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「詩」五行詩群 工場の月 一~五

工場は忙しなく稼働している
煙突からは黒煙が吐き出され
その上で月は 青白く輝いている
下駄箱に座った少年だけが
沈黙の中で その月を眺めている

幾重に遮光カーテンを引いても
記憶は無意識の中で輝き
死さえそれを消すことは出来ない
残された記憶は魂と呼ばれ
今日も詩人は それを拾い集める

教授はドルコストについて語り
私はアジャセについての思索に耽る
ふと眺めた窓の外
空中庭園で美しい女は
七色の風船を空へと放す

あなたの首筋から
石油備蓄基地の香りがした
防波堤は潮風に吹かれ
あなたは卵を食べていた
私はただ 立ち尽くしていた

オーロラの街の市で
僕はパンと金色のバターを買った
そして僕は安宿へと向かった
人々は祭壇へと向かって歩いていた
鳥たちは夜空で 七色に光っていた


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