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冬のいいところ

 ぼくは、季節の中では夏が一番好きだと思っている。
 子どものころに父は、

「人は生まれて初めて吸い込んだときの空気を覚えているんだ。だから、その時の季節が好きなんだ。お前がはじめて吸った空気は、夏の暑い、湿気の多い空気だったはずだ」

 と言っていた。本当かどうかは定かではないが、その言葉通りぼくは夏が好きなのだ。

 冬は? と言えば、着るものが多くなったり重たくなったりするし、外に出るのが億劫になったり、手がかじかんで何かにぶつけたらものすごく痛かったりで、嫌なことが多いような気がする。

 でも、ときどきは冬もいいよなって、思うこともある。思い返してみると、夏の思い出もたくさんあるけれど、冬の思い出も夏のそれに負けないくらいいっぱいあるのだな、意外にも。


 冬の星空は、好きだな。空気が澄みわたっている気がして、星がとても美しく見える。

 そして、何と言っても、寒くて凍えるような外から、あたたかい家の中に入った時のほっとした感じとか、暖かいお風呂につかって、体がジーンとするような感覚。そんなのは厳しい冬だからこそ味わえる喜びである。
 そうそう、アツアツのおでんに熱燗もいい。

 厳しい環境から一気に解放されるような感覚、脱力感、そして幸福感。

 これは、苦労して頑張った後に得られる喜びに似ているような気がする。

 楽ばかりしていれば、その時はなんとなく楽しいかもしれないけれど、大きな喜びを得ることはないだろう。人間としての成長も、変化も少ないものだ。
 「大変」という言葉は、言い換えると、「えらいこっちゃ」とか「ムリムリ、そんなしんどいことしたないわー」みたいなことの意味だけれど、音読みをすると、「大きく変わる」となる。大変なことを体験すれば、人は大きく変わることができるのだ(知らんけど笑)。


 厳しい冬を越えた後に、新学期がやってくるというのも、もしかしたらその時期に人は成長するからかもしれないな、なんて勝手に思ったりした。


 ああ、なんだか、あったかい熱燗が飲みたくなってきたなぁ。





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