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闖入者
人生には思いがけないことが起こるものだ。
それは小さいこともあれば大きいこともあって、いいこともあれば悪いこともある。
でもどんな出来事でも、意表を突かれ、なにかしらの感情が生まれるということでは同じだ。
昨日、仕事をしていてふと気配を感じて足元を見ると、一匹の猫がのそのそと歩いていたのでびっくりした。グレーの縞模様のアメリカンショートヘア―のような猫で、子猫ではなく大人のようだった。
鈴をつけていたのでどこかで飼われている猫なのだろう。
そういえば、前の席に座っている人の椅子が変な音を出したな、と思っていたのだけれど、それは椅子のきしむ音ではなく、猫の鳴き声だったようだ。
そのかわいい闖入者のおかげで職場は一気に花が咲いたようににぎやかになった。
そういえば、小学生の頃に道ばたで見つけた子犬を友達みんなで隠れて世話をしたことがあった。通学途中に見つけて、こっそりと学校に連れて行き、先生に見つからないように(今思うと、先生も見て見ぬふりをしていてくれたのかもしれない)給食のパンと牛乳をあげた。そして放課後になって、学校の近くの歩道橋と土手の隙間にあいた窪みのようなところに連れて行き、そこでみんなで、しばらく世話をした。
どれくらいの期間そうしていたかはわからないけれど、いつの間にかその子犬はどこかに行ってしまったのだ。
そのことは今でも心のどこかで、思い出として残っている。
そんな思いがけないことが他にもいっぱいあって、それが積み重なって大切な思い出となり、今の自分の中に息づき、結果的に、それらが今の自分を形作ってもいるのかもしれない。
昨日も猫が入ってきて、みんなが甘い声で猫に話しかけたりしていた。猫なで声とはこういう声なのだろうか。猫に言葉が通じるはずもないのにな、と思うと少しおかしかった。
みんなひとしきり猫を囲んで、猫が立ち去るまでかまって相手をしてやっていた。
職場のみんな、猫好きだったのだな。
今日になっても、
「昨日の猫、ちゃんと帰れたやろうか?」
とか、
「今日もまたこないなかぁ」
などと、外をのぞきながら話していた。
どうでもいいような、取るに足らない出来事だけれど、意外性があってなかなかに面白かった。
思いがけない出来事や出会いは、色んなところに転がっているものだ。
読んでいただいて、とてもうれしいです!