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もう戻れないかもしれない

長く続いた雨が止み、久しぶりに太陽が顔を出した昨日は暑かった。大阪は気温が33度にまで達したそうだ。

「京都は34度やて!」と母からメッセージが届いた。ここまで暑かったら、もう33度も34度もいっしょやんか、と返す。こういうやりとり、嫌いじゃない。

暑くなりそうなのを見越して、朝、ワイドパンツを穿いた。去年買ったのにあまり活躍させてあげられなかった、涼しげなやつである。

楊柳というのだろうか、表面に流れるようなしわっぽい模様がある生地でてきている。丈は足首まであるものの、着てみると薄手だからよく風を通して涼しい。

なにより、脚が締めつけられることなく、すごく楽な着心地だ。いつも穿いているテーパードシルエットのパンツよりさらに楽ちん。

おまけに、ウエストが総ゴムになっている。幅広だがキツくない平ゴムで、ごはんを食べても苦しくならない。

このワイドパンツは、1.5キロ増量中のわたしにとても優しい。今、増えた体重をもとに戻すべくエクササイズと筋トレに励んでいるけれど、このワイドパンツがあればそんなもの必要ないかもしれない。

そこではたと気づく。これはゆったりしたラインのウエストゴムボトムスの罠だ!

多少ふくよかになったお腹も受け止めてくれて、脚のシルエットも隠してくれる。その包容力に甘えているうちに、もうあと戻りできないほど体が重くなってしまう。

妊娠中は「マタニティウェアの罠」にかかって、まんまと20キロ太ってしまった。双子妊婦だからと、適正サイズよりも大きなジャンパースカートを選んで着ていたら、気づいたら全身がぷっくぷくになっていた。産科の担当医は体重増加に厳しくない方だったので、太ったからと叱られることもなかった。

娘たちを出産しても体重は7キロしか減らず、思わず叫びそうになった。増えた20キロのうちほぼ半分は単純に脂肪だとやっと気づいたのだ。

産後、体にしっかりとしがみついたあの脂肪たちにお引き取り願うのがどれだけ大変だったか。

……とか考えているのに、このワイドパンツを穿いていると、あまりの楽さかげんに流されてしまいそうになる。

だめだ、わたしは戻れないかもしれない。

「まあいいんちゃうの、多少太っても」

家族も、周囲の人たちもそう言ってくれる。そんな言葉をかけてもらえる幸せを噛みしめながらも、「戻りたい、いや戻れないかも」とぶつぶつ言っている。

ゆるいは易い。だからストイックさには価値があるのだろう。

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