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『ルポ トランプ王国』から見えてくる現代のアメリカ

『ルポ トランプ王国―もう一つのアメリカを行く』(金成隆一)

『ルポ トランプ王国2:ラストベルト再訪』(金成隆一)

いよいよ2020年11月に共和党VS民主党の大統領選挙が行われますが、4年半で1005人に取材した『ルポ トランプ王国』(金成隆一)のシリーズを読むと、今まで大新聞の報道で見えてこなかったアメリカが姿を現します。

トランプが勝った4年前の大統領選挙は、共和党VS民主党ではなかったのです。
トランプVSエスタブリッシュメントの戦いでした。

シリーズ1巻目のエピローグから、トランプを支持したアメリカ人の言葉を引用します。

「大陸の真ん中に暮らすオレたちが本物のアメリカ人だ。エスタブリッシュメントは外国には旅行するくせに、ここには来ない。「つまらない」「何もないから行きたくない」と言う。真ん中の暮らしになんか興味なしってことだ。エスタブリッシュメントは、自分たちがオレたちより賢いと思っているが、現実を知らないのは、こいつらの方だ」
「テレビに映るカリフォルニア、ニューヨーク、ワシントンは、オレたちとは違う。あれは偽のアメリカだ。ルイ・ヴィトンのカバン? サックス・フィフス・アベニュー(ニューヨークの高級百貨店)でお買い物? そんなのアメリカじゃねえ。みんなが映画で見ているのはニューヨークやロサンゼルスばかり、オレたちのことなんて誰も見ない。ここが本物のアメリカだ、バカ野郎!」

痛切な言葉であると同時に、どこか痛快感もあります。
WWEのプロレスラーが一気にまくし立てる口上にも似ています。w

トランプもプロレスラーのように、共和党の予備選挙では名門ブッシュ家らのエスタブリッシュメントをなぎ倒し、大統領選挙では民主党のエスタブリッシュメントの代表でもあるヒラリーにも勝ち大統領に就任します。
ヒラリーはゴールドマンサックスから、多額の講演費をもらったりしていたのが、反感を買ったりもしました。
おまけにヒラリーは、真意はさておき、トランプ支持者の半分を「惨めな人たち」と呼んだとされました。

こうして、事前の投票予測にも出てこないサイレントマジョリティの怒りが徐々に爆発していった訳です。
トランプ支持と表立っては言いにくいけど、実は支持をしている人が増えたのです。

これが「トランプ王国」でもあります。

しかし、今年の民主党の大統領候補は、セレブなヒラリーではなく、人生色々苦労しているバイデンです。
融和を信条とするバイデンは、一部の共和党の議員からも支持されるほど人望が厚いです。
かといって、ヒラリーほど政治家としてアクも強くないので、トランプは苦戦するだろうなと思ったりもしています。

いずれにせよ、11月の大統領選挙が楽しみです。

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