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最近読んだ本たち(2024年6月分)

6月もあっという間に過ぎていったけれど、マイペースに読書できた。夜はだいたいソファに丸まって本を読むわたしのことを、家族は「ダンゴムシ化している」と言う。

わりと面倒くさいダンゴムシだと我ながら思う。どうせならかわいくておちゃめなダンゴムシになりたい。

6月は小説ばかり読みました。

『すべて真夜中の恋人たち』 川上未映子

本屋さんで一目惚れして購入した一冊。文庫版は、夜の静謐せいひつさを映した暗いブルーグレーに、光がちらつくようなうつくしい装丁になっている。なんとも魅力的な色合いに惹かれたわたしはつい手にとり、レジに向かっていた。ジャケ買いならぬ表紙買いだ。

主人公の冬子さんは派手なキャラクターではないし、惚れた腫れたの大騒ぎもない。静かな恋愛が、ひそやかに進んでいく様子が胸に響く。途中、どうにも苦しくてたまらない箇所があって、困ってしまった。

誰かを好きになる、相手の存在感が心を占めていく、触ってほしくなる……、そんな遠い昔の感覚が思い起こされた。みんな大切な恋を胸にしまって生きているんじゃないかな、なんて思う。

『サラバ!』 西加奈子

ずっと前から、この作品の書き出しを知っていた。きっと輝く物語がはじまるのだろうという予感を抱かせる、簡潔ながら心躍る一文だ。以来、読みたいと思いながらも大作であることにおじけづき、手が出せずにいた(なにせ文庫は上中下巻である!)。

読み終えて、思わずつぶやいたのは「ほんま、家族ってなんなんやろね」だった。家族を選んで生まれてくることはできない。そして、多くの人はそのユニットのなかで成長していく。自分の意思で決めたわけではないメンバーによって、心のありようや人としての素養が決まることも少なくない。家族は、人格形成に大きな影響を与える。

強烈なキャラクターたちで構成された家庭に翻弄されるあゆむ少年が青年になり、中年期にさしかかるまでの物語は、どこをかじっても味わい深かった。川上未映子さんの『黄色い家』とおなじく、読み終えるのが惜しいと思いながらも、ページをめくる手は止まらなかった。

夕方のドトールで、鼻水がじゅるじゅるいうまでわたしを泣かせたのはこの小説だ。そのシーンは何度も読み返している。「サラバ!」と心のなかで唱えながら。

『時ひらく』 辻村深月 伊坂幸太郎 阿川佐和子 恩田陸 柚木麻子 東野圭吾

長い歴史を誇るあの百貨店、三越を舞台に繰り広げられる物語を収めた短編集である。百貨店好きとして素通りできなかった。ファンタジーあり、ヒューマンドラマあり、ミステリありの充実した一冊になっている。

東京に住んでいた頃、百貨店は伊勢丹派だったわたしも、三越には圧倒的な風格を感じていた。職場が近かったことから、手土産を買うなら三越だった。そんな三越をめぐるストーリーたちはどれも楽しく読めた。わたしがいちばん好きなのは柚木麻子さんの一編だけれど、ほかの方はどうだろう? と聞きたくなってしまう。

6月の半分ほどは『サラバ!』を読んでいた。やっぱり長編はいい。手を出すのに勇気は要るけれど、読み終えたあと「なんて豊かな10日間だったんだろう!」と震える瞬間が大好きだ。

7月はなにを読もうかな。




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