「詩」海辺の町へ

湿気の漂う駅で
列車は幾つか車両を切り捨て
海辺の小さな町へと
単線の線路を走り出す

方角を失った梅雨空から
力なく陽光は降り
長椅子に置き忘れられた麦わら帽子が
いつかの夢のようにぼやけていく

車窓から見えてくる海
降りだした雨が
幾重の波に さらわれていく

あの日の記憶を消せないまま
一人 寂れた海辺の町へ
沈黙の列車に揺られながら

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