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「詩」海の中の小さな駅 ~第二章~

どこかで響く リュートの音に誘われて
三日月は海に降り 小舟になる
駅長は小舟に乗り 重い夢のような夜の海を
オールを漕いで 進んでいく

駅長が辿り着いたのは 深海へと続く階段
階段を下りていくと 駅長は
凍り付いた ミモザの花壇に囲まれた
古い棺が 置かれた部屋に着く

ほんの一瞬 灯台の光が上空から部屋に入る
ミモザは 鮮やかな色を取り戻し
古い棺は開かれる 閃光の中で一人の女が
駅長を見つめ やがて消えていく

何かを思い出したように 駅長がポケットを探ると
駅長の手には古びた 一つの鍵が握られている


※続く

第一章


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