見出し画像

見習期間が終了して、本格局面へ突入する|ココカリ心理学コラム

「いいかい、怖かったら怖いほど、そこに飛び込むんだ。やってごらん。」岡本太郎

35歳で産業カウンセラー、翌年にキャリアコンサルタントの資格を取得し、会社の人事部でメンタルヘルスや人のこころに関わる仕事に就いてきた。心理の専門性を鋭くするために、40歳で退社して大学院へ進学した。在院中から心理カウンセラーとして世に立ち、現場と教室で技術と姿勢を研鑽した。修了後、念願だった臨床心理士資格を取得し、9つの現場で経験を積みながら、現在45歳になった。

2022年3月から都内の心療内科に常勤することになった。これにより、10年にわたる見習期間が終了して、私の臨床が本格局面へ突入する。

夢がある。高齢者領域の心理屋として、医療福祉の領域で、わかりやすく言えば認知症カフェのような、独居や老老介護の高齢者が集い支え合う居場所を創りたいのだ。50歳手前でNPO法人を立ち上げて…と漠然としたスケジュールを想定していたが、そこの院長先生が同じベクトルを持った人で、「それならウチの資材を使って一緒にやってみないか」と誘ってくれたのだ。

正直あと一年くらいは今のままでもよかった。医療・福祉・産業領域の複数施設で、20〜90歳代までの利用者に対して様々な技法を駆使して心理支援をする。自分としては心理職としての幅を広げている感覚があった。パートタイムでフリーランスな働き方は、保証がないので体を壊したら一発アウトな状況ではあるものの、お金だって生活できるくらい稼げるようになったし、ある種の気楽さはあるし、気分転換しながら日々仕事ができる環境が結構気に入っていた。

常勤には専門性を固定する窮屈さが生じる。それ相当の責任が乗ってくるし、好きなことだけしてる訳にもいかなくなる。フリーランスにも常勤にも「ふたつよいこと、さてないものよ(河合隼雄)」ということでメリデメあったのだが、天秤にかけてもこんな好条件なオファーはこの先ないだろう、渡りに船とはこのことだなと、腹を据えてお願いすることにした。

私は社会人よちよち歩きの20代をリクルートで過ごしたため、目標設定をWill - Can - Mustで考えるクセが出来上がってしまった。ローレンツの刻印づけである。臨界期を遥かに超えたので、もう修正はほぼ不可能である。

【Must】まずは、改定する高齢者デイケアの運用を軌道に乗せる。成人対象の心理検査や心理カウンセリングの腕を磨き続ける。【Can】純粋培養で育った心理士ではできないような俗社会の渉外仕事などをこなす。【Will】そして、認知症を患った人やその家族が医療福祉のフルサポートの元で楽しめる温泉旅行を実施する。こども食堂の高齢者版、主に独居高齢者や老老介護の夫婦が集える100歳食堂をつくる。

やりたいことが出来る環境は、出来なかった時に言い訳ができない怖さがある。格好いい絵空事ばかり言っているけど、実力が伴っていないのは自覚している。先日、院長先生には「スーパーヴィジョンを受けなさい。臨床心理士として一皮剥けてください」とアドバイスをいただいた。今の自分で、はたして夢を叶えられるのだろうか。ふと不安になった時に、冒頭の岡本太郎の言葉を思い出したのだ。

そうだ、飛び込むんだ。飛び込んで、楽しむんだ。楽しみながらやれば、必ず道は開ける。今までの人生経験でそれは実証済みじゃないか。仮に失敗するとしても、やらない後悔より、やって後悔した方が納得がいくはずだ。

この出会いに感謝し、己の未熟さから目を逸らさずに、今できることに全力を注いで取り組んでみようと考えている。