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「人工コーヒー」が変える未来について想像してみる【MEMO】

珈琲に関するニュース/情報をインプットし、
噛み砕いてアウトプットするマガジン。
「COFFEE_MEMO_365」のマガジン記事です。

2020.6.16

【今回の引用記事】

【概要】
シアトルに本拠を置くスタートアップ企業であるAtomo(アトモ)が、
世界初の人工コーヒーを実験室で発明した。
そして、投資企業のホライズン・ベンチャーズから260万ドルというシード投資(起業前の投資)を受け取り、
早ければ2020年までにこのコーヒーを初めて飲むことができるかもしれない。
Atomoの共同創業者で食品科学者でもある、
ジャレット・ストップフォースは声明で、
「コーヒー業界は革新と変化を遂げる時期に来ている」
「農産物の代替品が受け入れられることは実証されており、今回はこのような活動を我々が情熱を持っているコーヒーで実現したかった」

と述べた。
人工材料を使った料理は、いま熱い注目を集めている。
業界は、従来の生産環境がもたらす環境への負担に対する持続可能な解決策を提示しているのだ。

Atomoのマーケティングの大部分は、
コーヒーの収穫が地球上の自然な生息環境にもたらしてきた被害を懸念する人々にアピールするものとなっている。
コーヒー業界には、
大規模な森林破壊水質汚染がつきものになっており、これらが気候変動の大きな要因となっている。

Atomoの人工コーヒーの原料については、
コーヒー豆の分子を研究し、天然由来で持続可能の原料を使って開発された、
ということ以外は未だにわかっていない。
しかし同社は、
このコーヒーは栄養価や風味、そしてカフェインなど、本物のコーヒーの良いところをすべて再現していると話した。
豆の「改造」によるメリットは、
化合物の操作で苦味などを取り除いたり出来る、改善された風味だと言われている。

一部のコーヒー愛好家は、
このような新種につい愕然としている。
その他の人々は、
豆を使わない未来のコーヒーについて寛容的。
というように、
ネット上での反応は分断している。

気候変動の結果、
世界のコーヒー種の半数以上が絶滅しつつある。
加えてコーヒー業界の大きな問題として、
労働者からの搾取や、コーヒー産出国の過小評価などによる犠牲者が存在している。
人工コーヒーは、
これらの問題すべての解決にはならないかもしれないが、
消費者が問題に対して習慣を変えようとする傾向の高まりを示しているかもしれない。

国際的調査によると、
消費者の80%以上は、企業が環境に配慮することを求めている。
Atomo自身も、
「我々は、コーヒー生産者が引き続き、
現存するプランテーションで栽培を続けていくだろうと考えていますが、
新たな作物を植えるために森林破壊をし続けないでほしいと思っています」と、
業界を人工コーヒーで乗っ取ることではなく、
環境への悪影響の埋め合わせを望んでいる。

ネット上では、
「人工コーヒー市場が業界全体に影響を及ぼすことはないだろう」との指摘や、
人工食品のトレンドが、他の必需品の値段へ影響を心配する声もある。

【MEMO】
とうとう来ましたね。
人工コーヒーですよ。

記事によると、早ければ2020年にも人工コーヒーを飲むことが出来るようになるかもしれない。

今年やん!

とはいえ、
2020年6月現在、よっぽど自分から情報を取りに行かない限りは、今のところ存在感はなし。

ですが個人的にも、
近いうちに人工コーヒーは確実に登場すると思っています。

なので今回の記事では、
人工コーヒーの登場を前提として、
じゃあ自分が珈琲に関わっている上で、
未来にはどんな変化が起こるのか?
という視点で話を進めていきます。

もちろん、今回もあくまで僕の想像です。

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まず、
いま現在の人工コーヒーのクオリティがどのレベルなのかはわかりませんが、
話を進める上で定義しておかないといけません。
僕は、最終的にこんな感じになると思います。

・栄養価や成分はほぼ同じ
・市場にある実際の珈琲の風味は分析・データ化され、再現出来る
・工場で自動的に大量生産される
・飲料としての価格はいまの珈琲と同等程度
・賞味期限はいまの市販飲料と同等程度
・果実や花などのフレーバー付けも可能

結論としては、

「飲料」としてのクオリティは、
成分・風味・保存性・アレンジ性といった全ての領域で、いまの珈琲を圧倒する。

僕はこう見ています。

例えば、
『2020年度の○○農園の○○という品種を、
◻︎◻︎というロースターが焙煎し、
有名バリスタの△△が抽出した珈琲が最高の出来だった。』
としたら、
そのカップの風味は分析・データ化され、
パッケージとして店頭に並びます。

もっと言えば、
ブリュワーズカップ世界大会出場者全てのカップが毎年商品化される。
こんなことも起こり得ますね。

地元の喫茶店レベルでは話にならないぐらい、
味の種類も風味も高い珈琲が市場に出回ります。

では、
世の中の喫茶店やカフェは、
そもそも本来の珈琲は無くなってしまうのか?

というと、
またそれは違うはずです。

ここまで書くと、
本来の珈琲が不利に見えるかもしれませんが、
引用記事にもあるように、
「人工コーヒー市場が業界全体に影響を及ぼすことはないだろう」という指摘もされています。

人工コーヒーと本来の珈琲には棲み分けるポイントがあります。

これ、何だかわかりますか?

「抽出」です。

人工コーヒーには、
「抽出」の過程が抜けています。

人工で造られるのは、
味や風味といった「飲料」としての完成品です。
そのため、人により仕上がりが不安定となる「抽出」は工程から省かれます。
いわば、「人工」と「抽出」は相反します。

ここで問いです。

珈琲の楽しみは「飲む」だけですか?

珈琲は原材料から飲むまでを自宅で完結出来る、数少ない飲み物です。(あとはお茶くらいですかね)

「抽出」を楽しむ人は、
完成品ではなくその過程も楽しむので、
未完成である本来の珈琲を選びます。
美味しかろうが失敗しようが、その体験すら価値なのです。

よく考えたら、
「抽出」って結構神秘的じゃないですか?
豆(=自然)から成分を取り出して飲むって。
生命を感じるというか。

ここが、
人工コーヒーが本質的に、
絶対に再現出来ないポイントであり、
珈琲を楽しむという「目的」に対して、
人がどちらを「手段」として選ぶか。です。

そういえば、
書いてる途中でピッタリの話を思い出しました。

「手段」と「目的」の話です。

詳しくはこっちに書いてます。
良かったら後で読んでみて下さい◎

この場合、
「飲むことを楽しみたい」が「目的」の人は、
「人工コーヒー」が「手段」になります。
「抽出する過程を楽しみたい」が「目的」なら、
「本来の珈琲」が「手段」になります。

例えば、
あたかも本物の豆みたいな人工物を、
わざわざグラインドして、
フィルターにセットして、
いい感じで注湯したら膨らんで、
「抽出」してる感も味わえますよ。
なんてタイプの人工コーヒーが出て来たら、

おい、お前。それは違うぞ!!

と全力でツッコミを入れます。笑
おとなしく完成品作っとけよと。
おれの楽しみまで取んなよと。
「手段」間違ってるぞと。

そして、
抽出を楽しむ層がいるということは、
その珈琲を求める人がいるということ。
では、その珈琲豆を作る人、
つまりロースターや企業は必要になります。

一方、
喫茶店やカフェについてはちょっと変わります。
往来のように店舗で珈琲を抽出、提供する店と、
完成品である人工コーヒーをそのまま出す店

このあたりは、
自分の店のコンセプトや客層が、
一体どちらを求めているのか?
を見極める必要があります。

もっと言えば、
どっちでいくのか?
を明確にした店や顧客作りをしていかないと、
それこそ「手段」「目的」が噛み合わなくなって、破綻してしまいます。

さらには、
お客さんに選択肢が増える分、
自分の店・商品・サービスを選んでもらえる強みが今まで以上に必要になります。
これはロースターや企業も同じです。
それがストーリーなのか、コミュニティなのか、
キャラクターなのか。

いずれにせよ、
棲み分けはありますが、生存競争は激しくなるはずです。
本来の珈琲を扱うポジションで言えるのは、
全体のレベルが上がり、生き残る店の数は減る。
そんな未来になる気がします。

購買に関しては、
いまの缶コーヒーやインスタントコーヒー市場がそのまま人工コーヒー市場にシフトする気がします。

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話をまとめます。

人工コーヒーの登場によって、
珈琲業界は上に書いた感じでガラッと変わっていくと思っています。

珈琲の楽しみかたが、さらに「細分化」します。

珈琲に従事する者として、
その登場が脅威になるか、チャンスになるかは、
珈琲の楽しみかたの本質が捉えられているかで変わります。

ただ、それはネガティブなことではなく、
珈琲全体の表現のバリエーションや楽しみが増えるという点では、
むしろポジティブに捉えることが出来ます。
珈琲の収穫、栽培が地球環境に与えている影響を埋め合わせる手段になることも、業界全体の視点で見れば有益なことです。

大切なのは、
今のうちから「人工コーヒー」が変える未来について想像してみること。

ちなみに僕は、
本来の珈琲が人工コーヒーに駆逐されて市場から姿を消してしまう可能性を考えて、

今のうちにキメ顔でドリップしてる写真を残そうと思います。

数十年後に、
「爺ちゃんはむかしね、珈琲を自分で淹れてたんだよ」と孫にドヤ顔するために。







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