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『1917 命をかけた伝令』で刮目すべき1つのポイント

第92回アカデミー賞では、10部門にノミネートされ、撮影賞、視覚効果賞、録音賞の3部門を獲得した『1917 命をかけた伝令』。
映画館で見逃していたので、ようやくブルーレイで拝見しました。

あらすじ
第一次世界大戦真っ只中の1917年のある朝、若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクにひとつの重要な任務が命じられる。それは一触即発の最前線にいる1600人の味方に、明朝までに作戦中止の命令を届けること。
進行する先には罠が張り巡らされており、さらに1600人の中にはブレイクの兄も配属されていたのだ。
戦場を駆け抜け、この伝令が間に合わなければ、兄を含めた味方兵士全員が命を落とし、イギリスは戦いに敗北することになる―
刻々とタイムリミットが迫る中、2人の危険かつ困難なミッションが始まる・・・。
(Filmarks映画情報)

前評判に違わず……というより、既に評価が定まっておりますね、ワンカット風に撮影された映像がこんなに没入感あるとは思わなかったです。
映画館で観たら、音響と相まって凄まじい臨場感があったことでしょう。
自宅のテレビで観ていても怖くなるほどでしたので。

撮影方法などは、メイキング映像などでも解説されています。
また映像自体も散々語りつくされていると思いますので、脚本的にとても感心した点をご紹介します。


~~~以下、ネタバレ含みます~~~


ハリウッドの脚本指南書で「ミッド・ポイント」という考え方があります。
物語のちょうど中盤で起こる出来事です。
序盤から主人公は、何らかの目的を達成するために頑張りを続けます。
しかし、中盤のミッド・ポイントの時点で、
・思いもよらぬ挫折
・危機的な状況
・ひとまずの大成功
……などが起こります。

『ソーシャル・ネットワーク』でも、ミッド・ポイントで登場したショーン・パーカーが主人公二人の関係性を壊します。

ミッド・ポイントは、いわば物語の「ギアチェンジ」とも言うべきものです。

『1917 命をかけた伝令』では、前線にいる部隊へ「作戦中止」の情報を伝えるように、将軍から下士官のスコフィールドとブレイクが命令を受けます。

味方の運命は、たった二人の若者に託されました。
前線に兄がいるブレイクは、伝令を伝える旅の中でも頼もしい存在です。
一方、スコフィールドの方は、表情も弱々しく、有刺鉄線で不用意に手を切ってしまっり、何だか頼りないです。

更に塹壕の中で、生き埋めになったりもしてしまいます。

都度ブレイクが助ける形で、物語は進行します。
バディー・ムービーとも言えるでしょう。

しかし、ミッド・ポイントで転機が訪れます。

あっけなく、ブレイクが命を落としてしまうのです。
残されたスコフィールドは、一人で大丈夫なのでしょうか。
危機的状況です。

ここで物語の「ギア」が更に変わります。

危機であることは間違いない。
けれど、死んだブレイクの遺志を、前線にいる彼の兄に伝えるという目的も増えたのです。

単なる軍の伝令だったら、それほど物語に感情移入はできなかったとは思います。
「遠い国の遠い昔の物語」であるので。

しかし、兄弟愛のような誰でも感情移入できる要素が、このミッド・ポイントで出てきたのは非常に大きいです。

これにより、「遠い国の遠い昔の物語」であったものが、我々にとっても身近な自分事となるのです。

ミッド・ポイントを経たスコフィールドは、序盤と違って、見違えるような顔付きになり、目的を達成します。

『1917 命をかけた伝令』は、撮影技術などが注目されがちですが、脚本的に見ても素晴らしかったですね!

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