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京風うつくし図鑑-2 [京のゆうれい話]

京都は国内外の観光地として人気を集めている。けれど本気で京都を見ようとすると、あまりにも多くの観光資源があり、どこから見ていけばいいかわからない。京都に長く住んでいる人たちでさえ、全体像をとらえられない。観光ガイドはある特定の地域に特化したものだ。全部をわかることなどできようもない。それが京都のいいところでもある。古いもの、新しいもの、愛らしいものや摩訶不思議なものが同居している。京都には神社仏閣が数えきれないほどあるのは、ご存じのとおりである。古い都には不思議な物語や言い伝えが存在する。せっかく京都においでになるならば、京都の不思議話しをたどって散歩するのも、思い出作りになるかもしれない。ここでとり上げる逸話や幽霊話でさえ、京都では季節感や歴史、伝統、しきたりなどにふれることもある。京都観光におでましの際には、こういう京の町に伝わる物語を思いながら、おいでいただくのも一興とか思う。

京のゆうれい話。歴史に翻弄されたあわれな 人間の物語




六道の辻の六道珍皇寺

「あの世」と「この世の」の境目、六道の辻の六道珍皇寺

六道の辻は、京都市東山区にある場所。古くから「あの世」と「この世」の境目とされてきた。六道珍皇寺はその近くにあるお寺で、特にお盆の時期になると、この世に帰ってくる死者たちを迎えるために開かれる「迎え鐘」が有名である。この鐘をつくことで、あの世からこの世に戻ってくる死者たちの道案内をすると言われている。

平安京の遺跡

嵯峨野、平安京の遺跡に伝わる幽霊話は「落ち武者」の無念

嵯峨野は、平安時代に貴族たちが別荘を構えた場所として知られているが、その地にはまた、多くの幽霊話も伝わっている。特に有名なのは、「落武者の霊」。戦国時代にはこの地に多くの戦があり、多くの武士が亡くなった。いまも落武者の霊がさまよっているといわれ、京の人はそうした悲しい物語を伝えてきた。

清水寺にそそぐ音羽の滝

江戸時代に清水寺、音羽の滝で入水自殺をした女性の霊を慰める目的で、人々は供養を続けてきた

清水寺は京都を代表する観光名所、世界遺産としても知られ、清水寺は霊験あらたかな音羽の滝が特に人気である。その音羽の滝には、幽霊話が伝えられている。江戸時代、この滝で入水自殺をした女性の霊が現れるといわれ、その霊を慰めるために人々は供養を行ってきました。いまも夜になると、その霊が滝の近くに現われると伝えられている。こうした都市伝説も、世界の人たちを魅了しているのかもしれない。

水の神様をお祀りする「貴船神社」

水の神を祀る神社、「貴船の幽霊」は貴船川で命を落とした女性の霊

貴船神社は、水の神を祀る神社としてしられている。しかし、その境内には幽霊話も存在している。なかでも有名なのは、夏の夜になると現われる「貴船の幽霊」である。この幽霊は、かつて悲しい理由で貴船川で命を落とした女性の霊で、その霊がいつとはなしに現われる噂も、水の神を祀る貴船神社の荘厳な雰囲気が護っていると囁かれている。

安井金毘羅宮「縁切り、縁結びの石」

縁結びの神社「安井金比羅宮」。不幸な縁を切るために訪れる人も多くいる

安井金比羅宮は、縁切り・縁結びの神社。そこに高さ1.5メートル、幅3メートルの絵馬の形をした巨石で、中央の亀裂を通して神様のお力が円形の穴に注がれていると信仰されている。「彼と結婚できますように」などの可愛いい願い事から、「夫と浮気相手との縁を切って下さい」といった切実な願い事まで、様々な願いが書かれた「形代(かたしろ)」(身代わりのおふだ)が貼られ、碑が見えないほどになっている。御祈願の方法は、まずご本殿にご参拝し、次に「形代」に切りたい縁・結びたい縁などの願い事を書き、「形代」を持って願い事を念じながら碑の表から裏へ穴をくぐります。これでまず悪縁を切り、次に裏から表へくぐって良縁を結んでいただく。そして最後に「形代」を碑に貼る。これが噂になり、いまでは訪れる人があとを立たない人気スポットになっている。その理由は、夜になるとこの界隈では切られた縁によって恨みを抱いた幽霊が現れるという話が伝わり、それが観光客をひきつけている理由の一つともいわれている。


嵐山、渡月橋

嵐山の渡月橋近辺は、かつて命を落とした戦国武将が、いまも夜を彷徨う霊があると伝わっている

京都観光の最高のスポット、嵐山の渡月橋も幽霊話で知られている。かつて、この橋の近くでは、多くの戦国武将が命を落とした。こうした行き場のない霊が現われると噂が残っている。とりわけ夜になると、橋の上や川の近くで武士の霊がさまよっている姿が見られることがあるという。悲しい最後を迎えた悲しい人たちを思って、京の人たちが物語を紡いできたとも言われている。


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