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【Web小説】『霊が視える仕組みはスマホゲームと似てる?』第1話

 夏、ですね。
 人の体温に近いくらいの気温となる日がでてきて早くもバテています。

 暑いと意識するとよけいに暑さが増す気がします。
 そこでですが、寄り道していきませんか?

 ここに 不思議で ちょっとだけ怖い そして面白いはなしを置いていくことにしました。


『霊が視える仕組みはスマホゲームと似てる?』(全2話/3,673字)


あらすじ

 俺は趣味でホラー小説を書いている。ネタは友人の体験談だ。
 友人はなぜか幽霊や妖怪などのアヤカシたぐいから好かれるようで、変わった体験をしてきている。
 今回も面白い話を聞きだしたけど――。

※カクヨムに投稿している物語を推敲し掲載しています


第1話


「……い、おーい、紫桃しとう
 さっきから無言のままぼうっとしているけど酔ったのか?」

「酔ってないよ」

 いかん、いかん。
 回想モードに入っていた。

 久しぶりに友人のコオロギ――神路祇こうろぎ――と会い、新宿の居酒屋で飲みながら互いの近況を聞いたりなんかして、会話を楽しんでいたところ、珍しくコオロギが視えた。

 「珍しく視えた」と変な言い回しになっているのには理由がある。
 コオロギは異能の持ち主で、幽霊や妖怪のたぐいと遭遇し、不思議な体験をしてきている。

 ただ能力は少し変わっていて、アヤカシに腕をつかまれるといった接触型の体験をしても姿が視えるということは少ない。
 ところが珍しいことに今は視る異能が働いているようで、居酒屋のスタッフを視て褒めていた。

 コオロギはお酒を飲んで機嫌がよくなるとおしゃべりになる。
 ふだんは話したがらない不思議な体験や、異能者にしかわからないような独特な考えを話すことがある。そのことを知っているから飲みに誘った。

 また奇譚きたんを語ってくれないかなと密かに期待していたら、にこにこと楽しげに話してきた。

「最近はARやMRなどのXR技術が伸びてきていて、ARを使ったスマートフォンのアプリが増えてきてる。
 先端の技術を知ると、アヤカシが視える仕組みはXR技術に思えてくるよ」

「なあ、コオロギ。俺はパソコンとかデジタルにうといんだ。
 コンピューターを使った技術を異能に例えているようだけど、わかりやすく教えてくれないか?」

「ごめん、ごめん。仕事で使うからつい。
 そうだなあ。ブームになったスマートフォンゲームの『ポ〇G〇』がわかりやすいかな?」

「ポ〇G〇はやったことがある。
 アプリをインストールする必要があるけど面白いよな」

「おっ、知ってるなら話は早い。
 ポ〇G〇のようなARゲームって、スマートフォンの画面上に映っている風景にゲームのキャラクターが登場する」

「初めて見たときは驚いたよ。
 スマホのカメラ越しにゲームのキャラクターが見えてて、現実に存在してるような感覚になるからなあ」

「現実には存在していないのに、スマートフォンに映る風景では、キャラクターは居るものとして扱われる。
 その仕組みがね、アヤカシを視ることとなんだか似てる気がするんだ。
 アヤカシは普通の人には見えないだろう?
 ARゲームと一緒でさ、特別なモノを視るためには、特殊な能力機能が必要になるんだ」

「特殊な……。それが異能か」

「そう、『アヤカシを視る』ための機能。
 霊感があって視える人は、AR技術のような機能を標準装備してて、スマートフォンに映るARのように、現実世界にアヤカシがプラスされたカタチが標準となって視えている。
 先端技術を知ると視える能力はそんなふうに思えた。だから映画の『マ〇リックス』の世界観も現実であり得そう(笑)」

「コオロギ~、言いたいことはわかったけど、ヒトをスマホとかに例えるなよ。
 機能や装備とか……。機械っぽくてちょっと怖いぞ」

 ほろ酔いのコオロギは気をつけるよと笑いながら返した。

 やっぱりゼロ感の俺と異能があるコオロギとでは視点が違う。
 アヤカシが見えない俺には異能者が視ている世界はわからないけど、コオロギを通してなんとなく想像できる。

 コオロギは常にアヤカシが視える異能者ではない。珍しく視えたときの状況をARで表現したということは、コオロギにとってアヤカシは、バーチャル映像が突然現れるようなイメージなのだろう。

 いい情報を入手できたぜ!
 ホラー小説を書くときに使えるかもな~。

 この流れだと体験談も話してくれそうな気がしたので聞いてみた。

「コオロギは今話したARみたいな霊体を視たことがあるのか?」

「ARっぽいやつ?
 さっきまで現実にはいなかったけど、突然現れたやつねえ……。
 ほ―――ん?」

 頭を軽く左右に動かしている様子から記憶を引き出しているようだ。

 いつもなら怪異は話したがらないのに今夜は素直だな。
 さっきあのコトがあったからか?

 邪魔をしないように待っていたらコオロギの表情が変わった。

「ちょっと変わったアヤカシを視たことがある。
 聞きたい?」

「ぜひっ!」

 こんなにスムーズにコトが進むなんて!

 これは酔っぱらったおっさんからコオロギを助けてくれた、あの青年のおかげだな。コオロギを助けてくれただけでなく、小説のネタとなる体験を聞くことができて感謝に尽きるぜ。

 どんな話が聞けるのかと、うきうきしながら聞く体勢に入った。


▼2話へ続く▼


Web小説『ホラーが書けない』神無月そぞろ

【小説】『霊が視える仕組みはスマホゲームと似てる?』

(全2話)

 第1話(1901字)
https://note.com/coinxcastle/n/n27a3b0979d0b

 第2話(1722字)
https://note.com/coinxcastle/n/nf8938f74a953


※カクヨムに投稿していた物語を推敲し掲載しています

カクヨム『ホラーが書けない』 より
https://kakuyomu.jp/works/16816452220402346436



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