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自己責任論 VS みんなで支え合う論。 経済的にお得なのはどっち? データに基づいて検証してみた結果…

和の国、なんて言われることもある日本ですが、実は「自己責任論」がとても強い国です。

人がビジネスに失敗して苦境に陥っていても、ひとり親で歯を食いしばりながら子育てをしていても、若者にこづかれながら貧しい老後の生活をおくっていても、そこで多くの人が口にするのは

「だって、自己責任じゃん」

という言葉です。



これに関して、面白い統計があります。

世界各国で行われた貧困問題への意識調査(The Pew Global Attitudes Project、2007年)です。

「自力で生きていけないようなとても貧しい人たちの面倒をみるのは、国や政府の責任である。この考えについてどう思うか?」という質問に対して

「そうは思わない」と答えた人の割合は下記の通り。

ドイツ : 7%

イギリス : 8%

中国 : 9%

つまり、ほとんどの人は「貧しい人の支援は政府が行うべき」と考えているんですね。

日本はというと… 38%でした。

あのまともに医療保険が整っていない「The 自己責任」の米国ですら28%なのに。

参考:「私たちは子どもに何ができるのか  - 非認知能力を育み、格差に挑む - 」p7


この結果をどうみるかは人によってまちまちだと思いますが、僕は直感的に嫌だったわけですよ。

僕自身、社会にうまく順応できたタイプじゃなくて、バカな失敗をたくさんして、めちゃめちゃ人に迷惑をかけて、それでも色々な人に支えられて、そして今に至っているんですね。

だから、助け合って生きていこうよ!ってナチュラルに思うわけですが…


でも、政府が貧しい人の支援をするってなると現実問題としてお金がかかってきます。

そしてそのお金は誰が出すの?と聞かれれば、それは納税者、つまり僕ら自身。

「 私だってまったく楽してるわけじゃないのに、なんで見ず知らずの貧しい人たちの面倒までみないといけないわけ!?」

という意見も当然出てきます。気持ちはすごくわかります。

僕だってぜんぜん生活楽じゃないし。


実際のところ、日本の借金は対GDP比(経済の規模に対する国の借金の比率)でブッチギリの世界トップ。

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参考URL:https://www.globalnote.jp/post-12146.html


少子高齢化が爆速で進む中、これからこの借金が悪化することはあれ、改善する目処はまったく立たない様子。

確かに自己責任論は冷たい感じがするけど、困っている人に投資をする余裕なんて、もはや日本にはないのか…

こんな状況じゃ、悔しいけど、無念だけど、個々人が自己責任論で頑張って生きていくしかないのかな…

そんな殺伐とした社会、嫌だなぁ…

そんなふうに考えていた時代が、私にもありました。



困っている人を助ける為にお金を使うことを渋ると、結果的により大きな代償を支払うことになる。

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そんなモヤっていた時に出会ったのが、名著 『経済政策で人は死ぬか?  - 公衆衛生学から見た不況対策 -  』でした。


この本に書かれていることをすっごく簡単にまとめると…

不況な時こそ、困っている人を助けることにお金を使った方が、経済的に圧倒的にお得だよ。逆にそれをしないと、人が死ぬよ。結果的に社会全体が衰退するよ、ということでした。


確かに革新的な内容ではあるものの、ここまでなら別にこれまで多くの知識人が主張してきた議論なんです。僕も知っていました。

この本の本当にすごいところは、この結論を統計的に証明したことなんです。


人類は、歴史上とても深刻な経済危機を何度も経験してきました。

その都度大不況に陥り、人々は職を失い、家を失い、健康を損ない、遂には死に至るケースも多くあったわけです。


でも、その大不況の時の状況を国や地域ごとにみてみると、とても面白いことがわかってきました。

それは、大不況を同じように経験しているはずなのに、その後の展開がまったく異なる国や地域が存在したこと。

自然と、いわゆるABテスト(※)が世界規模で行われていたんですね。

※ ABテスト = ある特定の期間にページの一部分を2パターン用意して、どちらがより効果の高い成果を出せるのかを検証すること


例えば、記憶に新しいリーマンショックです。

この未曾有の大不況に、各国政府はそれぞれ対応に追われることになります。

以下、この名著の内容を独断と偏見で超絶シンプルにしつつ一部を要約してお伝えします!

(勘違いしている箇所があったらぜひご指摘ください)


国家の未曾有の経済危機に際して、自己責任論を取ったギリシャの事例

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ギリシャは自己責任論を取りました。

つまり、これまで困っている人を助ける為に使っていたお金を削ることにしたわけです。

しかしそれもやむを得ないとも思える事情がありました。国が破産寸前になってしまったのです。

欧州や世界から経済的援助の申し出がありましたが、それにはエグい条件が付いていました。

政府の社会福祉に関わる支出、つまり、困っている人を助ける為に使っていたお金を削れ、というものです。なぜなら、政府がここにたくさんお金を使っていたからでした。


ギリシャ政府は、泣く泣くこの条件を飲んだんですね。

住民は、大反対しましたが(※)、政府はその意見を無視しました。

※ そもそも、リーマンショックは各国政府と銀行の愚行のせいで発生した人災です。それを一般市民や社会的弱者の福祉を削ることによって解決するというのは、自己責任論どころか、完全な責任転換。住民が反対するのは、当然のことだと僕は個人的に思います。


その結果どうなったか。

多くの人々は失業し、家を差し押さえられました。当然、心身ともに健康は悪化しますが、医療費が削られてしまったのに病院にもいけません。

街にはホームレスが激増(2009年から2011年で25%増加)し、同時に治安も悪化して殺人事件も頻発します(2007年から2011年で2倍)。

そして、もはや先進国の問題とは認識されていなかった新規HIV感染者数は、2011年に前年同時期より52%増。これは、新規の麻薬使用者の激増と相関関係にあります(注射の針を使って麻薬を使うので、それを使い回すことでHIVが広がる)。

うつ病患者も増え、自殺者も急増(特に男性は2007年から2009年にかけて24%増)しました。

もう、地獄です…


政治家はこの緊縮財政政策を実施するときにこう言っていたのです。

この改革には短期的には痛みを伴うと。でも、その先には力強い経済が出現し、ギリシャは復活するのだと。(どっかで聞いたフレーズ…)

そもそもこの主張に科学的な根拠があるのかというと、実は何もないのですが…

でも、結果的にそうなるなら、ここまで深刻な被害を受けた一般市民もほんの少しは報われる… かもしれない。


しかし、現実は本当に非情なものです。


ここまで医療制度や社会福祉制度をめちゃくちゃ削ってまで財政を立て直そうとしたギリシャでありましたが、

あらゆる社会問題が国中に蔓延し、税収は激減。しかも、こういう事態を抑え込むのにこれまで必要なかった税金まで使うハメにまでなり、経済はむしろ悪化していってしまいました…

今なお、ギリシャはこの時の傷から完全に立ち直れずにいます。


ところが、

この未曾有の金融危機でギリシャと同様に国家経済が破綻寸前まで追い込まれ、同じく過激な緊縮財政政策を実施する決断を迫られたにも関わらず、まったく別の道を歩んで経済を急速に回復させた国がありました。


アイスランドです。


下図は、ギリシャが緊縮政策を取ったにも関わらず経済が相変わらず下降していっているのに対し、正反対の政策を選んだアイスランドはV字回復していることを示しています。

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参照:『経済政策で人は死ぬか? - 公衆衛生学から見た不況対策 - 』p139



国家の未曾有の経済危機に際して、みんなで支え合う論を貫いたアイスラインドの事例

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2008年10月6日、アイスランドのテレビで緊急放送がありました。首相が出演し、国民に直接語りかけました。

アイスランドが、国家破綻の危機に直面している、というのです。

金融大国として(いびつな)急成長を遂げていたアイスランドは、リーマンショックの衝撃が直撃する事になってしまいました。

そこで、ギリシャとまったく同じ選択を迫られる事になってしまいました。

欧州、及び世界からの援助の申し出はあるものの、それを受け取る条件は医療費や社会福祉関連費の大幅削減。つまり、貧しい人たちを切り捨てることです。

かといって、この条件付き援助を受け入れなければ、国の経済が破綻するリスクを抱えつつ、しかも、国際的に孤立する事にもなってしまうのでした。

この究極の選択を迫られる中で、アイスランドはギリシャとまったく正反対の手法を取りました。

条件付き援助を拒否したのです(※)

このエクストリームな状況で、みんなで支え合う論を貫きます。

※ アイスランド政府はこの選択を、国民投票にかけました。その結果、93%の人が条件付き援助の受け入れを拒否しました。


しかも

社会保障関連費用を削減するどころか、むしろ、増額するという選択をしたのでした…!!!

金融危機以前の2007年にはGDPの42.3%だった政府支出は、金融危機発生後の2008年には57.7%になっていたのです。

世界中の有識者からは、こうした財政政策は負債膨張やインフレに繋がるのではないかという警告が発せられましたが、そういった事にはなりませんでした。


では実際、こういった施策を取って、アイスランドはどうなったのか?


経済的に復活したことはすでに述べましたが、それは人々の心身の健康にもしっかり現れていました。

まず、アイスランド政府は失業対策で公共職業安定所の予算を大幅に増やします。これによって、失業者増加に歯止めがかかりました。

そして、家のローンが支払えなくて困っている人には、国が補助を与える形で、差し押さえを防ぐことができました。そのため、ホームレスも増えることはありませんでした。

医療制度も今まで通り維持された為に、人々は病気になっても今まで通りに病院に通うことができたのです。

うつ病患者や自殺者数についても、2007年から一貫して減少し続けました。

極め付けは、2012年の国連世界幸福度報告書です。

幸福度の指標には様々なものがありますが、どの指標を見てもアイスランドは上位にランクインしていました。

アイスランドはこの未曾有の大不況の中、一見コストが多くかかってしまうみんなで助け合う論を貫き通すことで、この逆境を乗り越えたのでした。



みんなで支え合う論は、経済的にもお得である。

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今回はリーマンショックを取り上げましたが、著書の中では他にも

1930年代の大不況

1990年代のソ連崩壊による東側諸国の大不況

同じく1990年代のアジア通貨危機

と、それぞれの歴史的な大不況の事例の中で、各国の経済政策を調べ上げ、その結果を統計学を駆使して分析し、すべてに同じ結論を出しています。

緊縮財政政策を取った国は悲惨な状況に陥り、積極財政政策を選んだ国は、その経済不況の衝撃をかなり緩和することができている。

つまり、

不況な時こそ、困っている人を助けることにお金を使った方が、経済的に圧倒的にお得、ということです。



万国共通で政治家たちはこういうことを言います。

この目の前の痛みに耐えれば中長期的利益がもたらされる。だから我慢してくれ、と。

そしてせっせと社会保障関連費を削減したり、民営化を促進させたりするわけですが、こういったいわゆる緊縮財政政策には、実はなんの科学的根拠もないのです。

これは、いわゆる「小さい政府」と自由な市場は常に国家の介入に勝るという思い込みとイデオロギーによって主張されているのであり、民営化が進む事によって得をする政治家にとって都合の良い話、という事です。


だいたい…

目の前の痛みに耐えろ、と言いますが、その痛みに耐えているのは政治家や金持ちではなく一般市民であり、特に、社会的弱者なわけです。

痛みに耐えられるならまだいいです。

でも、それで失業してうつ病になったり、ホームレスになってしまったりしたら、立ち直ることは非常に困難になってしまいます。

まして、命まで失ってしまってはもう取り返しがつかないのです。その先の経済成長なんてなんの意味もありません。


もちろん、経済成長はとても重要だと思います。


しかし、なぜ重要なのでしょう?


それは、経済成長をする事によってみんなが幸せに生活していける機会を増やすことができるからではないでしょうか。

それを犠牲にしてまで成し遂げるべき経済成長なんてあるのか、と思うのです(しかも、その方法では成し遂げられないし)。


自己責任論 VS みんなで支え合う論。 経済的にお得なのはどっち?という問いに対して、人類の歴史は明確に「みんなで支え合う論」に軍配を上げています。


しかし、じゃあ日本ではどうかというと、冒頭でご報告した通り「自己責任論」が社会的に強い風潮があります。

実はこれは、経済状況にも反映されています。

2017年に発表された「経済民主主義指数」によれば、OECD32ヶ国の中で、日本は下から4番目。つまり、日本経済は諸外国と比べても不平等ということなんです。


僕たちの国でも、もっと支え合い、加速させていきませんか。

だって、その方が断然お得なんですから。


みんなで支え合う社会が、如何に私たちひとりひとりにとってお得か、本記事の内容にもガッツリ触れつつ、本でまとめてみました。全体のテーマは、「パパの家庭進出」です。現代の家族のあり方について、実体験を軸にしつつ、政治、経済、歴史など、様々な視点から考えてみました。ぜひ、ご笑覧ください。


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