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「意味のイノベーション」のロベルト・ベルガンティ教授が語る、”ニューノーマル”時代のビジネスとは?

はじめに

「意味のイノベーション」の提唱者であるロベルト・ベルガンティ教授が、コロナウイルスのピーク後の世界”ニューノーマル”時代におけるビジネスについて話しているウェビナーがアップされました。

主催:ストックホルム経済大学のHouse of Innovation
開催日:2020年4年22日8:00-9:00

Q&Aをあわせると1時間ちょっとの動画ですが、これから不確かな未来を生きる私たちのヒントとなると思いましたので日本語に訳してみました(意訳なので、英語が得意な方は上記のYouTubeをご覧になることをオススメします)。

また、「意味のイノベーション」については、Takramの渡邉さんが書かれたnoteがめちゃくちゃわかりやすくて感動レベルなので、こちらもぜひあわせてご確認ください。

 Webinarの内容

忙しい方向けに、まとめを先に記載します。

不確かな未来が来ることが確実な今、私たちは「未来はわからない」ということを受け入れるところから全てが始まる。そして、わからないから、私たちは学び続けなければならない。学びには、「経験or実験」と「競争or協力」の組合せで4通りの戦略があるが、変化が急激な現代の学び方は協力的な学び(実験×協力)だ。ここで、協力的というのは異なる組織が、異なる実験によって得た学びやデータを共有することを意味する。他者の失敗から学ぶことで、学びのスピードを格段に早くすることができる。では、異なる組織はどうすれば協力できるのか?そのためには「意味」の再考(我々は何のために存在しているのか?)が必要である。そして、他者の動きを待つのではなく、とにかく動くこと。ニューノーマル時代のリーダーには協力のきっかけを作ることが求められる。そして、そのきっかけが既にあれば、そこに参加すれば良い。協力することで、シェアは小さくなるかもしれないが、パイを大きくすることができれば、結果として取り分は大きくなるのだ。正しいパートナーと、正しく共有し、正しいプロセスを踏んで、協力的な学びを行うことが必要だ。

では、内容です(カッコ内はYouTubeの時間)。

わからないことを受け入れて、学び始める(15:26~)

ニューノーマル時代にビジネスがどうなるか?それは誰にもわからない。この時、私たちは「わかっているフリ」をすることもできるが、それは大きな間違いだ。何が起こるのかわからないことを受け入れることが、大切な最初の第一歩となる。

わからないことを受け入れることで、私たちは好奇心を解放し、学び始めることができるようになる。そして、私たちは、わからないという前提に立つことで、よりチームを信頼し、互いに刺激しあい、助け合うことができるのだ。

つまり、私たちはわからない。でも、わからないから、学び始めることができるのだ。

どうやって学ぶか?4つの戦略(18:14~)

学び方の4つの戦略は2つの軸を使って説明できる。

縦軸は時間軸。経験は過去から、実験は未来から学ぶ。
横軸はやり方。ひとりでやる(競争)か、誰かと一緒にやる(協力)か。ひとりでやるのは、他者よりも早く、より良くやりたいからだ。

競争に基づいた「学ぶ」(19:05~)

(1)専門家から学ぶ(競争×経験)
過去に起こったことが、未来でも起こるという考え方。統計学的。

(2)試行錯誤から学ぶ(競争×実験)
ここ20年間、最も人気がある学び。とにかく試す。早く失敗すれば、早く学べて、早く成功するという考え方。特徴は、試したことを他者に公開しないこと。世の中を変える(破壊する)、競合他社に勝つことを目指している。

これらの学びには自分でやらなければならないという限界がある。変化がゆっくりで、劇的でない場合は対応できた。が、今の時代は対応できない。

協力に基づいた「学ぶ」(21:28~)

(3)共有から学ぶ(協力×実験)←ベルガンティ教授の大本命
劇的な変化の時代に適応できる学びは、共有から学ぶこと。「あれはやった?」「この結果はどうだった?」「何を学んだ?」を共有する。

教授はこれを協力的な学びと呼ぶ。ここで協力とは、同じことを一緒にやるという意味ではない。異なる組織が、異なることを試し、学びやデータを共有することを意味する。データを共有することで、他者と同じ失敗をすることを避けられる。

他者の失敗から学ぶことで、コミュニティーとしての学びの速度が遥かに早くなる。誰のアイデアが一番良いかという点で競合していても構わない。ゼロサムゲームではなく、ポジティブゲーム(一緒にパイを大きくするゲームで、みんなが成長可能)。

*注意*
ここで言っているのは学び方の協力なので、戦略が異なることは当たり前であり、問題ない。

(4)共創から学ぶ(協力×経験)

あまり説明されていなかった気がします。

どうしたら協力できるか?(33:02~)

協力できない理由は、恐れから来ている。この恐れは生存欲求に由来する。では、どうすればこの構造的な問題を解決できるのか?ヒントは人間が意味を求める生き物であるということにある。人間は生き延びるために生きているのではなく、意味のために生きているのである。

意味に再度焦点を当てる(40:14~)

生き延びるための計画は大前提ではあるが、安全だけでは不十分だ。意味に焦点をあわせて初めて、協力的な学びに着手できる。

かつて勇敢なイタリアの祖先が自由を求めて戦ったように、なぜ自分たちはここにいるのか?どうやって新しい世界を実現するのか?を改めて自問する必要がある。

「ウイルスとの戦争」という言葉があるが、これは戦争ではない。勝者も敗者もない。これは戦争ではなく、取り組まなければならない試練だ。戦争という言葉は恐怖を煽り、人々をよりコントロールしやすくできるが、リーダーは人々に恐怖を与えるのではなく意味を考える必要がある。

また、これは利益を得るための機会でもない。システム全体を成長させることを考えないといけない。成功を他者よりも良くなることと定義する文化もあるが、他者と一緒に成長することと考える文化もある。そして、たとえ競合であっても苦しんでいる他者には共感することが大切だろう。

はじめに、行動する(45:00~)

誰かが協力的な学びを始めるのを待つのは間違いである。他者の様子を伺うのではなく、はじめに行動すること。ニューノーマル時代は「協力」を始める最初のひとりを求めている。新しいヒーローは、競合に打ち勝ち、破壊する人ではなく、協力のプロセスへ移行するきっかけとなる人である。

また、ひとり目だけが必要な訳ではない。誰かが始めたとき、あなたはどうするか?その協力的な学びに参加することを選べば良い。

データを共有することを恐る気持ちはとても良くわかるが、囚人のジレンマが示すように、もし上手にコミュニケーションを取れば、もし上手に協力することができれば、私たちはより大きなパイを手に入れることができるのだ。競合すれば、シェアは大きいかもしれないがパイは小さくなる。逆に協力すれば、シェアは小さいかもしれないがパイは大きくなる。結果として、取り分は大きくなるのだ。大きなケーキの5%は、小さなケーキの50%よりも遥かに大きいのだ。

正しくやる(47:39~)

協力は、洗練された行為だ。まず最初に、正しいパートナーと協力すること。同じ産業の競合他社と協力することは必ずしも必要ではない。例えば、自動車メーカーは他の自動車メーカーではなく、他の輸送機産業やモビリティサービスの会社と協力すれば良い。別の産業でも、同じ文脈でお客さんに使われる商品(モノ・サービス)の産業と協力することが可能なのである。

次に正しく共有すること。戦略を共有するのではない。データや学びを共有するのである。

最後に、正しいプロセスを踏むこと。科学的なプロセスで、仮説と検証を繰り返す。

具体的な協力的な学び方は著書へ(49:07~)

具体的な方法は、2017年に日本語版が出版されている「突破するデザイン」(著作:ロベルト・ベルガンティ教授、監修:安西 洋之 氏、監訳:八重樫 文 教授)の第8章にて。

まとめ(50:12~)

さいごに

大きな時代の転換期にいるので、みなさんがどんな立場にいらっしゃっても本当に大変な状況だと思います。ただ覚えておいて頂きたいのは、ベルガンティ教授が示してくれたように、私たちを待っているのは競争するのではなく協力する未来です。今より優しい未来が待っています。

だから安心して、一緒に未来を切り拓いていきましょう。みなさんが新しい時代を切り拓いていかれることを心より応援しています。私も頑張ります。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。くれぐれもお身体にはお気をつけてお過ごしください。

読んで頂きありがとうございます!シンプルでサステナブルな子ども服ブランド作りのために頑張ります!より良い未来を次の世代に渡しましょう!