【52】 誰の言葉に耳を傾けるか?
セルフトークが自己イメージを作り、自己イメージがコンフォートゾーンを決めます。
つまり、セルフトークによって、私たちのコンフォートゾーンが決定されてしまうということです。
そのため、セルフトークをコントロールすることは、非常に重要です。
セルフトークの形成
では、現在のセルフトークはどのような言葉をもとにできあがったものなのでしょうか?
それは主に、子どものころに親や先生、周囲の大人に言われた言葉や、他人が話しているのを聞いた言葉です。
子どもにとって、周囲の大人の言葉の影響力はとても強いものです。そのため、大人に言われた言葉を無批判に受け入れてしまいます。
たとえば、自分が直接言われた言葉でなくても、親が他の人に「うちの子は勉強ができなくて」などと言っているのを聞いて、悲しいあるいは恥ずかしいと感じたとします。
すると「自分は勉強ができない」というセルフトークを繰り返し、その度に悲しい、恥ずかしいといった感情を再体験することになります。
そのセルフトークの蓄積でできあがった情動記憶をもとに「勉強ができない」という自己イメージが形成され、「勉強ができない」状態がコンフォート・ゾーンになります。
あるいは、小さい頃に家族から「あなたは忘れっぽいから」と言われて育てば、「自分は忘れっぽい」というセルフトークを繰り返すことになり、その言葉の通り「忘れっぽい人」になっていきます。
このように、他人に言われた言葉を受け入れセルフ・トークに取り込んでしまうと、それが真実であるか否かにかかわらず、自己イメージとなってしまいます。そして、その自己イメージ通りに振る舞うことになります。
これは、大人でも同様です。他の人に言われた言葉やメディアで繰り返される言葉を受け入れてしまえば、それがセルフトークとなって繰り返され、自己イメージとなっていきます。
しかし、その自己イメージは、自分のゴールやなりたい人物像とは一切関係がありません。
自己イメージとコンフォート・ゾーンを自分自身で選択するためにも、「誰の言葉に耳を傾けるか」には十分に注意が必要です。
ゴールから他人の言動を選別する
これは、ゴールに向かって行動しているときにも重要な考え方になります。
せっかくやりたいことを見つけ、そこに向かって行動しようとしても、身近な人ほど、それに反対しがちです。
「医者になりたい」「起業したい」「世界で活躍したい」といったことを目指して行動し始めると、親や先生、周囲の人はその人の過去をもとに「君の実力では無理」「もっと現実的に考えなさい」といったことを言ってくる可能性があります。
とくに、自分を心配してくれている人ほど、親身になって「考え直したほうがいい」と言う可能性があります。
このような人たちをコーチングでは、ドリームキラーと呼んでいます
なぜなら、彼らの言葉を受け入れ、「自分にはできない」というセルフトークを繰り返せば、自分の中の可能性を引き出すことはできず、ゴールを諦めることになるからです。
そもそも、過去の延長線上にはない現状の外のゴールを目指すわけですから、過去に基づいた評価は一切関係ありません。
ゴールを思いっきり現状の外に設定し、そのゴールを求めるからこそ自分の可能性が引き出されます。そして、これまでの自分からはとても想像できない成長をすることができます。
ですから、身近な人の言葉であっても無批判に受け入れるのではなく、自分のゴールと照らし合わせて、その言葉を受け入れるべきかということをよく吟味してください。
これは、他人の言葉を無視しろ、ということではありません。
ゴールをしっかり設定し、アファメーションやヴィジュアリゼーションでゴールの世界の臨場感を強化しているなら、他人の言葉の中にゴールを実現する上で重要な情報があれば、たとえ耳が痛いような内容であってもきちんとRASを通りぬけて認識できます。
子どもの可能性
他人の言葉を無批判に受け入れることによって、自分の可能性を制限してしまうことは、とてももったいないことです。これは、特に子どもたちにとって重要なことです。
「誰の言葉に耳を傾けるかを自分でしっかり考える」ことの重要性を子どもたちに伝えるのと同時に、大人自身も、自分が子どもたちに言う内容が、彼らの自己イメージひいては人生全体に大きな影響を及ぼしていることを認識する必要があるでしょう。
ワーク
自分が普段しているセルフトークや、他人に言っている口ぐせに意識を向けながら生活してみてください。
もし、ゴールを実現した自分には相応しくないと感じるものがあれば、ゴールの世界の自分にふさわしい言葉に置き換えてみましょう。