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悲しみよ、こんにちは



感情は皮膚に出る

熱い 痒い 痛い

身体の奥底に閉じ込められた生モノが

うねりもがいて暴れたら

最後腐って皮膚から出てくるという




最初は小さかった点々が

いつの間にか大きな穴になって

鏡の向こうには

穴ぼこだらけの奇妙な身体

恐る恐る覗き込んだら

穴の中潜むなにかと目が合った

それはドロドロと爛れたいつかの名残

置き去りにされたわたしの感情だった




身体が熱くて夜も眠れない

永遠のような

眠れぬ夜を何度も過ごす

苦しい 苦しい 苦しい

行き場をなくした火の玉が

身体中をのたうちまわる

もう見て見ぬ振りはできぬ

火の玉よ

あなたは何を叫んでる

わかったよ もう逃げない

だからわたしに教えておくれ

あきらめ明け渡した身体に

今初めて染みわたる感覚情報

気付いてと暴れる悲しみが

内側から皮膚を燃やし尽くそうとしていた




ボリボリと掻きむしる音が鳴り響く

ガサガサと渇いた皮膚から汁が出る

触れられなかった寂しさ

流せなかった滴が

次から次へと溢れ出る

掻きむしる手でもいいから

ここに触れてと呻き泣く

もしかしたら

あの汁は安堵の膿だったのかもしれない




傷跡がヒリヒリヒリときしめいて

痛い痛いとうずくまる赤子のように

何度も声に出し助けを乞う

あのときいえなかった痛みは

慰めの子守唄のように空(くう)に響く




抑圧された感情は皮膚に出る

熱い 痒い 痛い

身体の奥底に封じ込められた記憶が

うねりもがき暴れて永い旅の果て

いったい何十年彷徨いつづけただろうか

そうしてやっと出逢えた

その手を今初めて握る

あぁ こんなにも温かかったのか

わたしの悲しみよ

こんにちは



 


【哀しみも、ひとつの花】

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尊い、生命の煌き。






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