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バスに乗るという冒険

一つ、小さな冒険をした。娘たちのICOCAを発行してもらった話の番外編みたいなもの。

先日、役場に行く機会があった。たまに用事のために足を運ぶことがある。面倒くさいなあ、とため息をついた。しかし、ぐちぐち言っていても仕方ないので、ささやかな冒険をしようと思い立った。

ふだんまったく乗らないバスに乗ることにしたのだ。

バスには、軽く10年は乗っていない。私が生まれ育ち、今も住むこの町は郊外ではあるものの、駅まではわりと近い。だから、なにかあれば電車に乗って出かけてしまう。役場にだって、ほんの少し電車に乗るか、自転車で行っていた。

そういえば、東京と神奈川で暮らした3年間も、バスに乗った記憶がない。

ということは、バスを利用するのは、大学時代、京都をうろうろしていた頃以来かもしれない。

まず「後方の入口から乗るんだっけ……?」と悩むところからスタートした。お金はどこで払うんだっけ? 降りるときはボタンを押す……? なんか、整理券とやらがあったような? もうわからないことだらけで、不安しかわいてこなかったけれど、えいっとバス乗り場に行ってみた。

閑散とした(失礼)バス乗り場には、おばあさんが一人。不安を胸にかき抱いた私は思わず尋ねた。「このバス、役場に行きます……よね……?」。おばあさんはにっこり笑って教えてくれた。

「うん、行くよ。これ乗ってたら、すぐつくよ」

よかった。私の乗り場選びは間違っていなかったらしい。しばらく待つとやってきたバスは広告だらけで、なぜかそれが頼もしく見えた。

ここからは、事前にあんなにも不安を募らせていたことがばかばかしくなるほどスムーズだった。お金の払い方がわからないのでICカード(もちろんICOCA)で済ませたせいもある。停留所で降車ボタンを押す必要もなかった。降りるとき、私は全力で運転手さんにお礼を言った。

(なんだ、バス、楽勝やん……!)

役場へ向かう私の足取りは軽かった。顔には勝ち誇ったような表情を浮かべていたと思う。

今回の小さな冒険は大成功。ここのところ、自分がびていくのがこわくて、いつもとは違う行動パターンを取ることが多かった。案外いいものだなあ、と実感している。同じことの繰り返しも悪くはないけれど、やっぱり冒険って心が躍る。その気持ちの跳ね上がり具合が、生活に彩りを添えてくれる気がしている。

これで、移動手段の選択肢が一つ増えた。役場のまわりにはショッピングモールや感じのいいカフェがあるので、近いうちまたバスに乗って遊びに行こう。レベルが1アップした私は、ちょっと強気だ。

いろいろと不安で、乗車直前にバス会社の公式サイトをチェック。乗り方についてのていねいな記載に助けられました。ありがとうございます……!

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