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2022年6月の記事一覧

「詩」海の中の小さな駅 ~終章~

海の中の小さな駅の プラットホームに 真っ白な蒸気が立ち 一人の男が現れる かつて 駅長だっ…

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「詩」海の中の小さな駅 ~第三章~

伸びきった プラットホームを 再び歩き 駅長は車両基地に着く あの日と同じように 汽車はない …

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「詩」海の中の小さな駅 ~第二章~

どこかで響く リュートの音に誘われて 三日月は海に降り 小舟になる 駅長は小舟に乗り 重い夢…

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「詩」海の中の小さな駅 ~第一章~

いつも通り 穏やかな海に 夕日はゆっくりと 沈んでいく 夜空に増えていく 星たちの光が やが…

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「詩」海の中の小さな駅 ~序章~

海の中には 小さな駅がある 駅の宿舎には 一人の駅長が住んでいる 干潮時にも 線路は沈んでい…

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「詩」雨季の怒り

野球場 転々と白球が転がっていく 誰も白球を 追うものはなく 深草の芝にからまり 白球はフェ…

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「詩」海辺の町へ

湿気の漂う駅で 列車は幾つか車両を切り捨て 海辺の小さな町へと 単線の線路を走り出す 方角を失った梅雨空から 力なく陽光は降り 長椅子に置き忘れられた麦わら帽子が いつかの夢のようにぼやけていく 車窓から見えてくる海 降りだした雨が 幾重の波に さらわれていく あの日の記憶を消せないまま 一人 寂れた海辺の町へ 沈黙の列車に揺られながら

「詩」羊飼いの朝

羊飼いの夢の中 牧場から羊たちは消えている 風になびかれ牧草が ただカラカラと鳴っている …

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「詩」雨の日(アクロスティック)

+ 灯りのない森 メランコリックな雨 野苺を摘む少女が 東の空に微笑む + 雨粒 生まれる…

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「詩」五行詩群 工場の月 十一~十五

十一 廃墟になった工場の中で 月はスヤスヤと眠っている 雨はまだ降り続ける 森の中に住む小…

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「詩」五行詩群 工場の月 六~十

六 幾つもの観覧車を乗り継いでも あなたには辿り着けない 最上部から道化師は飛び降りたが …

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「詩」五行詩群 工場の月 一~五

一 工場は忙しなく稼働している 煙突からは黒煙が吐き出され その上で月は 青白く輝いている …

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「詩」入梅

張り裂けそうに 脆い 時の行進は 未だ止まず 一人歩く 老婆の掌に ひやり 滴が零れ落ちる 霧…

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「詩」夜明けへ

眠れない花嫁が 窓辺で 遠くの街の灯の さらに先へ 思いを向け 目を細める時 若い兵士は 荒野に佇み 白々とした 月の下で 国境線の向こうを 眺めている 窓辺の花嫁が 月明りに伏し 束の間の 眠りに着く時 若い兵士は 乾いた風の 鼓動に 耳を澄ませている 目覚めた花嫁が 光差す 窓を開け 風にさらされる時 若い兵士は 荒野に立ち 朝の陽に向かい 密かに敬礼する