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医療×教育×生成AI 異分野融合で目指す医療研究の社会実装

こんにちは、CoffeeSign広報担当のさおりすです。

今回はSDT株式会社が提供している生成AIサービス Panorama AIを導入いただいている、大分大学医学部先進医療科学科講師の八尋隆明先生にお話を伺いました。

医療分野と異業種連携の必要性や、コロナ禍での大学の対応について、八尋先生に語っていただきました。

八尋隆明先生プロフィール
https://www.med.oita-u.ac.jp/campus/med-sciences/staff-yahiro.html


コロナ禍を経ての学び

ーーコロナ禍の大学病院はどのような状況だったのですか。

コロナ禍では、地域の中核病院の院長から直接私に検体検査の依頼が続々と入ってきました。

保健所に検体検査を依頼しても、人手不足との理由で断られるというのです。「どうにかお願いします」と頭を下げられるなかで、依頼を断ることはできません。

検査体制が追いつかないなか、私は朝8時から深夜2時頃まで検査を行い、朝4時に再び病院へ向かう日々を約1年間続けました。当時は「いま、私がこの検査対応を行わなければ、病院が機能不全に陥ってしまうかもしれない」という使命感が原動力となっていました。

理不尽に聞こえるかもしれませんが、その期間が私の研究者人生のなかで最もやりがいを感じた時期でもありました。人の役に立てているとの実感を得ることができたからです。私が生きている意味は、どんな方法であれ誰かの役に立つことだと信じています。


ーー コロナ禍での対応からの学びはありますか。

コロナ禍を経験した者として、次の感染症が発生した時に備えて、当時の病院の状況や経験を関係者に伝え続けていくことが重要だと考えています。

次にパンデミックが起きた際にも、行政から大学病院へ検体検査の依頼が来るはずです。

実際にコロナ禍での対応を経験したことのない研究者のなかには、「未知の病原体は怖いから受け入れたくない」と考える人たちもいます。おそらく、検査を行う際に自身が病原体に暴露されることを恐れているのでしょう。しかし、最も危険性が高いのは、現場で患者さんと対峙し検体を採取する医療従事者なのです。

コロナ禍初期は、COVID-19の病原性や感染力など不明な点が多く、現場は恐怖と逼迫感に包まれていました。感染者が次々と出る病棟で、医療従事者は混乱と不安を抱えながら働いていたのです。

未知の感染症に立ち向かう際、現場の実情を理解し、協力し合うことが何よりも大切だと学びました。

そのため、私自身の経験を後輩たちに伝え、次のパンデミックに備えることが重要だと考えています。パンデミック対応の経験の有無が、その後の対応を大きく左右するからです。

特に自治体では、定期的に人事異動が行われることから情報共有が途切れる可能性があります。過去のパンデミック対応の経験を活かし有事にどのように対応していくのか、大学がその役割を担っていかなければなりません。

大学として優れた研究業績を上げることも大事ですが、実践的な対応ができる人材を育成することも、大学の重要な使命だと私は考えています。


医療分野における異業種との連携の重要性

ーー八尋先生が教育を行う上で、大切にされていることを教えてください。

知識の詰め込みだけでなく、実体験に基づく問題提起や、人のために役立つ研究の重要性を伝えていきたいと考えています。教科書的な教育は、情報量が増え続けるなかで、GoogleやChatGPTなどのデジタルツールが担える部分も出てきました。

私は自身の臨床現場での経験を踏まえて、研究分野の発展のために何ができるかを常に自分に問いかけています。

新たなアカデミックな知見が生まれた時、それをどのように臨床に還元できるかを考えることが重要なのです。これからは、臨床と研究のスキルを兼ね備えた人材が求められるでしょう。

医療分野は専門性が高い反面、閉鎖的になりがちです。新しいものを生み出すには、医療以外の分野とも積極的にコミュニケーションを図ることが不可欠だと私は考えています。


ーー医療分野も異業種との関わりが大切だと考えていらっしゃるのですね。

私は長年、研究成果を臨床に応用することを模索してきました。

研究分野では、論文発表や学会発表を行うことでひと段落するのですが、その研究の成果を社会実装していくことの難易度が高いのです。そのため、SDTさんから「生成AIを医療に活かしませんか」とお話をいただいた時は非常に嬉しかったですね。

ある技術が医療業界ではAという使い方しかできなくても、他業界ではAダッシュという別の有効活用法があることは珍しくありません。分野の違いによって技術が活かされていないのは勿体ないと感じています。医療分野も異業種との連携により、新たな価値を創出できるはずです。

医療には高度な専門性が求められる分野もありますが、私のいる分野はフラットな立ち位置にあるので、様々な分野に関わっていきたいと考えています。SDTの森さんや乾さんとの出会いは、異業種との連携に対してオープンでいたからこそ実現したのだと思います。

医療と異業種が連携することで、専門性が高い医療分野の話を、一般の方向けに分かりやすく説明してもらうことができます。異業種と連携することによって、医療技術や研究の成果を社会実装し、人々の健康で幸せな暮らしを実現するために共に考えていくことは、とても楽しい経験です。

人生を楽しむ決意

ーー八尋先生は「楽しむこと」を大切にされていますね。

先天性の心臓の病気を抱えているので、いつ再発するかもわからないのです。毎日話したいことがたくさんあるのに、明日倒れてしまったら、もう話すことができなくなってしまいます。だからこそ、今日のうちにすべて話しておきたいんですよね。健康な人ならば、そんなことは考えないでしょう。

幼い頃に、生きることが難しいところを生かしてもらった命ですから。長生きすると言っても100年くらいの人生、楽しまないともったいないです。仕事も人生もできる限り楽しみたいと思っています。

今でこそ、そう思えていますが、20代前半までは、心臓がいつ止まるかという恐怖に怯えながら生きていました。毎朝目覚めるたびに「ああ、今日も生きているーー」とホッとしていたんです。今は、死についてあまり気にしなくなりましたけどね。


ーー怯えながら生きていたところから、転機はあったのですか。

中学校の校長先生との再会がきっかけでした。私がいつ死ぬかわからないと話すと先生は、「いつ死んでもいいと覚悟を持てるなら、何でもできるでしょ」と言ってくれたんです。その言葉を聞いて、「そうか、なんでもできる」と気が楽になりましたね(笑)

私を担当してくださった病院の先生方は、みなさん亡くなってしまいました。寂しいですね。

10歳の頃、手術を担当した先生に「なぜ死ぬかもしれない私を手術したのか」と尋ねたことがあります。先生はこう言いました。「あなたをスーパーマンにするためではなく、普通に生活し、社会復帰できるようにするために手術したんだよ」。

それ以来、手術によって社会に復帰させてもらったからには、社会貢献をしていきたいと思うようになりました。私の命を繋げてもらったのは、そのためだと感じているんです。

こうして今、楽しい話ができることに感謝しています。楽しい会話もできずに生活している人も多くいることを知っています。私はこうして話ができるだけで幸せなんです。

でも、時間が許される限り、人のために役立つ研究を行い、その研究成果を臨床現場に還元し、楽しみながら研究を続けていきたいと思っています。

生かされた命を無駄にすることのないよう、研究と社会貢献に励みながら人生を楽しんでいきたいですね。


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