パートナーと愛
それは唐突に起こった。
突然、嫁様が消えたのだ。
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運命のいたずらを感じたことがあるだろうか。
私はある。何度か。
今日はそんな少しオカルトめいた話である。
あれは嫁様と結婚してしばらくのこと。
毎日がバラ色のウフフアハハな日々を
これでもかと堪能してたある日のこと。
その日、嫁様は仕事が遅く終わる日だった。
いつもなら連絡が来るのに、今日は来ない。
突然会議でも入ったのだろうか?
しかし、予定時間より1時間を過ぎても
連絡も何もない。はて、どうしたのだ?
嫁様の職場に電話してみる。すると
「〇〇さんはもう帰りましたよ」
???何が起こったのだ???
まず嫁様に連絡がつかない。
LINEも電話も繋がらない。
何度試しても既読もつかない。
このとき私の頭に浮かんだのは
(もしや、私に愛想を尽かして家出?)
嫁様と仲良しな嫁のお姉さんに連絡をするも
全く何も聞いていない、私も探してみる!と
心配して捜索を手伝ってくれた。
おそらく、家出ではないと思う…じゃあ何だ?
次に私の頭に浮かんだのは…事故。
(なにかしらの事故に巻き込まれたのでは…)
こうしているいまにも
警察や病院から電話が来るのではないか…
背筋が凍る。こんな想像はしたくない。
はあはあはあ
呼吸って、こういうときに荒くなるんだ
一度、車で自宅へ向かう。
もしかして帰って来ているのでは…
が、ダメ。いない。不在。どこに行ったのだ?
ハンドルを強く握りながら
ふと、妙な想像をする。
やっぱりこれは夢だったのかと。
私と相性抜群な女性が目の前に現れて
いつの間にやら付き合って、結婚して。
そして楽しい結婚生活をおくるなんて
そんなウマい話なんかなかったのかと。
そうだ、考えれば考えるほど話が出来すぎだ。
そんなマンガみたいな展開、あるわけがない。
そういえば付き合ってしばらくしたころ
嫁様のほっぺをつねりながら
何度も問うていたじゃないか
「君さぁ、本当に現実の女?」って。
ほっぺつねるんなら自分のをつねりなさいと
何度も怒られたが、あれもやはり幻なのか。
いや、幻のほうがまだましか。
事故に巻き込まれていなければ何でもいい。
ケガも、痛い思いも、しないでいてほしい。
私に愛想を尽かして家出してくれたほうがいい。
頼むから無事でいてほしい。はあはあはあ
ああ、もうなんか、どうしたら…
そこに着信が入る。嫁様から!
一切無駄な動きをせず電話に出る。
「もしもし!??無事!?無事なの!?」
・・・
かくして嫁様は戻ってきた。私の世界に。
一体全体、嫁様に何があったのかというと
嫁様が会社を出た後、私に連絡をしようとしたが
謎の障害でスマホが使用不能状態に陥っていた。
私の電話番号はスマホが使えないと分からない。
さてどうしようかとひとしきり悩んだ嫁様は
とりあえず夫くんが待っているかもしれない
場所めがけて移動したとのこと。
しかし、私がいつも待つ場所は3~4箇所ある。
まあ、要するに、私達はすれ違いまくったのだ。
数時間彷徨った嫁様は「埒が明かない」と
電車で自宅へ帰ることを決意。
自宅に控えてあった私の電話番号に連絡して
無事合流できたという話だ。
終わってみるとなるほど笑い話である。
でも、私は結構深刻な話だと思っている。
これは感覚の話なので理解できなくて当然だけど
あの時、あの時間、嫁様は私の世界から消えた。
私がなにかしらの行動を起こさなければずっと
嫁様は消えたままだった…
そんな気がしてならないのだ。
・・・
あのとき
嫁様が居ない世界をリアルに想像した。
恐ろしかった。マジでつまらなかった。
なにもかもがくだらなくなった。
仕事を辞めてどこか遠くへ行こうと思った。
あっ、
私はこんなにも、嫁様のことが
大きな存在になっていたのか。
愕然とした。でももう遅いと思った。
だって、もう、居ないんでしょ、
…からの嫁様復活である。
感情ジェットコースターとはこのことか。
絶望から安堵するとマジで膝から崩れ落ちる。
良かった。ほんとうによかった。よかった。
自宅で嫁様の背骨が曲がるくらいハグをした。
この件ではっきりわかったことがある。
私がこの世で一番愛してるのは嫁様だ。
もちろんこれは一方的な私の愛。
最悪、
嫁様が私を愛してくれなくたっていい。
愛というのは生きる力だ。方向性だ。光だ。
大事にしたいし、一緒に歩きたいと思うもの。
もうあんな思いをするのはゴメンだけど
心の底からの絶望を「疑似体験」できて
ちょっとだけ良かったかなって思っている。
この記事は「#仲良し夫婦サークル」の
企画記事です。