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かつて大人は子供だったし、子供は苦しみを経て大人になる。『かがみの孤城』を読んだ感想。

お久しぶりです。ねむるこです!

今回は辻村美月さんの『かがみの孤城』を読んだので感想を纏めました!
物語の肝となっている部分はネタバレせずに書きましたが……まだ作品をよんでいなくて、詳しく内容を知りたくない方は注意してください。

本作は漫画化、アニメ映画化もされ、2018年に本屋大賞を受賞したヒット作です。
あらすじは簡単にまとめると以下の通りです。


主人公は不登校の女子中学生、安西こころ。
家の姿見が光り輝いて、やって来たのはファンタジー小説に出て来そうな西洋風の孤城だった。そこでこころは自分と同じ境遇の7人の子供達と出会う。
動揺する子供達の前に城の主である狼のお面を被った謎の少女「オオカミ様」が現れた。
オオカミ様は、子供達を集めた理由と城について説明する。
期間内にこの城に隠された「願いの鍵」を見つければ1つだけ願いを叶えてくれるのだという。
五月から三月の間、子供達は共に城で過ごしながら、交流を通して成長していく。そんな中、孤城で大きな事件が起こる。

孤城とは、オオカミ様とは……そして集められた子供達の正体とは?
そして誰のどんな願いが叶うのか?

心揺さぶる現代ファンタジー小説。

ずーっと気になっていた作品だったので読むことができて大満足です。
読み終わって一番に思ったのは……

かつて大人は子供だったし、子供は大人になるということ。

当たり前のことじゃないか!と思うかもしれませんが、私はずっと忘れていました。
そう言えば……私も子供だった。同じような悩みや苦しみを感じていたことがあったんだと。
社会人になって、道を走る子供達を見て「子供は楽でいいなー」と考えたこともありましたが全然そんなことはないなと、小説を読んで感じました。
子供には子供の苦悩がある。いや、生きる苦しみに大人も子供もないな、と思いました。
人にはそれぞれ生きていく苦しみがある。
思い返してみれば私の子供時代も苦難に満ちていました。なんで生きてるんだろうと思う日々もあったり。でも、それと同じぐらい楽しいこともあって……。
それは大人になった今も変わらないことに気が付きました。

主人公のこころは不登校の女の子。
学校に自分の悪口を言う女子生徒の集団がいるせいで学校に行くことができなくなってしまいます。
こころの憂鬱とした描写がとてもリアルで辛くなります。
学校を休んだ時に見るお昼のバラエティー番組、母親が「怠けているだけじゃないの?」と非難の目を向けてくること……外に出たら学校に行っていない子という可笑しな目で見られるかもしれないという恐怖心。

分かるなー……。
私も学校へ行きたくない時期があって、休んだ時はこころのような気持ちになっていたし、昼間のバラエティー番組を見て虚無感を感じていたことがあります。

どこに身を置いていいか分からない焦燥感と恐怖心。そしてこれから自分がどうなってしまうのだろうという不安。
こころは両親に学校へ行きたくない理由を話すことができず、誰にも苦しみを理解されずにいます。

こころに共感できる分、彼女の孤独感は読んでいて胸が苦しくなりました。

本作に登場する7人の子供達はそれぞれ違った苦しみを抱えています。読んでいくうちに誰かひとりに、あるいは複数名の子供達の状況に共感することができるかもしれません。そうでなくとも、こういう子クラスにいたな……と懐かしく思うでしょう。

あの時、私達は子供ながらに全力で生きていたのです。

私はこの作品を読んで色んな場面で涙ぐみました。それぐらいに心動かされる瞬間が多い作品だったのです。
やっぱり人が人を救うのって見ているだけで心が温まるし、良いものだなと思いました。

まずはこころの母がこころを救う場面。
こころの手を握って、こころの苦しみを理解してやれなかったことを謝る場面は安心すると共に心が温かくなりました。
こころの味方になってくれない担任の先生に強く言ってくれる場面も良かったです。
そこに母親の愛、家族愛を見たように思いました。
こんな展開になったのはこころが母親に本当のことを打ち明けることができたから。本当のことを打ち明けられるようになったのは7人の子供達が集められた不思議な城での交流のお陰なのです。

次に子供達が城の掟を破ってしまった他の子供を助けようと立ち上がった場面。
不思議な城では夕方5時までには帰らなければならない決まりがあるのですが、それを破ってしまった子供がいます。その子供達を助けようと、こころを含め、皆が動き出すところにとても感動しました。

人を思いやれる人、助けられる人が本当の意味で強い人だと私は思うのです。だから、皆は強くなったんだな……成長したんだなと思うと胸が熱くなりました。

そして一番心動かされたのが……
度々登場するフリースクールの教師。喜多嶋先生の正体です。

巡り巡って、あの時のあの経験が誰かの人生を変えるものになっていた。

という展開が堪らなく良かった!
本当に……人生どこで救われるか。出会った人達とどう繋がっているのかなんて分からないもんですよ。
人と人の繋がり、奇跡に感動しました。

他にも城の正体、選ばれた子供達、そして城の主であるオオカミ様の正体……。その全てを知った時、心温まる感動に包まれます。
ひとりで悲しんでいる誰かを救いたい という強い思いがこの物語の根幹にあるような気がして、読み終わった後に勇気が湧いてくるだけでなく優しい気持ちになることができます。

大人達は昔、子供だったんだという気持ちを忘れずにいて欲しいということ。子供達は、自分たちはずっと子供じゃない。「今度は私の番だ」と思える瞬間が訪れるということを教えてくれる、素敵な物語でした。

城の移動手段が鏡なのも、題名が「かがみの孤城」なのも「自分の姿を映し出すもの」だからかもしれません。自分と向き合うきっかけになるものとして鏡が象徴されているのではと考えました。

大人も子供も楽しめて、心がぽっと温かくなる。そして大事な何かを思い出す、そんなお話になっているので是非読んでみてください。
城、オオカミ様、子供達の正体を考えながら読むとより楽しめると思いますよ!

以上、『かがみの孤城』を読んだ感想でした。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました!

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