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足元 研 『映画のなかの足下』 (京都府京都市)

中学生のころ受験勉強もせずに山形市内の小さなビデオ屋までスケボーを走らせてレンタルしに行った映画『ユーリ』という作品がとても好きで、今でもときどき思い出して胸をドキドキさせている。いしだ壱成と坂井真紀が主演。けれど脇役の永瀬正敏がかっこよくて何度も見た。その時に永瀬正敏が着ていたナイロンパーカーがどうしてもほしくて、山形市内のお店を駆け巡るのだけれど、結果、ホームセンターで見つける(今思えば僕が買ったのは『ヤッケ』で、全く違うと思われる)。浅野忠信に憧れて立てた髪は寝癖と言われ、白のオーバーサイズのカットソーだって人前で着れたものじゃあない。東京で買ったブランドのポロシャツは僕が着てもプロゴルファー織部金次郎みたいだったし、昨今の『マチルダ』ヘア女子に嫌悪感を覚える時もあるけれど、決して人のことは言えないのだ。

こんな風に映画の中に憧れて、現実世界に落とし込もうとしてもなかなかうまくいかない。

スニーカー、ブーツ etc… 

足下ならどうだろう。

映画のなかで一瞬だけ出てくる靴のカットの意味を語っています。ー 足下研

今回レビューする 足元研『映画のなかの足下』は、その名の通り、映画の中の登場人物の足下だけにフォーカスした ZINE。映画のあらすじやその登場人物に触れながら、その人物の足下と、その足下に伴うエピソードを10作品ほど紹介している。『プラダを着た悪魔』から、記憶に新しい『ラ・ラ・ランド』、日本映画では『舟を編む』まで。見たことあるタイトルでも『足下』が思い出せない。いや、誰かの靴を思い出せる映画があったかな。例えば『スタンド・バイ・ミー』でリバー・フェニックスはどんなスニーカーを履いていただろう。『ギルバート・グレイプ』のレオナルド・ディカプリオは草原でどんな靴を履いていただろう。

脱ぎ散らかされた靴。かかとが潰れた靴。今にもソウルが剥がれそうな靴。片方だけの靴。汚れた靴。神経質なまでにピカピカに磨かれた靴。なるほど、確かに『足下』から香り立つ景色や人物像は見えてきそうだ。

逆説的に言えば、どんな映画にも、スタイリストや監督のこだわりというものがあるべきであって、それは靴ひとつだってそうであってほしいのだった。忘れてた。

そして、こんな風に誰かの一途な(あるいは偏った)コレクションが誰かの視野を広げてくれるというのは、いいに決まってる。今回の COLLECTIVE で HANGER STRIKE に並ぶ コレクション ZINE。おすすめです。

ー Written by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

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エントリー 京都

足下 研 / KEN ASHIMOTO
スニーカー文化研究家

デザイナー・ライター。映画のなかで一瞬だけ出てくる靴のカットの意味を語るZINE #映画のなかの足下 出版。日々スニーカーの文化的な側面を研究し、発表しています。 #靴箱文庫 店主。


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