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自分で淹れた珈琲が「美味い」理由【MEMO】

珈琲に関するニュース/情報をインプットし、
噛み砕いてアウトプットするマガジン。
「COFFEE_MEMO_365」のマガジン記事です。

2020.6.2

【今回の引用記事】

【概要】
日曜大工や園芸、野菜作りなどが昔から変わらぬ人気があるように、「自分で作る」ということは大きな満足をもたらすにちがいない。
何かの作成に「自分の手を加える」ことによってそれに愛着が湧き、その価値が高いと評価するようなことは、一種の認知バイアスと言える。
そのようなバイアスは「イケア効果」と呼ばれており、製品に自分で手を加える要素を加えると価値が高まるというのは、マーケティングの常套手段である。(イケアの家具の特徴は、多くの製品に手作りの要素を残していることから)

手作りが価値を生むというイケア効果自体は以前から知られていた。
有名な例として、1940年代のケーキミックスの話がある。
ある企業が、水を混ぜるだけ出来るケーキミックスを売り出したが、売上は芳しくなかった。
そこで同社は、作る人が自分で実物の卵、オイル、牛乳を加えるようにしたケーキミックスを売り出すことにした。
すると、売上は大幅に増加したのである。
往来の商品に少し手間を加えただけで、消費者(多くは主婦)は「自分が作った」という感覚をもつことができ、同じようなインスタント・ケーキであっても完成品に比べてより価値が高いと思うようになったのである。

この「イケア効果」の名付け親でもあるアメリカの経済行動学者たちは、いくつかの実験を通してこの効果が起こるかを正確に確かめている。
実験内容は【概要】では割愛するが、結果として得られたことは、

・人は自分が手間をかけたものは、ただ与えられたものよりも高く評価する。
・自分が手間をかけたものは、完成品の質に関わらず、専門家の作品に対する他者の評価と同等に近い評価をする。
・最終的に他者が完成させたものであっても、その工程に自分が関わっていれば、ただ与えられたものよりも高く評価する。

このような「イケア効果」は、
先ほどのケーキミックスの例のようにマーケティング手法として応用されることが多く、
また職場における仕事に対しても同じような効果が期待出来るため、働き手のモチベーション管理の分野においても注目されている。

【MEMO】
これ、
家で珈琲の抽出を始めようと思って、
器具を一式買い揃えて、
何かしらのレシピを探して、
見よう見まねでドリップして、
恐る恐る飲んでみたら、

「あれっ、めっちゃ美味いやん、、!!」

ってなるときのやつですね。

もっと多くの人が経験してるようなものなら、
例えば、
・学校の調理実習で作ったカレーライス
・文化祭でみんなで創り上げた劇
・自分の子供が描いてくれた似顔絵

辺りでしょうか。

たぶん例を挙げれば「そんな経験ある!」と思う事例はたくさんありますが、この現象に「イケア効果」という立派な名前あったとは初めて知りました。

「あるある」的な事例から、ビジネス的にマーケティングとして使われる手法まで、
「イケア効果」には色んな側面がありますが、
今回は珈琲にこの効果を取り入れたらどうなるかをまとめてみます。

「イケア効果」にはネガティブに働く場面とポジティブに働く場面が存在します。
もう少し具体的にお話しすると、

提供する側の「イケア効果」→  ネガティブ
提供される側の「イケア効果」→  ポジティブ

となります。
順番にまとめます。

「イケア効果」のネガティブ面とは

提供する側が、自分の提供商品に対して「イケア効果」を感じてしまうことです。

珈琲とは、
高品質な豆であっても、飲む側からすると口に合わないケースもあれば、逆に品質が低くても美味しいと感じられるケースもあります。
さらに言うと、豆自体が高品質であっても、焙煎アプローチの選択や抽出技術によって、抽出液にしたときの仕上がりは変わってきます。
つまり、提供する側とされる側に、価値のギャップが生まれやすいのです。

ここで提供する側が絶対に犯してはならないミスが、商品に対する自分の情熱やこだわりを価値に乗せてしまうということです。
・パッケージや器にこだわった
・手間暇かけて綿密なハンドピックを行った
・飲み方など、ハウスルール的なものがある
・特殊な抽出なので提供に10分かかる

など、
この辺りにかける時間や手間は、素晴らしいことであり結果として商品のクオリティを上げるかもしれません。

が、

これらをそのまま価値として商品に乗せてしまって、お客様のお金や時間を強引に奪ってしまってはいないか。

これは耳が痛い話かもしれないが、
それを必要としないお客様にとっては、その価値は普通の珈琲に付けられた得体の知れない価値だ。

この差に違和感を感じてしまうと、
残念ながらその店はお客様の二度目の選択肢から消えてしまいます。
そしてそこに気が付かない提供側は、
「なぜこの商品の価値を受け入れてもらえないんだ」と悲観し、自らモチベーションを下げてしまいます。

提供する側が「イケア効果」を持ってしまうと、ビジネスは失敗します。

「イケア効果」のポジティブ面とは

提供される側に、与えた提供商品に対して「イケア効果」を感じてもらうことです。

これはケーキミックスの例にもあったように、
商品をお客様が自分の手を加える余白を残すように設計してあげることです。

商品の提供の仕方を変えるだけで出来るような、簡単な事例を挙げると、
・フレンチプレスと砂時計を提供し、時間が来たらお客様自身でプレスしてもらう。
・氷の入ったグラスと珈琲を液を別で提供し、お客様自身に急冷してもらう。

など、仕上げの工程を任せる。

商品レベルだと、参加型イベントの形に落とし込んで、
・珈琲の抽出セミナーを兼ねてドリップを実践してもらい、参加者同士で飲み比べをさせるイベント
・カッピング体験で数種類の豆を評価し、最終的に自分が選んだ好みの豆を提供するイベント

など、体験してもらう。

お客様に体験という価値を感じてもらえるような商品や提供方法を設計します。
ここでお客様が手を加えたことで感じる、
自分で注いだ、淹れた、選んだ、参加した、という体験が、目に見えないお客様だけの価値を上げます。

使う豆の品質などを上げることなく、
上手く集客すれば、限られた時間で効率よく売上げを上げることも出来ます。

このように「イケア効果」は、
誰でも経験したことがあるような身近な現象であり、そのため良くも悪くも効果が顕著です。

普段よりもちょっと意識してみて。

普段自分が使っているサービス、選んでいる商品、企画を成功させるあの先輩、、、

実はその中に「イケア効果」が隠れていることに気が付くかもしれません。

ちなみにヒントをひとつだけ、

noteやその他SNSで渾身の記事を投稿しているのに、なんか思ったより反応が無いなぁ、、、

と感じているあなた。そして僕。

そのもやもや、「イケア効果」のネガティブな部分の事例ですよ(小声)


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