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シニア食堂、高齢者独居、健康寿命|ココカリ心理学コラム

私の専門は高齢者心理学である。ゆこゆこ社でシニアマーケットに出会い、以降この市場に魅了されている。面白いのだ。一筋縄ではいかないところなんかは、つまり一生やっても飽きないということで、多分これからも高齢者を対象に臨床していくことになる。

大学院では死生観に関する研究を行い、修了後は大学病院や心療内科で認知機能に関する心理検査を修練し、特養の職員相談や、高齢者デイケアの運営も行ってきた。今年はデイケアで旅行部を発足した。

いろいろやってきたが、高齢者臨床でもうひとつ実現させたいことがある。子ども食堂の高齢者版、シニア食堂である。独居高齢者のQOLを高めていきたい。

内閣府健康長寿ネットの調査によると、昨今の65歳以上の方の独居率は3割ほど。デイケアの参加メンバーをみても確かにそれくらいの数字だ。独居高齢者数は今後ますます増えていく。独居のリスクは孤立に至りやすいこと。社会につながっていること、高齢者は特に場所でつながっていること、これがいかにQOLに直結するかを、デイケア運営を通じて感じている。

心療内科が運営する当院のデイケアは、医療保険か介護保険で参加が可能なので、逆に言うと完全健康体の方は参加できない。翻ってシニア食堂は、独居であれば、伴侶がいない方であれば、どなたでも参加できる。

シニア食堂は、先行するモデルケースが沢山あるのでとても参考になる。会社員を経験した心理屋が運営するなら、ここにもうひと味加えたいと思っているが、どんなスパイスがいいのかにはまだ至ってない。もう少しちゃんと考えねば。

令和4年に行われた東京都民による事業提案制度で「TOKYOシニア食堂推進事業」が採択された。社会的な機運も追い風のようである。

https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/zaisei/teian/5tomin/tono4.pdf

健康寿命への関心が高まっている。単なる寿命だけではなく質の部分、つまりいかに健康的に生活できる期間を延ばすか、という問題。厚労省発表の数値でいえば、2001年から2010年の9年間で健康寿命は、男性は69.40年から70.42年へ1.02年延び、女性は72.65年から73.62年へ0.97年延びている。いい傾向ではある。

デイケア運営で、健康状態が低下して当院からリハビリ施設へ転院したり、家で転倒して大腿骨骨折で入院しそのまま当院から退所した方々がいた。人が人である以上、老化には抗えないし、死は避けられない。けど、可能な限りは健康的に生きていきたい。これは万人の願い。この想いに心理屋として貢献していくつもりだ。