくても、実は「やりたくないこと」は既に明確にあるのではないか、という私たちの仮説が浮かんできました。

後編(第2回の対話)では、「嫌」という感情、むしろ前回とは逆のテーマから問いを立てた話について綴っていきます。

負の感情と、どう向き合えばよいのか

「嫌」という感情をどう受け止める?

2回目の訪問。
今回は嫌という感情をテーマに問いを立てました。

第2回は、より発言しやすく2グループにわけて対話

自分に対する「嫌」、つまり自分の嫌いなところ。
外に対する「嫌」、つまりやりたくないこと。
どちらも話題にあがってきました。

−自分のイヤなところを挙げていくとしたら?
​​「コツコツ努力するのが苦手で、それができてないとき自分がすごい嫌になる。どう向き合えばいいんだろうというか、自己嫌悪に陥っちゃう」
「私は苦手なことを考えたらエンドレスになっちゃう、あれもこれもって。だから考えないようにしてる。今日が楽しかったらいいやって。私は自分のいけないところをあまり考えないようにしてる。それが幸せ」

自分の嫌いなところはありつつも、どう向き合うかは人それぞれ。
強く自覚している人も、自覚することはできるけどあえて意識しない人もいるようです。

「(イヤなところは)見ないようにしてる。しまっとくみたいな」
「就活になってそれを開けなきゃいけなくなって…」
「出せそうなエピソードだけ書いて、もうそれだけを考えて話す」

でも、就活となると向き合わざるを得なくて、ネガティブに感じることも。
今のところ学生たちの目には、負の感情と向き合っても何もいいことはないように映っていそうですが…

「苦手なことを誰かと補い合う仕事がしたい」
「自分の苦手なことができる人もいるのに、頑張るのは嫌だし。なら、自分がこれできるって認められて、それぞれが活かされる、協力してできる仕事がしたい

何か無理やり克服してやろうとするよりも、それを得意とする人と協力しながら働くことが理想なのかもしれません。

やはり、自分にとってできればやりたくないことは、明確にありそうな感じがします。

やりたくないことだけは決めているんで、それ以外ならその条件が色々考えて妥協すればいい」
「仮にお金がもらえる仕事でも、つまらないなと思ったらやりたくないです
「特に自分の好きなことを仕事にしたいわけじゃないけど、無関心なことの仕事はしたくはないな。関心がないとすぐ辞めたいと思っちゃう。ある程度関心がないと続かないのはバイトしてても思う。好きじゃなくても興味があること」

前回は「趣味がない」と発言していた学生も、「好き」とまで行かなくとも「興味」を持てるかどうかは判断基準になり、興味があることを仕事にしたいと、言語化することができました。

「例えお金がもらえるとしても、やりたくないことをしてまでもらおうとは思わない」ということは、「やりたくないこと」の軸はもう既にあるのかもしれません。

負の感情があってこそ幸せを実感できる?

ただ、「やりたくないこと」とは言いつつも、「嫌」と思うこと全てがそれに当てはまるわけではありません。
前回も「達成感」という言葉が出てきたように、多少の苦労がないと、そもそも幸せを実感しにくくなるという話も出てきました。

幸せを感じた瞬間についてみんなに聞いてみると、大学受験に合格したとき、課題が終わったとき、英検に合格したご褒美にアメリカのディズニーランドに行ったときなど、多かったのは何かを頑張って達成して解放された瞬間のエピソードです。

「高校の頃、毎日部活だったけど、コロナで3ヶ月くらい練習ができなくなって、その時は早くレスリングやりたいなって。今までずっとやりたくないと思ってたのに、やらないの寂しいみたいな。でも再開したらやだなと思って。無い物ねだりなのかなって」
「波があった方が幸せを実感しやすいと思うけど、幸せじゃない時もあるわけで。プラスマイナスで結果プラスだったら幸せなんじゃないかな

逆にしんどい思いをすることがゼロになってしまうと、物足りなさを感じる。
辛さの量<幸せの量で実感できたときに、幸せだと言えるのかもしれません。

「いま色で考えてみたんですけど、“嬉しい”と“幸せ”は違うなって。嬉しいとか興奮する、やったー!みたいなのって赤いイメージあるけど、幸せってなると黄色とかのイメージじゃないですか」

“黄色い”幸せの感情は、それだけでは生まれてこない。
“赤い”嬉しい感情も、どっちもあってこそ、満たされる。

バランスなのかも。幸せって」
「ちょっと大変なこともないと幸せにはならない。充足感とかがあって幸せ」

きっとその“バランス”も人それぞれで、その人の“感性”次第かもしれませんが、みんなが「うんうん」と頷きながら、自分にとっての幸せを考えていることが、ひしひしと伝わってきました。

「やりたくないこと」から考えてみる

哲学対話を終えたあと、最後に簡単なワークショップを用意しました。
読者の方も、ぜひやってみてください。

深いことは考えず、言われるがままやってみるのがコツです。

① 自分が大切にしていることを書く

② 働く上で“したくないこと”を5つ書く

③ その中でも一番“したくないこと”の自分はどこからやってきたのか考える

④ 「やりたくないこと」と何かを大切にしている自分のつながりを考える

自分に“あった”ものに気づく感覚

「やりたくないこと」にヒントがある

第1回、第2回と経て、「他人には“ある”のに、自分には“ない”ような感覚」から「自分に“あった”ものに気づく感覚」へ変えていきたい想いが、私たちにはありました。

<学生たちの感想>
・人の感じる「嫌」は千差万別だった
・自分の嫌なところを見つめ直すと、いいところでもあるのかなと思えた。
・自分の大切なことと嫌なことが反対で、単純でいい指標になるなと思った。
・自分の嫌いなことから逆算して、したいことや好きなことが見つかり、自分に向いていそうな業界が絞れたような気がして嬉しかったし、興味深い時間だった。

自分のしたくないことを明確にして、それに基づいて何を大切にするかを考えたことで、自分も気づいていなかったことが出た。

「やりたくないこと」を明確にすることは、決してネガティブなことでも、わがままでもない。

きっとその「やりたくないこと」は、譲れないものでもあって、無意識にその人のポリシーや価値観が表れていると思います。

それは「やりたいこと」を見つけようと焦るよりも、既に自分の中にあるもの、つまり自分の感性を再発見する感覚です。

他者と話して「自分」がわかる

<学生たちの感想>
・個性は気付いてないものもある。
・みんなの考えを聞いてみて、自分はその考え方に対してどう考えるのかで、個性を知る。
・就活は自分の個性をアピールするものと思っていましたが、個性とは何かを考え、それだけが全てではないと感じました。
・無理矢理、個性とかガクチカを作り出すことばかり考えていたが、無理に作る前に自分の身近なところで見方を変えたり、自分への質問を変えたりすると意外と本当の自分が見えてくることがあるということに気づいた。

参加前は「哲学対話って…?」と、とっつきにくく感じる人も多かったですが、案外普通の会話で、答えのない問いに向き合う時間は面白かったと、語ってくれました。

そして一人で考え抜くよりも、他者と対話することで、自然に自分と他人が違う部分が分かり、見えてくるものがある。

「対話」は、そういった意味で、私たちを何か固定概念から解放してくれる可能性を秘めていると思います。

COLOR Againが大切にしているもの

COLOR Againは、いわゆる「自分らしさ」を見つけて表現しよう!と強要するだけの活動は「やりたくないこと」だと思っています。

むしろそれは、必要以上のプレッシャーを与えて、本質的な目的を見失うこともあり、「自分らしさ」を見つけること自体が目的になってしまうからです。

そもそも「自分らしさ」や「個性」が語られるようになったのは、一人ひとりが豊かに生きることが目的だったはず。

だから私たちは、何かを“見つけようとする”よりも、今の自分が持つ感性に“出会う”体験、日常の違和感に目を向けて、自分にとっての豊かさを取り戻そうとする活動を広げています。

もし共感してくださる方、企業さまがいらっしゃれば、ぜひご連絡いただけると嬉しいです。

問い合わせ
担当者:伊藤・田中



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