見出し画像

7人の女侍 11話 ”挫折まみれの元ダンサーを恋人に”

これまでの記事で、私が職場で一緒に働く女性事務員の「生き様」を紹介しながら、中小企業や男性社会の問題点を指摘してきました。

7人中5人まで紹介したので、最後まで書ききりたいという意味不明な使命感に背中を押されて、今回も一人紹介したいと思います。


前回はちょっとアダルトな記事でしたが、今回の女性は残念ながら?色気薄めです。

歳は30代半ば、それでも7人の中では最も若く、独身です。

見た目は細くて色白。服装もガーリーでフェミニンな淡い中間色を多用。20代にしか見えません。

顔が少し中川翔子に似ているので、シヨウコと呼びましょう。

可愛いけど色気がないあたりも似ています(失礼)。

シヨウコは元グラフィックデザイナーです。
フォトショ・イラレを操ることができます。

アナログな中小企業の事務としては、ほぼ使用しないスキルです。
猫に小判、豚に真珠、アナログ企業にイラレ。

それでは彼女の能力がもったいないので、私が入社してEC販売を始めたのを期に、画像作成・加工でだいぶ協力してもらいました。

されど、パソコン音痴な上の人間たちはその特殊技能の価値をまったく理解していません。
そのため、年齢の若さと、これから書く問題が響いて、彼女の給料は信じられない安さです。
彼女の美貌をもってすれば、パパ活のほうがずっと稼げそうです。


さて、シヨウコの入社時期は私より少しだけ先です。
前職まではそれなりにシステムが整った会社で働いていたため、PC慣れしています。

PCスキルをドラゴンボールの戦闘力(フリーザ編初期)に例えるなら、他の社員はモブキャラ地球人の5程度、前回の記事で紹介したタツコは、クリリンくらいの1000程度、そしてシヨウコは、18000のベジータくらいありそうです。

そして私の戦闘力は、53万です。(これが言いたかっただけかも)


昔の仕組みの中で成功体験を積んだ世代なら、ITスキルは、しょせん「あれば便利な道具」の一つ程度と思っている人が多いようです。
それは時代錯誤かつ過小評価もよいところで、ITは思考のやり方自体を変えるものだから、根本の発想すら変えてしまいます。

一方で、ITに頼りすぎると劣化してしまう人間の能力もあるでしょう。記憶力、暗算力、どんぶり勘定の精度といったものです。

シヨウコはITに依存した仕事ばかりしてきたせいか、それらが大の苦手。

なのに、課せられた仕事はアナログまみれ。明白なミスマッチです。

彼女はアナログ雑務に忙殺された結果、単純な計算を間違えたり、自分がしたことを忘れて人のせいにしてしまったり、というミスを頻発させてしまいます。
営業はそれが原因で謝罪に奔走することになり、シヨウコの社内評価はガタ落ち

しかし彼女はプライドが高く「この原始的な仕組みが悪い」と思っているものだから、素直に謝罪できません。

私もIT関係で生きてきた人間として、シヨウコの気持ちはよくわかります。
そんな超属人的なアナログ仕事を、ろくに引き継ぎ資料なしで、入社したばかりの人間にミスなくやれというほうが無理なのです。

シヨウコは会社の旧態然とした悪習をおかしいと気付くことができるので、改善を上申しはじめます
それは良いとして、惜しむらくは、まだ社内の信用を築けていない段階で、歯に衣着せず意見してしまったこと。

「朝礼は無意味。時間の無駄。」
「女がお茶出しする意味がわからない。ペットボトルのほうが便利」
「電話は突如時間が奪われる。社内の連絡はメールで良い」

いや、間違っていないのです。
ただし日本の会社では、意見が正しいかどうかではなく、「誰が言ったか」が重要視されてしまうのです。

「仕事もまともにできないくせに、偉そうなことばかり言ってくる」

案の定そのような受け止め方しかされず、シヨウコの提案はことごとく却下されて、ますますふてくされます。

「私の考えの方が理にかなっている」
「私の能力と考えの正しさを周囲に認めさせたい」

シヨウコはそういった思いが強すぎて、周囲の空気が読めず前のめりになってしまうのです。


実は、彼女のそういった性質が形成された原因と思われる背景があります。

彼女の実家は、とあるジャンルのダンススクールを経営しています。

母親が設立者で、3人姉妹の真ん中

そして、姉と妹は、インストラクターとして舞台にも上がって活躍しています。

きっと子供の頃は、「絵に描いたような美人3姉妹」「みんなお母さんのようなダンサーになってね」と言われて育ったに違いありません。
真ん中だけダンスを習わないというのもありえないので、3人で練習してきたはずです。

しかし、シヨウコだけは才能がなかったのでしょう。
3姉妹の中で彼女だけが、違う道を進むことになりました。

その過程では、姉と妹、両方に対して完膚なきまでに自分が劣っていることを認めざるを得ない、大きな挫折の瞬間があったはずです。
そのときの彼女の心境を慮ると同情したくなります。

そんなシヨウコだから、せめて自分で選んだ別の道では成功したい、劣った存在とみなされたくない、という気持ちが強くなるのは、致し方ないと思います。

舞台から降りたばかりのシヨウコの姉に挨拶したことがありますが、

「シヨウコがもし何かやらかしたら、ガツン🤛とやっていいですから」

と言っていました。家でも何かやらかしているようです
残念ながら、シヨウコはきっとどこでもトチりやすいタイプなのでしょう。

そのため、ダンサーの道を諦めたことを自己肯定できるような、自分で納得して長続きできる仕事も得られず、転職を繰り返し、現在も低評価に甘んじています。

追い打ちをかけるように、姉と妹は結婚していて、彼女だけ独身

シヨウコは容姿に恵まれているので、こんな言い方もなんですが、素晴らしいパートナーを獲得すれば一発逆転も可能なのです。

にもかかわらず、男を探すどころか猫を3匹飼い始めました。もはや完全にやる気なしです。

浮いた話はないのか本人に聞くと、男はめんどくさい、なんて言います。

正直な話、どの口が言うのかと思うところがあります。
シヨウコは上述のような性格ですから、どちらかといえば男からみて「いちいちめんどくさい女」となっている可能性が高いです。

仕事のやりがいも評価も得られない中で、こういう性格のコが、よく辞めずにいるな・・・

そう思っていたら、やっぱり会社を辞めることになりました
4年ほどの間ですが、彼女にとっては過去最長の職場らしいです。


実は私は、シヨウコに思い入れがあります。

そんなシヨウコとのロマンス(?)、そして彼女の現在を、次に書きたいと思います。

〜完結編へ続く:



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?