短期入所と包括ケア病棟
その日は月曜日だった。
今日退院するから、短期入所を調整してくれ……という無茶ぶりをされるとその日の仕事は何もできなくなる。
できなくなるとは言うものの、通常業務と並行しつつやっていかなくてはいけないから鬼のように忙しくなるのだ。
まずは予定していた訪問などの仕事をこなす。
時間が空いたところで短期入所の施設に電話し、本日中に利用できないかを聞く。
家族の希望としては短期入所してそのままどこかの施設へ行くということは今のところ考えてはいない。
ただ入院後の状況の悪化を、少しでも良くしてから自宅に帰したいというのが希望であるから、たとえ短期入所が調整できたところで、そこに入りっぱなしになってしまえば、状況は変わらないままの日々を過ごさなければならない。
つまり……
リハビリしないといけないのだ。
しかも通所介護でやっているような身体を動かすだけのリハビリではなく、理学療法士が行う専門的な評価を伴うリハビリが必要なのである。
それを行えるのは現時点では包括ケア病棟でしかない。
病院に最大60日間入院して様子を見るのである。
そしてリハビリの経過で、自宅に帰ることができるのか、それとも施設が良いのかを考える。
方向としてはこんなところである。
そもそも……
包括ケア病棟への入院というのは、もともと入院していた病院から相談員が連絡を取って調整し転院を決めるものであり、在宅のケアマネジャーから入院をお願いするケースはごくまれである。
診療情報提供書と言って、医師からの診療情報を病院から病院に連携しなければならないのだから、ケアマネジャーがやるよりも病院の退院支援の相談員や看護師が動いた方が早いことは明白だろう。
こちらとしては入院時に退院の時のことも考えて連携しているのである。
『今回の入院は元から短い期間と決まっていましたのでそういう調整はできないことになっているんです』
入院先の退院支援の看護師はボクにそう言った。
いや……何言ってるの?
じゃあ入院時の連携はなんだったわけ?
在宅での生活は厳しいとご家族は考えておられますので、そのあたりの話をご家族と話して必要な調整をお願いしますって言ったよね?
あんた、何聞いてたの??
こんなことを書くと怒られるかもしれないが病院という場所は本当に融通が利かないから一度『退院』と言い出すと、てこでも覆さない。
そのことはボク自身、今までのケアマネジャーの業務でよく理解しているつもりだから、こんなところで押し問答をしても時間の無駄だと思った。
『分かりました。こちらでご家族とお話して短期入所を手配しますね』
腹を括れば、どうにかなる。
そう思って電話を切ったのだけど……
このエピソードにはまだ続きがあるのだ。
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