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【質問】落ち込む家族をどう支える? #1 セラピストの視点から

先日、ある方から心のバランスを失っているご家族への対応についてのご質問をいただきました。

 メールでのカウンセリングや個人的な相談は受け付けていないのですが、似たような悩みをお持ちの方も多かったので、今回はご本人様の承諾の上で、noteでお答えさせていただくことにしました。

ご質問はこんな感じです(内容/文面など一部編集しています)

夫は前の会社をやめてから、もう1年以上、家にいます。私はうつを疑っていますが、病院には行っていません。

昼夜逆転のような生活をしているので、朝はおこして体内時計のスイッチが入るよう野菜ジュースを差し入れ、夜は時々着替えや歯ブラシを渡して入浴や歯磨きを勧めています。が、私は仕事に出かけてしまうので朝ジュースを飲んでるのかもわかりません。入浴やは歯磨きは勧めればやるのですが、勧めないとやらない状況です。
こうしたサポートを続けていってもいいのでしょうか?

1.大事なのは相手の気持ち。もっと大事なのは自分の気持ち

さて、このご質問、なかなか悩ましいです。

全くの推測ですが、あなたはサポートを続けることにちょっと疲れていらっしゃるのかなと思います。ご主人様がサポートを歓迎してくれているのかわからなかったり、サポートを続けていても望むような改善がみられなかったりしているのではないのかしら。

また、「うつを疑っている」とのことなので、口数が少なく表情も乏しい状態なのかと推察しています。

で、その前提でお話を勧めますが、まず大切なのはご主人様のお気持ちです。たとえ、口数が少なく、表情が乏しい状態であったとしても、一旦はご本人に尋ねてみることです。「サポートを続けた方がいいか」を尋ねる相手は、私ではなくて、ご本人ですね。

が、尋ねる前に準備しておくことがあります。
あなた自身が、どういう気持ちでサポートをしているか、ということです。

「うつ」のように気持ちが落ち込んでる状態のときは、「どうしたい?」と尋ねても答えがかえってこないことがあります。

私たちは無意識のうちに「非言語コミュニケーション」をしているので、無言だけど一瞬表情が緩んだ...など多少の推測が成立することもあります。
が、「うつ」のときは表情が乏しいので、非言語コミュニケーションも難しいときも多いでしょう。

また、長い間サポートを受けている時には感謝しつつも「迷惑をかけている」という罪悪感が強くなりがちです。罪悪感の大きさに耐えかねて、断ってしまうということもそれなりに見受けられます。

言い換えれば、ご本人の意向がとても見えにくい状況だと思われるのです。

それだけに、あなた自身が「どうありたいか」をきちんと自覚しておくことが大切になります。なぜなら、ご主人様の在り方に対して「ブレの少ない落ち着いた状態」でいられるからです。

2. 今の相手を受け容れている?

ここで大切なのは、何を求めてご主人に朝のジュースをあげたり、入浴や歯磨きの支度をしているのか、ということです。

私たちは自分のなかに不安感や不満があるとき、そのネガティブ感を抱え続けることを嫌って周りの状況を変えたがる、という無意識の癖があります。

言葉を変えれば、無意識のうちに相手に幸せにしてもらおうとしている、ということです。

多くの場合、家族が患っている状態はなかなかつらいものです。患っている人へのケアに時間や労力、精神的エネルギーを注ぐ必要があります。

もちろんケアをすること自体は純粋に愛から生まれている行為でしょう。が、ときに自分の中のネガティブ感を消すために相手に健康になってほしいといううっすらとした願いを持っていることもあるのです。

ただ、こうした「自分のネガティブ感を消すためのサポート」には、どうしても相手をコントロールするエネルギーが伴います。

自覚しておいた方がいいのは、この「自分のネガティブ感を消すための相手へのコントロールのエネルギー」があるかどうか、ということです。

言い換えれば、いまのあるがままのご主人の姿をあなたがどれだけ受け容れているかということです。

「見ていられない」「なるべくはやく元気になってほしい」といった思いに焦りや無力感のようなものが走っているようであれば、コントロールのエネルギーも強くなっているかもしれません。

3. 苦しい時ほど「ありのままの今の自分」を認めてほしい

さて、ご主人の目線で考えてみましょう。

私たちは基本的に相手にコントロールされることを望みません。相手からのコントロール、それは今の状態の自分の否定を意味するからです。
私たちはどんな状態であっても、今の自分を肯定されること、受け容れられるを心の深いところで望んでいます。

心身が弱っている時は、相手と比較して自分のことを無意識のうちに低く/小さく/弱く思っていることが多いものです。そういったときは自ずから敏感になります。

そして苦しい時ほど、私たちは「ありのままの今の自分」を受け容れてほしいと願っているものです。

あなたが自覚することが難しいほどの微細なコントロールのエネルギーをご主人様は感じ取って息苦しく感じているかもしれません。また、たとえあなた自身がそのつもりはなくても、「今の自分がダメだから、変わらなきゃダメだ」と余計にプレッシャーを感じがちでしょう。

もし、あなたがご主人に「変わってほしい」というコントロールのエネルギーを持っていたとしても、それはやむを得ないことです。実際、日々のサポートは大変だと思いますし、あなたも楽になりたいですよね。

また、私は「サポートをやめたほうがいい」といっているわけではありません。

ただあなたが「彼(ご主人)に変わってほしい」「彼の現在の状態受け容れにくい」ということを「自覚」しており、その気持ちを正直に認めればご主人様への対応が大きく変わると思います。

ご主人様があなたのサポートに対して「Yes」「No」「わからない(答えない)」いずれの答えをだしたとしても、あなたがご自身に自分の望みを自覚しており自分自身に誠実であれば十分です。それができれば、ご主人様を無自覚にコントロールすることなく、あなた自身の気持ちを率直に伝えることができるでしょう。

4. まず自分をねぎらおう ー 支えから伴走者へ

一番厄介なのは、ご主人様に変わってほしいという自覚がないままでいることです。なぜならあなた自身の幸せの責任を無意識にご主人様に委ねてしまっているからです。

わかりやすくいえば「彼がよくなってくれれば私は幸せになるの」ですね。あなたの幸せの鍵をご主人様が持っていることになってしまっている。

ご主人様がサポートを望んでくれれば、まだ幸せの責任をとってくれたことになるから心は多少穏やかになるかもしれません。

が、ご主人様があなたからのサポートを望まない時、あなたのなかの不安感を埋めてくれるものはなくなってしまいます。ちょっとキツい言い方かもしれませんが、心の中でご主人様(の現状)の「被害者/犠牲者」になってしまうということです。

被害者/犠牲者でいたくないので、ますますご主人様をコントロールしたくなって(改善したくなって)関係性が悪化することもあるでしょう。また、あなた自身の心を平和にするために「よりいいもの」をもがくようにして探し続けることもあるかもしれません。

それではご主人様も、あなたも二人で苦しみの道まっしぐらになります。

もちろん、自分の大切な人には落ち込んでいるより幸せでいてほしいもの。
けれども、自分の幸せを、相手の幸せに委ねてしまっては、相手も大変ですよね。

なので、もしご主人様を「より健康へ」とコントロールしたくなっていたら、「本当は、不安だったね」「本当は、いろいろときつかったね」とあなた自身をねぎらい、ご自分の不安と疲れに心から正直になることからスタートするといいと思うのです。

自分の不安や疲れに正直になったとき、ご主人様のサポートは、あなたの「見えなかった心の荷物」ではなくなります。一人でずいぶんと背負い込んでいたことに気づくかもしれません。

今まで自分1人が「彼を支える」という気持ちでサポートしていたかもしれませんね。これからは自分に不安を許してあげましょう。あなたは彼の「仲間」 。隣で一緒にあゆむ「伴走者」であればいいのです。

--- 🍀 ---

さて、ここまでは「心得」のヒントです。
長くなりそうなので伝え方のヒントについては、次回書きますね。

●今日の一言

そのサポート、今の相手を受け容れてますか?
もし、そうでなかったとしたら
最初にいたわるのは、あなた自身です。

今日も読んでくださってありがとうございます。
自分にやさしくお過ごしください。

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